<9>妹入荷 2
美少女に気を取られていると、男がこちらの雰囲気を探るように、声をかけてきた。
「お待たせしました。本日は弊社に御越しいただきまして誠にありがとうございます。
この店の責任者を任されているリョウと申します」
リョウと名乗った男は、深く御辞儀をした。
「春樹だ。
リョウ殿の事は、上から聞かされている。貴殿の手腕に期待するとの仰せだ」
責任者を名乗る男性に対し、なるべく威圧的な雰囲気になるように返答しておく。
無論、彼の事など、知るはずもない。
そんな出任せ染みた俺の言葉に、その男の表情がさらに曇る。
「お任せください、と申し上げたい所なのですが、最近は何かと人材不足でございまして、現時点では、お客様の希望に添える者が居ない状態でございます」
わざとらしく不満な表情を浮かべてやろうか、とも思ったが、そこまで必要ないかな、と思い、やめておいた。
「そうか……。
それで、そこの娘は?」
「はい、この者は、現在お出しできる中で、最高の者でございます。
お客様のご要望には添えないまでも、器量は十分かと。……しかしながら、言葉使いに関して少々難がございます」
「言葉遣いか……。
わかった、この娘を貰おう。いくらだ?」
「!!?」
俺の言葉に、少女や受付嬢はおろか、責任者の男までもが、驚愕の表情を浮かべる。
「…………失礼では、ございますが。商品との会話なとはよろしいのですか?」
「必要ない。
他でもない、リョウ殿のススメだ。その者を貰おう」
ただでさえ緊張で青みがかった奴隷商の顔が、悪化の一途をたどる。
王家の威光を借りての威圧行動、商人には、俺が悪魔にでも見えるだろう。自分でも酷いな、と思うが、これも仕方の無いことだ。
「……かしこまりました。御代ですが、銀10枚で如何でしょうか?」
「良いのか?
目麗しい女性は、金1枚からが相場だと聞くが?」
「はい、ハルキ様の仰る通り、若い女性は高く、この者ですと、金5枚でも買い手が付くほどです。
しかしながら、まだ教育前で、さらにはハルキ様の要望に届いていない者ですので、この値段でお売りさせて頂きます。
不躾ながら、本音を言わせて頂ければ、王族の皆様には、日頃からお世話になっておりますので、今後ともご愛顧のほどをと言った気持ちも込めて、でございます」
本当の本音は、厄介ごとに巻き込まれたくないからだろ? と思いながらも、安く買えたことに安堵し、銀貨5枚を支払った。
「はい、確かに頂戴いたしました。
それでは、早速ではありますが、奴隷契約を執行してもよろしいですか?」
「いや、その件なのだがな、後で外しやすいように簡易のものにしてくれるか?
城で主人の変更を行うのでな」
一瞬だけ商人が戸惑った顔をしたが、すぐに頷いてくれた。
「……かしこまりました。
それでは、商品の腕に着いている青いヒモに触れていただけますか?」
俺の右手が、少女の右手に着けられた、ミサンガのような青い腕輪に手を触れる。すると、奴隷商が呪文のような言葉を発し、青い腕輪がオレンジ色に変化した。
サラ曰く、奴隷であることを証明する物で、主人を指定し執行すると、青から赤に変化するらしい。そして、今回の場合は、簡易なので、オレンジ色になったようだ。
無事に契約を終え、少女を引き連れて奴隷商を後にする。
そのまま、向かいにあった宿で1人部屋を借り、部屋に入ったところで、銀10枚、日本円で300万で購入してきた奴隷の少女に、初めての命令を下す。
「着ているものをすべて脱げ。いますぐにだ」
一瞬驚いた表情を見せたが、主である俺の命令に逆らえるはずも無く、少女はゆっくりと、その身に着けた衣装を脱いでいった。