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<8>妹入荷

 異世界の屋台料理を堪能してから1時間、俺は、5件目になる奴隷商の扉を開いた。


 その理由はもちろん、奴隷を買うためだ。

 ……いや、サラの言葉を用いるなら、妹の購入だろうか。


 赤い絨毯が敷かれたレンガ造りの店内は、奴隷のイメージとはかけ離れ、所々に煌びやかな装飾に彩られている。

 中央にはカウンターで受付嬢と思われる女性が座り、その背後に続く廊下には、複数の部屋が並んでいた。


 日本人の感覚からすると、会員制の超高級カラオケ店に来た、といった感じだろうか。


 店内の状況に若干の戸惑いを感じながらも、鞄の中から王家の紋章が入った布を取り出し、受付嬢に近づく。 

 

「いらっしゃいませ、どのような者をお求めでしょうか?」


 高そうな店内ではあったものの、聞かれることは、これまでに訪ねたほかの4店舗と一緒だった。

 それだけのことに、ほっと安堵の息を吐き出し、事前にサラから聞かされている要望をそのまま伝える。


「教育が施されていない者で、器用な者が欲しい。

 出来れば3級で、アリス王女の精神を安定させることが出来るレベルを頼む」 


「……かしこまりました。こちらへどうぞ」


 受付嬢は不安の色を顔に浮かべながら、俺を会議室のような部屋へと案内し、上司の指示を仰ぐといって、部屋を去っていった。


 彼女の不安の種は、無論俺の注文にある。


 まずそもそも奴隷についてなのだが、この国の奴隷は1級、2級、3級に分けられるらしい。


 1級は、借金や税金が払えなかった者で、購入者は一定の賃金を払う必要がある。

 2級は、窃盗などの罪を犯したもので、賃金の支払いは必要ない。

 3級は、戦争によって捕虜となった者で、こちらも賃金の支払いは必要ない。


 1級と2級は、国と雇い主に一定の金を払うことで奴隷の地位から平民へと復帰出来るが、3級はどのような手段を用いても復帰の道はない。

 そのため、秘密保持の観点から、俺が、と言うよりはサラが求めたのは3種奴隷。

 この点については、次期王の争いが絶えないため、それほど問題にはならない。


 問題になるのは、教育が施されてなく、器用であること。


 奴隷商の仕事は、教育を施して、仕事を覚えさせることにある。何も出来ない者を購入し、付加価値を付けて売る訳だ。

 つまり、教育前から器用な者など、その数は限られてくる。


 さらには、その器用さのレベルである。


 引き合いに出したアリス王女と言うのは、この国の第5王女。母親は違うらしいが、サラの妹にあたる人物だ。


 彼女は、市民にすら知られるほどのわがままな王女であり、彼女の精神を安定させるなど、最高の職人が最高の素材で作りだしたアクセサリーを用いても出来るかわからない、そんなレベルである。

 

 さらには、受付で王族の印を見せてある。


 つまりは、『小学校すら行ってない者で、今すぐ東大卒業出来るような奴を連れて来い。下手な奴を連れてきたら、お前の立場が危なくなるぞ』と言っている訳だ。


 深く考えなくてもわかる。いくら異世界であっても、そんな奴、居るはずがない。

 もし、居ても奴隷などになるはずがない。

 

 そのため、初めて入った奴隷店には即座に断られ、大手の店へと案内されていた。

 そして、その大手からさらに大手へと、次々に紹介されていき、最終的に行き着いた先がこの店だ。


 この店は、王国最高ランクの店で、大国で唯一、王室御用達の看板を掲げる店だ。そのため、王族の紋章を見せられては、断ることなど出来ない。


 そんな追い詰められた店側は、先ほどの受付嬢を筆頭に、身なりの良い服に身を包んだ男性が、膝丈までしかない青いワンピースに身を包んだ、15歳程度に見える少女を引き連れて、部屋へと入ってきた。


 身長は150センチ程度と小柄で、腰の辺りまで伸ばされた長い黒髪のツインテールが印象的だった。

 顔立ちは幼く、小柄な身長も相まって、非常に可愛らしい。

 そんな幼さ全開な少女ではあるものの、その胸だけは、大人顔負けの膨らみがあった。

 

 彼女が、俺の妹候補なのだろう。

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