<2-19>侵入者6
「鶏に犬、トカゲに亀。ここは見世物小屋かなんかですかねぇ。
なんとも代わり映えしない光景に飽きてきましたよ」
「言いたいことわかるがな。客を襲う見世物小屋なんて流行らねぇよ。
けど、まぁ、どれも美味かったから、どっちかって言えば飯屋だな」
「たしかにそうっすね。
次は何が食えますかねぇ?」
「さぁな。
希望を言わせて貰えるなら豚がいいな」
「俺は魚系がいいですね」
勇者のアジトに侵入してから4時間。
美味しい物を食べながら進む魔法兵士達は、入口から数えて14個目になる部屋へと足を踏み入れた。
これまでに出てきた敵は、単調な攻撃しかしてこなかったため負傷したものは居ない。敵の強さもあまり大きく変化しなかった。
そして、同じような石や岩だけが置かれた部屋が永遠と続くため、徐々に敵の本拠地である恐怖が薄れた男達は、半ばグルメツアーのような感覚で奥へと進んでいく。
「さぁ、新しい部屋はどんなかな。果実とかなってる木とかあったらいいな」
「甘いものですか。いいですねー。
けど、今までのことを考えると、果実があったとしても、襲ってくる果実だと思いますよ」
「あー、たしかにな。
目や口がついたりんごなんかが出てきたら、どーするかねぇ」
「果実に食われたなんて笑い話にもならないっすね」
「ちげーねぇや」
そんな冗談を交えた会話が弾む中、男達が次の部屋に足を踏み入れた瞬間、突然、周囲に大地を揺さぶるような爆発音が響いた。
「っつ!!
何が起きた!? 周囲の状況を確認し……」
リーダーの男が叫び、周囲を見渡すと、1番後ろを歩いていた1人の魔法使い、それも移動系の魔法使いが、頭から血を流し、倒れていた。
彼の周囲には大量の血があふれ出し、小さな水溜りを作っている。どう見ても即死だった。
(どういうことだ? 何にやられた?
魔法を使える魔物でも出たか!?)
「全員、武器を構えろ。長距離から攻撃されている。
ダビ、魔法反応を出来る限り追いかけてくれ」
「了解」
現状を把握したリーダーは、最善だと思う指示を仲間に出していく。
そして指示を受ける方も、仲間の死に対してうろたえたり、泣き出したりなどして動けなくなるような者など居ない。
無論、全員が色々と思うところはあるが、悲しんだり悔やんだりするのは戦闘が終わった後。
いくつもの戦場を切り抜けてきた男達には、その考え方が叩き込まれていた。
「っ!! ぅぐっ……」
ただ、武器を構え、冷静に遠距離からの攻撃に注意を払っていても防ぎきれない攻撃もある。
2回目の爆発音が聞こえたと同時に索敵を得意とする者がその場に蹲った。どうやら腹に攻撃を受けたらしい。
先ほどの男とは異なり、即死では無いものの、その出血量から考えて、命を落とすのも時間の問題だろう。
ただし、それは現代日本での観点であり、この世界においては、必ずしも命を落とすとは限らない。
「すぐに治療してやれ。魔力のことは考えなくていい。全部つぎ込んで構わない。
ダビ、敵の場所は見えたか?」
「あぁ、あそこの岩陰に魔力の反応があった」
そう言って指差したのは15メートルほど離れた大きな岩。
リーダーがそちらに目を向けると、まるで挑発でもするかの用に、1人の少年が、その岩の陰から姿を現した。
(なんだ? こちらに姿を見せてどうするつもりだ?
手に持ってるのは杖には見えないが、あれで魔力を増強させて魔法を行使しているようだな。
つまり、あいつの魔法は連発出来ず、発動に時間がかかるタイプか)
「敵はあそこだ。次の魔法が飛んできる前に突っ込むぞ。
シュバル、お前はそのままそこで治療をつづっ!!」
リーダーの号令で、負傷者と回復役以外の全員が敵に向けて突撃しようとした瞬間、回復役の喉に矢が突き刺さった。
刺さった角度を考えると、どうやら先ほど出てきた少年とは別の岩影に潜んでいた者が矢を放ったようだ。
(敵は色々と散らばっているのか!! 先ほどの少年が姿を見せた理由は、弓兵から目を逸らすためだろうな。
罠を仕掛けて待ち構えているなんて騎士道精神の足りない奴だな。どう考えても勇者様の所業ではあるまい)
「敵は岩陰にこそこそ隠れて我らを迎え撃とうとしている。ならば、こちらも岩陰に居座り、敵が出てくるのを待つぞ。
なに、敵に自分達の愚かさを伝えるためだ。決して卑怯な方法ではなっ!!
子供!?」
敵に聞かせる意味も込めて、出来る限りの大声で高らかに作戦を伝え、岩陰に足を踏み出した瞬間、3メートルほど先にあった小さな岩陰から、2人の少女が飛び出してきた。
(……手に武器を持っているということは、こちらと戦う意思があるということか。
女、子供に戦闘をさせるなど、敵はクズだな。
上からは勇者様の可能性があると聞いていたが、勇者様と比べること自体が勇者様に対する冒涜だな)
敵の情報を収集するだけの任務だったが、出来るなら自分の手で勇者を語る者の首を取ろうと心に誓いながら、ナイフを持った少女と対峙した。




