<2-17>侵入者4
敵がダンジョンに進入したことを報告するために、クロエがお風呂場へと飛び込んできた。
……俺とサラがいい雰囲気のところに。
一応、深く追求はされなかったものの、俺たちの状況はどのように映ったのだろう。
そんなことを考えながら、気まずい雰囲気が流れるお風呂場でいそいそと着替えを済ませた俺は、逃げるようにその場を脱出し、足早に会議室へと向かった。
無論、その移動中に敵の情報を収集するのを忘れない。
そして、毒づくもの忘れない。
ってか、可愛い子と良い感じの雰囲気になったら、緊急事態が発生してべつの子が飛び込んでくるってどぉよ?
なんか、めっちゃ勇者っぽくねぇ?
わーい、念願の主人公補正だー。
これでアリスにいじめられずに済むぞー。あははー。
……なにも、こんなときばかり勇者っぽくならなくてもよくない?
ふわふわが、おれのふわふわな感触が遠ざかる……。
これはあれだな。どう考えても進入してきた奴らのタイミングが悪すぎるな。
……むしろ狙ってやったのか?
俺を精神的に攻撃して、弱らせようっていう敵の策略か? くっそ、まんまと敵の策略にはまってしまったぜ。
いや、おい、まて。
そう考えると、サラの行動にも不審な点が見えてくるな。あのタイミングで誘惑してきたっておかしいよな?
……ハ! もしや、サラが敵と共同して俺を落としいれようとした!? サラは敵に寝返ったのか!!
…………いや、それはさすがに無いな。だって、サラだしな。
うん、あれだよ。やっぱ、俺が悪いんだろうな。
なにがって? 運が。
俺の運が、全面的にわるいんだよ。
異世界に召喚さるほど運が悪いんだぜ? この程度の運の悪さなんて、運が悪いに入らないって。
うん、そうだそうだ。全部俺が悪いんだ。
おれ、勇者だから、ずっとこのままなんだー。おれ、近い将来、魔法使いになるんだー。
「……ねぇ、ダーリン。なんかすっごく落ち込んでるみたいだけど、どうしたのよ?
この世の終わりが近いくらいの絶望って感じに見えるわよ?」
おっと、どうやら、アリスですら気付くくらいに落ち込んでしまっていたらしい。
いや、でも、しょうがなくない? ふわふわを逃したんだぜ? ふわふわだぜ?
「それに、ダーリンだけじゃなくてサラ姉もクロちゃんも、なんか様子が変みたいだし。
なに? あんた達、なにかあったの?」
や、やばい。なんて説明をしようか。
ヒロインの1人といい感じの雰囲気になったら別のヒロインが突入してきたんだ。俺、めっちゃ主人公だろ?
……いや、無理でしょ。
それに、異世界の人に言っても通じるネタでもないしね。たぶん。
「い、いや。なんでもないよ。
うん。そう。なんでもない、なんでもない。……な?」
そういって2人を見ると、勿論じゃないか、なんにもなかったよ、とそれぞれから返答が来た。
「……ふーん。なんか、すっごい怪しいけど、まぁ、今回は追及しないであげるわ。
…………そのかわり、今度なにかするときは、アリスも混ぜなさいよね」
「いや、今度って、なにも、あの……。
……あ、はい、了解しました」
きっぱり、何も無かったと言おうとしたのだが、ギラっとした目で睨まれました。
「フン!! アリスだけ仲間はずれなんて、ダーリンの癖に生意気なのよ」
どうやら、アリス様はとても不機嫌なようです。
けど大丈夫、今度があったとしても同じような展開になるよ。だって俺、勇者だもん。あはははー。
「……それで? この集会の目的は?」
おっと、そうでしたそうでした。
ふわふわ以上に重要なことなんて無いけど、そこそこ重要な問題が発生したんだった。
しょうがない、やる気をだしますか。……ふわふわが、ふわふわ…………。
「……あー、敵が攻めてきた。撃退するからよろしく、以上」
うっし、会議終わり。部屋かえってねますかね。
はぁ、今日も疲れたぜー。
「いやいやいや、ちょっと待ちなさいよ。以上じゃないわよ。
って、帰ろうとしないでよ。意味わかんないわよ」
必要な事を終わったので帰ろうとしたのだが、アリスに引き止められた。なぜだろう?
「なんでキョトンとしてるのよ。
どう考えても以上じゃないでしょ?」
えー、そうかな?
はぁ……、しょうがない。
「……詳しく説明する?」
「する? じゃないわよ。当たり前じゃない。説明しなさいよ」
俺、部屋に帰って寝たいんだけどな。……お、そうだ。
「えー、……んー、じゃぁ、アリスがキスしてくれたら説明してあげるよ」
「ふぇ? き、きす?」
「報告の御褒美にキスして。ん? 無理? そっかー、無理ならしょうがないよね。
ってことで、帰りまーす。じゃ、お疲れさ――」
普段は強がっているが初心なアリスに、無理難題を要求し、雰囲気に呑まれている間に部屋へと帰ろうとしたのだが、席を立ち上がった瞬会、唇に柔らかいものが触れた。
しかし、柔らかいものとは言っても、アリスの唇ではない。
なぜなら、アリスは俺の目の前で、顔を真っ赤にさせ、俺の予想通り、初心な反応をしているからだ。
では、何が唇に触れたかというと……。
「んっ……。お兄ちゃんへの御褒美、それと、さっきのお詫び。
これで機嫌直してくれる?」
「……あ、はい、ごめんなさい、ごちそうさまです、ありがとうございます」
どうやらクロエの唇だったようで、途中、何かがくちの中に進入してきたような……。
うん、御馳走様でした。ぼきゅ、すごい、げんきに、なりました。




