<2-6>新人指導2
「ここがお前達の部屋だ。
丁度人数分あると思うから、各自、好きな部屋を決めてくれ」
「……部屋どころか、個室を頂けるのですか?」
「あぁ、中を見てもらえればわかると思うが、布団を敷けばそれだけで一杯になるほどのサイズだ。
さすがに5人で1部屋ってわけにもいかないだろ」
「いえ、寝ることが出来る場所を頂けるだけで満足です。ありがとうございます」
「あー、まぁ、それだけ期待してるってことだ。頑張ってくれよ」
「「「イエッサー」」」
戦闘訓練を終えた5人の男達をダンジョン内の一角に新しく作った部屋に案内した。
彼等がダンジョンに住まうことになった事を受けて、ダンジョン内を改造したのだ。
その改造もかなり大掛かりなもので、まず、洞窟からダンジョン内に入ったすぐの場所を中部屋にして、その部屋から道を二手に分けた。
左手に向かえば、今まで通り、俺達の部屋やダンジョンコアの部屋がある通路に。
右手に向かえば、5つの個室だけがある通路にした。
わざわざ分ける必要も無いかとも思ったのだが、彼等のことを100%信用出来るかと聞かれれば、今の段階ではまだ無理、と答えるしかない。
それに、彼等としても、上司である俺が近くに居たのでは、気が休まらないと思うしな。
そんなわけで、住まう場所を中部屋で分けた、というわけだ。
幸いな事に、先の戦闘で通路を作るために確保しておいたポイントがあったし、100人近くがダンジョンに一泊したことで、それなりのポイントが入手できたため、改造に問題は無かった。
ちなみに、どうやら人が1日生活することで得られるポイントは、1人10ポイントのようだ。
なので現在は、何もしなくても、一日110ポイントが獲られる。
このポイントだけでも、彼等を住まわせることにして良かったな、と思わなくもない。
「おっと、そうだった。
部屋に関してもそうなんだが、キミ達の頑張りに応じて施設を増加しようと思っている。
畑や果樹園、大きな個室や風呂なんかも作れるからな。
えーっと、……あれだ。うん。
キミ達の頑張りがポイントになって、勇者の力を高めるからな。そしたら、勇者の奇跡で一瞬にして作るから、そのつもりでな」
「「「イエッサー」」」
彼等が狩りを頑張れば、地下空間に部屋が増えるなんて、異世界の常識でもおかしな話だと思うのだが、とりあえず、勇者の力だ、と言っておけば問題ないようだ。
勇者ってマジ便利。
俺としては、風呂も畑も食料庫も、初めからすべて使わせてあげても良いと思っていたのだが、頑張ったときの報酬があった方が人は幸せになれると進言させて貰うよ、と言われたため、このような形になった。
「一応、俺が知ってる狩場と、ポイントの貯め方を説明するから、ついてきてくれ。
戦闘もするから、装備品も忘れないように」
「「「イエッサー」」」
そして洞窟に移動となった。
ってか、このイエッサー、っていう軍隊方式、いつまで続くんだ? もう終了でよくね?
……って思うんだけど、言い出すタイミングを完全に逃してるな。……もう、このまま、この方針でいいか。
よし、何はともあれ、彼らに勇者としての実力を見せるときが来たな。俺の空間把握能力と指揮官としてのすばらしさを教えてやる!!
……なんて思ってたのだが、空間把握はシーフが、指揮はそのまま指揮官が請け負い、洞窟内を危なげなく奥へと進み、2匹の狼をスムーズに討伐した。
無論、俺が活躍する場面など一切無い。
「……みんなが優秀で、俺はすごくうれしいぞ。
……でだ、今見て貰ったからわかると思うけど、階段近くまで獲物を運べば、自動でポイントと収穫物に分けられる。それと、魔玉はミリアかノアに言ったら適正価格で買い取ってくれるからな。
言わなくてもわかってると思うが、森に出れば果実なんかも収穫できると思うから、どこへ行って、何を狩るかは、自分達で決めてくれ。
一応、一週間の予定を決めて貰うが、俺は出来る限り口出しをしない。なにか質問はあるか?」
一通りの説明を行い、後はお好きに、と言ったら、5人がお互いの顔を見合わせて、不思議そうな顔をした。そして、その中でリーダー役となった者、リアムが、緊張した面持ちでゆっくりと手を挙げた。
「……よろしいですか?」
「あぁ、構わない。何でも聞いてくれ」
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。
我々に与えられた仕事は、食料の調達、と言うことでよろしいですか?」
「いや、すこし違うな。
キミ達に与える仕事は、ここで生き残ることだ。
自分達で獲た食料を俺に差し出す必要は今のところ無い。住民が増えれば、税金なども考えるが、それも後々の話だ。キミ達はキミ達で好きにやってくれ。
あぁ、ただし、仲間割れはダメだ。周囲の村へ行くことも許可するが、基本の寝床はここにしてくれ。注意点としては、そのくらいかな」
「……我々は奴隷なのですが、……よろしいのですか?」
「あぁ、構わない。
……そうだな。今後、住民を増やす際の予行演習、毒見役だとでも思ってくれ。
まぁ、敵が攻めてきたら、一緒に戦って貰うがな」
「……畏まりました。ありがとうございます、勇者様」
こうして、勇者国の人口が11人となった。




