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<2-2>勇者の演説

「おぉー、本当に真っ黒な髪をお持ちだ」


「すっげー、マジ神々しくね?」


「はーい、兄様、じゃなかった、勇者様にお手を触れないでくださいねー。それと、妙な動きを見せたら、即座に迎撃部隊が動きますから、変な行動はしないでくださいねー。

 それじゃぁ、ここを先頭にして綺麗に並んでくださーい。えーっと、5? いや、6列でー。慌てず騒がず、綺麗に並んでくださいねー」


 サラによって建国宣言が行われた後、俺は王都の様子を伺いながら、クロエの魔法で討伐隊を閉じ込めてある部屋へと移動した。

 

 部屋に入った瞬間、近くに居た人が俺達に気付き、そのうちの1人が小さな声で、……勇者様だ、と言ったのをキッカケに周囲が一瞬にして慌しくなった。


 やっぱりと言うべきか、どうやら黒髪がすごく珍しいようで、ざわつく人々の視線が俺の頭に注がれている。……これ、視線で俺の頭が禿たりしないよな? さすがに魔法の異世界とは言っても、そんな凶悪な魔法は無いよな? ……よし、気にしないことにしよう。こいつらはジャガイモだ、土人形だ。気にしない、機にしない。


「お兄ちゃん、顔色悪いようだけど、大丈夫?

 まさか、誰かに攻撃されちゃった?」


「い、いや、大丈夫だ。問題ないよ。かぼちゃに見られるくらい、どうってことないさ」


「んゅ? かぼちゃ? ……煮付けにする?」


「……妙なこと言って悪かった。

 俺のことは気にせず、周囲の警戒を続けてくれ」


「はーい」


 そんな雰囲気の中で、ノアが大声を張り上げ人々に指示を出し、人々を整列させる。

 一応、クロエがスライムナイフを片手に周囲を警戒しているが、暴れまわるような者は皆無のようだ。


「ダーリン。あんた専用の御立ち台が出来たわよ。

 さっさと登りなさいよね」

 

「……あぁ、了解した。ありがとう」


「ふん、別に、たいしたことはしてないわよ。

 けど、そうね。頭くらい撫でてもいいのよ?」


「あいよ」


 そして側近や准男爵などの首輪を嵌められた人々を除いた者全員が列を成したその視線の先に、アリスの魔法によって、御立ち台が作られた。

 大きさは小学校の運動会で使うものぐらいで、土を真四角に積み上げましたって感じの見た目だ。


 ……ぶっちゃけ、俺、人の前で話すとか苦手なんだけど。あの上に乗らなきゃダメなのか? 


 誰か代わってくれない? と言う思いを視線に込めて、サラ、アリス、クロエ、ミリア、ノアに視線を送ったが、キミの勇姿を期待するよ、頑張りなさいよね、お兄ちゃんなら大丈夫だよ、お姉ちゃんが見守っててあげるわよー、頑張ってね兄様、と視線でかえされた。

 

 並んでいる兵士達を見ても、俺が喋ることをワクワクしながら待っている感じだ。


 あー、うん、逃げるのは無理ですか、そうですかー。


 しょうがない、登るとしますか。


 ……うぁ、予想以上に高い。

 みんな俺のこと見てる。……これ、どう考えても俺が何かかっこいいこと言わないと終わらない感じだよな?

 原稿なんて容易してねぇぞ? 


 御立ち台の上から横に控える仲間達に再度、助けて、と視線を送ったら、さっさと始めなさいよね、と返された。


 ……しょうがない、頑張るか。えーっと、勇者らしく、勇者らしく。


「あー、本日は、お忙しいところお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

 先の放送で御紹介に預かりました勇者をさせて頂いている者で、名前をハルキと申します。

 以後、お見知りおきのほど、よろしくお願い申し上げます」


 ふぅ、我ながら、完璧な名乗り上げだな。……あれ? なんで、みんなポカーンとしちゃってんの? 

 ……方向性間違えた? いや、けど、俺、これ以外に初対面の人との話し方なんて知らねーよ? もしかして、名刺の交換から始めなきゃいけなかったのか?


 ……まぁ、いい。大丈夫だ。俺は間違えてなど居ない。大丈夫だ。みんな、感動して呆けているだけだ。そうだ、そうに違いない。


 よし、このまま、話を続けてしまおう。


「さて、本日の議題につきましては、勇者国の建国と言うことで、私がその国の代表を務めることになったわけですが、先にはっきりと申し上げておきます。


 私は決して完璧な人間ではありません。


 私の持論には成りますが、この世界には、完璧な人など居らず、人は皆、得意な事、不得意の事を持ち合わせていると思っています。


 私は、不得意な事はすべて人に任せます。なぜなら、その方が効率が良いからです。

 そのため、代表だからと、私がだけが多くの仕事を抱え込むのではなく、出来る人にどんどんと任せていく予定です。

 そして、誰にどんな仕事をまかせるかは、出生に関係無く実力のみで判断します。家柄、賄賂、容姿などは評価に加味しません。

 

 私が作る国は、犯罪者以外の奴隷を認めず、世襲制を認めない、未来を生きる子供達が自由に職業を選べ、自由に生きる道を選べる国とします。


 これで、私の宣言を終了します。ご清聴ありがとうございました」


 そう言葉を締めくくり、深く頭を下げた俺は、すぐに視線でワープを要請した。

 そして、いつものメンバーだけが控え室へと移動する。

 

「挨拶のときはどうしようかと思ったが、ボクの予想より良い内容だったと感じだよ。

 敬語はやりすぎだけど、国民全員で協力し、子供達が楽しく暮らせる国を造りたいって言う気持ちは伝わったと思うかな。

 初めての宣言にしては十分な内容だったと評価させて貰うよ」


 逃げるように移動してきた直後に、サラからそんな言葉を貰い、恐る恐るサラの顔を見て見たが、どうやら本気でそう思っているようで、他のメンバーも笑顔だった。

 

 話している最中に、

 

 子供ながら兄妹同士で争うことになったサラやアリス、

 子供ながら奴隷として不自由な生活をさせられていたクロエ、

 子供ながら生きるために商売を始めたミリアやノア、


 そんな仲間の姿が思い出され、気がつくと、要点のわからない話しをしてしまっていた。

 

 なんだか、俺らしくないことをした気がするが、周りに居る仲間達みんなが楽しそうな表情をしているし、これはこれでよかったのだろう。

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ありがとうございます。

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