表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/139

<51> 森に木は隠れない

「報告申し上げます。

 サラ様とアリス様の行方についてなのですが、本日、調査員より報告が入りました。なんでも、2人を同じ場所で発見したとの事です。

 王都から塩街道を1日程度進み、少しばかり森の中へ分け入った場所にある洞窟の中に居るとのこと。

 状況から考えるに、2人は生活を共にしている可能性があり、手を組んでいると思われる状況のようです」


「なに? サラ様とアリス様が手を組んでいる?

 その話は本当か?」


「はい。派遣した者達によりますと、サラ様とアリス様と良く似た人物が、男1人と少女1人の合計4人で塩街道を進む姿が複数人に目撃されております。

 その証言を元に足取りを追ったところ、洞窟の中で生活の痕跡と戦闘の痕跡、アリス様の魔法の痕跡を発見しました」


「よし、報告ご苦労だった。

 今後の方針についてスバル様に判断を仰いでくるゆえ、それまで待機しておれ」


「畏まりました」


 商人の姉妹が仲間に加わる2週間前、ハルキ達が洞窟内に逃げ込んでから3日後。

 ハルキ達の予想よりも早く、その居場所が長男に知られた。


 そしてその日のうちに徴兵の伝令が各村に伝わり、サラとアリスの討伐隊が編成されることが決まった。


「共同生活者の中に男1人が1人だけ居ることは好都合だな。この男と駆け落ちし、国外に王家の秘密が漏れる恐れがあることにしろ。

 隊の人数は100人を目標とする。ただし、隊のトップとその親衛隊以外で既存の兵は使うな。

 わかっているとは思うが、弟の件もあるんだ。兵站は最小限、最寄の町で兵を募集し、訓練も解散も現地でおこなえ。

 くれぐれも王都の守りを割くことがないようにな。以上だ」


「畏まりました。それでは、討伐隊の長を決めて参ります」


 討伐隊の敵はたった4人なのだが、内2人が魔法使いである。そのため、兵の数が100人でも必ず勝てるとは言えなかったものの、弟の行動を抑えるために兵力が必要であり、より多くの兵を集めれば次男からの妨害は必死である。そのため、長男が集められる兵数は、その数が精一杯であった。


 それでも、勝てない可能性があるからと言って、サラとアリスが手を組んだ可能性が高い状況で、放置することはさすがに出来なかった。


 ただ、派遣した本人の中には、別の思惑もあった。

 

 今回募集し、派遣する兵は、ハルキ達が隠れ住む洞窟周辺の村から集められた人達である。

 この者達を殺せば、当然、周囲の村からハルキ達が恨みを買う。


 100人で勝てれば良し、負けても相手の行動を抑制出来る、そのため、彼としてはどちらでも良かった。



 それから1週間後のとある町の一角で、周辺から集められた男達が、雇い主の到着を待っていた。

 

「ジェイじゃないか。お前も参加させられるのか?」


「あぁ、誰かと思えばマシューさんですか。お久しぶりですね。

 今回出ておけば、次回は別の奴に任せるから、と言われましてね」


「そうか。

 まぁ、次回は第1王子と第2王子の戦いの可能性があるから、そちらに参加させられるよりは良いか……」


「そういうことです。まぁ、その戦いが長引いたら、結局は徴兵されるんでしょうがね」


 多くの者が近くから集められたため、中には顔見知りの者も多く居る。そのため、ところどころで近所話に花を咲かせる姿はあるものの、その表情には暗雲が立ち込めていた。


「お互い、無事に生きて帰りましょう」


「そうだな。ただでさえ、今回は給金が出ないからってプンプンなんだ。早く終わらして帰らないと、母ちゃんに怒鳴られちまう」


「うちも、死んだら呪ってやる、って送り出されましたよ」


 彼等は、食事こそ与えられるものの、硬い黒パンのみ。そして給料は一切ない。

 そんな内容で集められた人々は、無論、自分から望んで来た訳ではない。


 兵役に出なかったからと言って本人が直接処罰されることはないが、村や町全体で出兵数が少なかった場所は、税金の値上げや保存食の没収、酷いときには村全体が炭鉱送りなんてこともある。


 そのため、国から出兵の要請があれば、村人全員が集まり、話し合いやくじ引きなどにより生贄を決めた。比較的裕福な町は、全員で奴隷を購入し、送り出した場所もある。


 そうして、集められたのが彼等であった。 


 そんな彼等の前に、小太りで無能そうな40代の男が姿を現し、高い位置に設置された豪華な椅子に座る。

 そして、その隣に立った男が全体を見渡し、大きく声を張り上げた。


「皆の者、本日は良く集まってくれた。

 これより、我らの指揮を執られる准男爵様のお言葉を賜る」


「敵はたったの4人だ。お前等は俺の手足となって動け。いいか、決して俺の作戦を邪魔するんじゃないぞ」


「はっ」


「……それでは、訓練を開始する。まずは部隊分けからだ。その方から一列に並べ」


 それから1週間、ろくに飯も食えず、割に合わない環境で訓練をさせられた彼等は、隊列を維持しながら戦場へと向かった。


 愛する家族のもとへと帰るために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ