<2>姫に召喚されまして 2
今、俺の目の前には、100円ライター程度の炎が、4つ浮かんでいる。
それぞれが独自の意思を持っているかのように、不規則な動きで飛び回り、時には俺が閉じ込められている檻の中まで入ってくる。
「お望みの魔法なのだが、どうだろう。
これで信じて貰えたかな?」
「……あぁ、十分だ。疑って悪かった」
あまりにも中二設定を続けるサラに対して、異世界だという証拠を見せろ、とりあえず魔法とやらを使ってみてくれと、伝えたところ、そんなことでよいのか? と言って彼女は4つの炎を出現させていた。
もし、この炎がマジックだとしても、中二設定を貫くために用意したと考えるには、少々無理がある。
彼女の言葉を全面的に信じた訳では無いが、少なくとも、真剣に話を聞く必要性を感じるには十分だった。
「そうか、信じてくれてありがたく思うよ。
時に、キミは先ほどまでの私の話は覚えているかな?
まさかとは思うが、聞き流したりはしていないだろうね?」
「い、いや。大丈夫だ。
あれだろ? 王様が亡くなって次期王を決めなきゃいけない期間に、サラがすごい魔法を作っちゃって、自分が王になりたい兄達から命を狙われている。
……そんな感じだったよな?」
彼女の言葉通り、殆ど聞き流していたのだが、あまりにも中二設定のテンプレートと言って差し支えない話しだったので、大筋だけは耳に入っていた。
「うん、まぁ、若干ニュアンスは違うが、そういう事だよ。
それで、先にも話したように、異世界から召喚したキミに助けて欲しいんだ。
……っと、そうだね。だいぶ遅くなってしまったが、キミの名前を教えてもらえるかな?」
「あー、俺は大山春樹。呼ぶときは春樹でかまわない。27歳無職、毎日ハロワ通ってます。……こんな所で良いか?」
向うが姫だと名乗ったので、仕方なく無職だと名乗る。……姫って職業なのだろうか?
「ハルキか。了解したよ。
しかし、すこしだけ間違いがある。キミは27歳じゃなくて16歳だ」
「……は?」
「今日から、キミは16歳になったんだよ」
サラの言葉に引っ張られるかのように、手元へ視線を落とす。そこには、彼女の言葉を後押しするかの様に、艶やハリが復活してる肌が存在していた。
「……あー、あれか、異世界転生プラス年齢若返りのタイプのやつね。了解、了解」
もうこうなりゃなんでも有りだ。なんでも受け入れてやろう。
「あとはあれか? 最強な感じの力とか能力とか、チート的な物でも貰えるのか?」
「……あぁ、その通りだよ。たしかに、キミには特殊な能力が在る。それが最強な感じかは、ボクでは判断できないけどね。
……キミは未来予知とかは出来ないはずなのだが? ボクの選定ミスかな?」
占い師じゃあるまいし、ニートにそんな事が出来るわけないだろ。中二病のテンプレート過ぎるからだよ!!
「……まぁ、いいや、話を戻すよ。
キミにはボクが召喚した際に、召喚魔法を付与してある」
「召喚魔法ねぇ……。
それで? ドラゴンとか召喚して、姫様を守ればいいのか?」
「いや、鍛えないと何も呼び出せはしないよ。
キミには妹を買いに行ってほしいんだ」
「……は?
買いに行く?
助けに行くじゃなくて?」
「あぁ、正確に言えば、義理の妹だね。
ボクのじゃなく、キミの妹を購入するんだ」
「…………」
分かりかけていた話しが、突然にして行方不明になった。