表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

幕間2 火精霊と元盗賊少年<帝国歴570年9月19日>


 葉っぱのドレスを来た扇情せんじょう的なねえちゃんがワイバーンの群れに向かっていく。



「あぁー、俺も行くから置いていかないでくれ!!」



 俺は髪をむしりながら、ねえちゃんの後を追いかける。


 別に義勇心ぎゆうしんいたわけではない。


 ひとりが心細かったからだ。


 それに――あの姉ちゃんトロそうだから、金策に困ったら奴隷商に騙して売ってやろうという打算もあった。


 まあ、俺の恋人にでもなってくれるんなら話は別なのだが――


 そんな考えをしながら走っていた俺に影が落ちる。



「げっ!」



 何かが入った檻が俺目掛けて飛んでくる!!


 俺は身を丸めて横に転がる!なんとかぎりぎり避けることができた。



 がしゃーん!!と音を立てながら大破するおり


「ワイバーンが吹っ飛ばしたのか?中身はきっとお陀仏だぶつだろうな」


 と言いながら、俺は中身の確認にいく。まあ、火事場根性ってやつだ。



「うぅ……」


 そこには無傷の10代半ばの少女がいた。


(「いや、こいつは……火精霊か?」



 まとっている火のマナが俺にでもわかるくらい人間と違う。



「あ、あなたは一体?それよりこの包帯を解きなさい!!」



 と全身に巻かれた包帯の所為せいでじたばたしながら怒鳴る火精霊―紅色のポニーテールに胸は姉ちゃんより小さいがあるといえる位の分量、不思議な衣装に身を包まれている。



(「あの包帯の所為せいで身動きがとれないのか?」



 俺は無い頭を振り絞る――これはチャンスだ。きっとこいつは噂で聞いたことがある裏のオークションに売られようとしていた強力な精霊だ。しかも可愛かわちゃんだ。


 この精霊と契約を結べば、非力で何の取り得もない。しかも金もない俺が可愛い娘ちゃんと超強力な力をゲットできるのだ。ならおとことしてやることは一つだけだ。


「構わないが、その代わり俺と契約をしてくれ。仮契約でいい。その包帯はきっとなんらかの魔術の所為で今の俺では外すことができない」


「け、契約……」


 とうろたえる火精霊。契約は精霊にとって神聖で不可侵なものだ。自分が添い遂げると決めた相手にしか本来できない。仮契約は結んだ後に契約した者同士のお互いの了承があれば解除できるものらしいと村一番の物知りじじいから聞いたことがある。


 あと、包帯についてはぶっちゃけ嘘だ。というかあの包帯についてはよくわからん。


「わ、わかったわ。仮契約を結ぶけど……きちんと契約解除してね?」


「ああ、わかってる」


 となるべく、表情を出さないように俺の表情筋が頑張っている。

 

 もちろん、心の中では『よっしゃあああ!!』とその辺りに転げまわりたいほど喜んでいる。


 俺の持っている安物の短剣を媒体に火精霊と契約を結ぶ。


 短剣にありえない火のマナの息吹を感じる。火の精霊の本体がこの短剣に移ったのだ。


 俺は短剣で火精霊を傷つけないようにかつ必要以上のボディタッチをしつつ、火精霊の包帯を解いていく。


「うぅ……」


 という恨みがましい火精霊の視線を感じるが無視だ――俺は精霊もこんなに柔らかいんだなとワイバーン襲撃のこの状況で火精霊の肌を堪能たんのうしていた。


 俺と火精霊のレムとの出会いはそんな打算なものだった。


 この後、レムに契約解除をするように再三言われるが無視した。


 精霊は契約者を守る義理堅い性格だ。レムと契約してなかったら俺は生きて町に向かうことはできなかっただろう。


 いろいろな意味で期待しているぜ!レム!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ