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幕間1 火精霊の領域<帝国歴570年9月15日>


「ちっ、小型の精霊しかいねぇな」


「中型一匹なら俺たちでも対処できるが……複数ならきついぞ?」


「まあ、小型精霊でも精霊石の材料になるんだし、いいじゃないっすか」




 そんな、最低の会話が聞こえてくる。


 わたしはマグマの中に身を隠しながら、3人の冒険者らしきものをこの火山地帯――火精霊の棲みすみかあるじとして観察していた。



 ――結論、不適格――



 わたしはマグマを操って5mほどの火の大蛇だいじゃを作り出し、冒険者たちの目の前に出現させる。



「な、なんだ。新種の精霊か?!」


「と、とにかく逃げるぞ!!」


 と言って一目参いちもくさんに逃げていく。



「あの子たちを取り戻さないと……」



 わたしは指から火のひもを作り出す。


 その紐はみるみる伸び、下級の火精霊の子たちがらわれている男達の腰に結んであった魔法の袋を回収する。


 急いで逃げる冒険者たちはそのことに気づくことはなかった。






「もう、駄目でしょ!人間に近づいたら!!」


 わたし――レムは人間にらわれそうになった精霊たち(犬型、猫型、妖精型)にお説教をしていた。


 わたしはこの火精霊の領域の主でレムという――つい50年前はわたしの姉さんが主だったのだけど、マナに還ってしまったので、仕方なく火の上級精霊であるわたしが治めている。


 わたしは人間で言えば、紅色を基調とした民族衣装を着ており人間で言えば10代半ばの少女に見えるだろう――髪は昔姉さんの契約者候補だった人間の男性に言われてポニーテールといった髪型をしている。


 犬型、猫型の精霊の子はどこか不満げな様子で、言葉が喋れる妖精型の子が彼らの言い分を代弁する。


「レムさま、助けて頂いたのは本当にありがとうございました。ただ」


「ただ?」


 あたしの目が釣りあがるのを感じて妖精型の子が言いよどんだが、最後まで口にする。


「わたしたちは自分が信頼できる人間と契約をして冒険がしたいのです」


「そう」


 本当はわかっていた。


 わたしだってそんなことを夢に見ていた時があった。


 言い分がわかるからこそ、彼らに相応ふさわしい人間なら契約するのを見守る気だった。


 でも、今日来た連中は精霊を精霊石の材料としか考えてなかった。


 わたしみたいな上級精霊なら精霊石の一個や二個なら簡単に作れる。


 ――下級精霊はその命をかけないと作り出すことはできない。


 きっと何か無理やりな手段でそんな非道なことをしようとしたのだろう。



「あなたたちの言い分はわかったわ。でも、ここを治める主として人間との接触を禁じます。いい?」


 精霊たちは無念そうな顔をしてうなづくのだった。


 ――今思えば、油断していたのだろう。


 自分の上級精霊の感知能力があれば人間の悪さを止められると……













「もう、やめて」


 おりの外に広がる絶望的な光景にわたしの心は悲鳴をあげる。


 下級精霊たちが一人の人間の魔導師の作った魔法陣に吸い込まれて、精霊石へ姿を代えられているのだ。


「お、お願い……精霊石ならわたしがいくらでも作るから」


 

 紺色の魔導服に包まれ、顔に出来物できものがそこら中にある人間の男が、



「それはできないな……おまえは売り払って金にするつもりだ。ならば、代用できるもので補うのが道理だろう?」


「ど、どうして、こんな魔法を使えるなら、精霊石なんて必要ないでしょ?!」



 精霊石は人間が強力な魔法などを行使するときなどに使われる。


 でも、この人間は魔法杖まほうじょうの補助のみで吸い込むように精霊たちを精霊石に代えている。


 こんなの通常不可能だ……いくら魔力があるのか想像もできない。


 それにわたしに巻かれた魔導文字でかれた包帯――わたしのような上級精霊を一瞬で無力化する力があった。



 人間の魔導師はそれ以上わたしの質問には答えず、淡々と作業をするように精霊たちを精霊石に代えていった。


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