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第十三話 いざ塔へ(帝国暦570年9月23日)


 ハーレム王さんとの戦いの次の日、塔攻略のため、わたしたちは酒場のマスターさんに言ってしばしの間、酒場の仕事のおいとまを頂くことをお願いしました。


 後八日以内に塔攻略しないと結界によって町人やぷれいやーの人たちを含めて全員が死んでしまうとコンドウさんから昨日聞きました。


 町の冒険者ギルドの方にもそのむねが伝えられており、急ピッチで攻略メンバーが組まれているみたいです。そこでコンドウさんは私達にいろいろと事情があることを察してくれて「一緒に塔を攻略しませんか?」と”善意”で誘ってくれました。わたしはもちろん同意して、ポールさんも「生きるために仕方ないしなぁ……あと、お宝あるかもしれないしな」という事でセットでレムちゃんも参加してくれることになりました。


(「昨日のレムちゃんの様子が心配だったのですが……朝会った時はなんともないと言ってました。わたしの気のせいだったのでしょうか?」


 少しに落ちませんでしたが、気分を切り替えます。


 13時ごろ酒場の前に集合なのでそれまでに冒険の準備をしないといけないのですが……お金がありません。酒場の宿泊代は1ヶ月ほどは無料にしてくれると言われているので助かるのですが、さすがに前借するわけにもいきません。


「はぁ」と溜息を吐きつつ、「防具は布の服ですか……傷薬くらいは買っておきましょう。ポールさんたちも火の魔石を買ってお金がないでしょうし」と屋根裏部屋でわたしは袋に入ったお金を確認したりします。


 何度も見てもお金は変わりませんが、お給料が日払いなのは本当に助かります。



 ありがとうございます。マスターさん!!



「問題は……」布団の上で天井のガラスの日の光を浴びているサフィです。


(「危険なところにサフィは連れていけません。でも、わたしに万が一のことがあったら……」


 サフィを託す先が思いつきません。


「そういえば……うさみみの少女はコンドウさんのお仲間なんですよね?」


 コンドウさん経由でもしものときや、わたしが塔に行っているときのお世話をお願いしましょう。そう決めたわたしは――


「サフィ、いい子で待っているのですよ」


「……」サフィのつぶらな目がわたしを捉え、寂しげな雰囲気が伝わります。


 わたしはサフィの元に向かい――サフィを抱きしめます。



「不自由な思いさせてごめんね」とサフィをあやしながら短い親子の時間を過ごすのだった。








 コンドウさんが冒険者ギルドにいると聞いたわたしはギルドに用事があるというポールさんとついでにレムちゃんと一緒に冒険者ギルドに向かいました。


 無事コンドウさんに会え、うさみみ少女にサフィのことを頼むことができました。


 ”めーる”とかいうものをウサミミ少女にするとコンドウさんが言ってましたので、大丈夫でしょう。たまにぷれいやーさんは専門用語を使うので困りものです。


 それも困りものなのですが――



「わしも連れてっておくれー!」と言い、わたしの腰周りに抱きついているご老人にわたしはすごく困っています。


「あ、あのですね。おじいさん。おばあさんはわたしたちが必ず助け出しますからね、ね」と言うのですが、いやいやをして納得してくれません。


 冒険者ギルドで一緒に塔でおじいさんの連れ合いのおばあさんを一緒に探してくれる冒険者を探していたご老人――ファムおじいさんという御年おんとし70で顔は永い年を重ねたためにしわくちゃでお陰でまぶたも垂れ下がっており瞳が確認できず、足が不自由なため杖を持っており、頭は髪一本生えていませんが白い髭は胸辺りまで伸びて、腰も物凄く曲がっています。そのため、わたしがかがまなければ目線を顔正面にあわすことはできないでしょう。



(「た、たすけてください。レムちゃん、ポールさーん!!」とお二人にアイコンタクトをおくります。



 ですが、レムちゃんは困った顔をして手で平謝りをしています。


 ポールさんは気づいてない振りをしてます。あ、少しおじいさんを羨ましい視線をしてますね。もう!本当にもうです!!



「本当に危険なんです。おじいさんを守ることができるかどうか……」


「構いませぬ。わしは心臓をわずらっていましてな……余命いくばくもありませんのじゃ。いくら魔法が万能といえど、まだ治せない病はございますのじゃ」


「……どうしても待てないのですか?」


「これは年寄りの勘なのですが……それだと間に合わない気がしましてな。別に邪魔ならおとりに使ってくださってもかまいません……どうか、もう一度ばあさんに会いたいのですじゃ」とわたしにしがみつきながら切羽詰まった声を出すおじいさん。そこには若い女に抱きついてるいやらしさなどなく、むしろ――



「〜〜っ」物凄く葛藤します。何ででしょう。おじいさんを連れて行くことはどう考えても間違っています。でも、”そこに愛があるならその過ちは……”不意にそんな言葉が頭をぎります。ここで拒否するのはまるで私を……。



「わ、わかりました。コンドウさんたちに許可をとってきますので」とおじいさんをわたしの腰元から引き離し、コンドウさんたちの元に再び向かいます。



「ありがとうございますじゃー!」とわたしの背中におじいさんの真摯な言葉が投げかけられます。


「そこに愛があるならその過ちは……”間違いではない”ですか。一体私はどうしてしまったのでしょうか?」とそんな独り言がついに漏れでてしまいました。

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