リアリー桃太郎
突然ですが、冬の或る町に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。ある日、お婆さんは洗濯をするために家の洗濯機を回し、お爺さんは隣町のコンビニに買い物に行きました。
さてさて、隣町まで歩いて行った元気なおじいさんですが、帰るときにはすっかり疲れ果ててしまいました。困ったお爺さんは、札を崩してお釣りに貰った小銭を使って、電車に乗り込みました。
お爺さんは電車から降りて改札口を通り、駅を出ると、電柱の近くに冷凍食品輸送用の発泡スチロールの箱が置いてあるのを見つけました。お爺さんが見てみると、中には一歳くらいの男の子が入っていました。お爺さんは、「おうおう、こんな所にいては寒そうだ」などと全く思わずに、「誰だこんな所に騒音問題の根源を置き去りにしたやつは!! こんなもの、ワシが拾って持って帰ってペットにしたるわい!!」とか考えて発泡スチロールごと家に持って帰りました。
箱が途中で底抜けしたのは秘密です。
お爺さんが家に帰ると、お婆さんはもう洗濯を終わらせていました。
「いやはや、最近の洗濯機は便利ですのう」
「それより婆さん、とんでもねえもんを拾っちまったんでぇ」
「とんでもないもの? もしかして、道端に改造スタンガンが落ちているのを拾ってきたり、万札のつまったスーツケースを拾ったと思ったら中にはダイナマイトが入っていたり、そういうことかぇ? 最近の世の中は物騒だからのう」
「そうじゃないんでぇ。実はな、発泡スチロールの箱に赤ん坊が入っていたのせ」
それを聞いたお婆さんは、後ろに倒れるというオーバーリアクションをしながらも、あまり受けなかったので、さも何事もなかったかのように立ち上がりました。
それからお爺さんとお婆さんは、どういう経緯からか知りませんが、拾った赤子を育てることにしました。お爺さんは、この男の子を「恭男」と名付けました。
それから二十年余がたち、お爺さんとお婆さんは完全に死滅しました。恭男だけが残り、家は地震で崩れました。
二年後、やがてヤスオは大物政治家になりました。思い切った政策で数多くの悪徳業者を潰し、消費税を2%まで下げるようにと総理大臣に告げ、政策が成功すると知らぬ間に政界からいなくなっていました。
今、恭男は健康食品会社の社長になり、あくどい商法で大金を手にしていました。この恭男が退治される日も、遠くはないはずです。
終わり
ありがとうございました。