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プロローグ
白い猫を大事そうに抱く男。マフィアとも呼べない地下組織の本拠地の中、その姿は妙に浮いていた。口に出しての文句は言わなかったが、まじまじと眺めているのを男はきっと気付いているはずだ。隠す気もない無遠慮な視線に、しかし男は反応しない。ただ黙って猫を撫でているだけだ。
「タケミ」
呼びかけてやっと男は振り向く。無精ひげにおおわれた顔はいくらかやつれて見えた。
「それは何でしょう?」
路上生活の子供の頃、スラム街からの付き合い。フェドートにはタケミの表情から感情を読み取ることは簡単だった。
「大事な、子さ」
しかし、その複雑な感情を理解することはできなかった。