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オタサーの姫と呼ばれる彼女は、実は真逆のサバサバ系

作者: 有明海
掲載日:2026/06/25

「おい、見ろよ」


 友人が指さす方を向くと、男たちに囲まれている一人の女子の姿があった。


「ねぇねぇ、奢るからさ一緒に食べようよ」

「大丈夫。私だって手持ちあるから」

「違う違う、課題のことで話したいんだよね」

「課題なら男の子同士で話せばいいんじゃ……?」


 食堂でのこの光景には、この三年間でもう慣れたものだ。それは俺たち以外も同じなのか、集団に訝しむ視線を送っている。


「流石、『オタサーの姫』といったとこだな」

「……懲りねぇなあいつら」


 オタサーの姫という、不名誉なあだ名で呼ばれているのは、俺と同じゼミの白幡由梨。


 艶やかな黒髪は肩のあたりまで伸び、頬の横で切り揃えられた姫カット。童顔で身長も低く、普段着ている服もワンピースなどが多いため『オタサーの姫』と呼ばれる理由も分からなくはない。


「いいなぁー。俺も付き合いてぇなー」

「お前、さっき馬鹿にしてただろ」

「宏人には分かんないんだよ! ああいう子が一番エロいんだから!」


 我が友人はなんというか……脳みそが下半身に乗っ取られている。典型的な男子大学生って感じがして嫌いではない。


 俺が改めて由梨を見ると、こっちと目あった。多分これは「見てないで助けろよ!」っとでも言いたげな視線だが俺はあえて無視した。


 絡まれたら確実にめんどいことは目に見えてる。


 ただでさえ、女子が少ないこのキャンパスでは彼女の存在も自然と姫になってしまうのだろう。


 まぁ大学ではあんな感じだけど、プライベートでは『お姫様』とは真逆だけどな。


 ◇


「ドンキでボトルとつまみ買ってきた」

「サンキュー。レシートくれ、払うから」

「いらない。前の飲みの割り勘分」


 夜、俺の部屋に慣れた風に入ってきたのは、大学でオタサーの姫と蔑称をつけられている、あの白幡由梨だ。


 ただし大学の時とは違い、今の格好はオーバーサイズの黒いパーカーにジャージのズボン。髪も適当にまとめられていて、かなりラフなものになっている。彼女のこんな姿を大学の奴らは見れないだろう。


 だからといって特別感だとか愉悦感などはありもしないが。


「今日泊まらせてよ」


 由梨はこんなことを簡単に言ってくる。一応だが、別に俺達は付き合っていない。


「え、なんで?」

「終電ないからお願い。お母さんには言ってる」

「いや……女友達の家泊めてもらえよ」

「彼氏とイチャイチャする日らしいから無理」


 そう言ってソファーに座り込み、グラスに嬉々としてウィスキーを注ぎいれる。本当なんというか……この姿を学校の奴らにも見せてやりたい。あの男に囲まれる美少女とこのおっさんが同じ人間なはずがない。


 由梨は本来サバサバ系。


 細かいことに執着しない、他人のことを気にしない。同性の友人を蔑むことはないが、ただストレート過ぎる物言いでよく冷たいと勘違いされる。そんなイメージとはちょっと違う女の子だ。


「なにじっとみて……」

「いや……俺の部屋に慣れすぎだろと。実家じゃないんだけど」

「ぶっちゃけ実家より落ち着く。それにあんた私のこと襲ったりしないじゃん? こんな可愛い私に下心持たない男、世界であんたくらいだし」


 確かにそれはそうかもしれない。一回本人からも「あんた股間にちゃんとついてる?」と確認されたくらいだ。俺からしたら「男友達と体を重ねたいと思わないだろ? こいつへの感情もそれだ」っていうのが反論だ。


 友達としてのこの関係が今はちょうど良い。


「いいから飲も。ほら早く隣座って」

「へいへい」


 言われるまま氷入りのグラスを持ってきて俺もハイボールを作る。由梨に作らせると、明らかに比率のおかしい濃さで提供してくるため任せられない。それに飲むペースも早いので対処しきれない。


「「乾杯ー」」


 プハッ、と小さく息を吐き出す姿は、昼間に食堂で見た「お姫様」のそれとは程遠い。


「はぁー今日もつっかれたぁー。大学生は人生の夏休みって絶対嘘でしょ」

「お疲れ。レポートやんねぇとな来週までに」

「あーそれねー。めんどくさ」


 ポテトチップスを雑に口に放り込みながら、由梨は盛大にため息をついた。


「それよか相変わらず、大人気ですなぁー」

「あいつらが断ってもついてくんのよ『奢るから一緒に食べない?』って」

「そういえば影で『オタサーの姫』なんて言われたぞ」

「外見だけで判断すんな。私が好きでこの髪とメイクしてんの! 飯くらい一人で食えるつうの」


 彼女に関しての噂話で「推したらヤれそう」だとか「ヤリマンだろ」みたいな下世話な噂はよく聞く。だから由梨の言う「下心丸出し」と言うのは滲み出ているものがあるのだろう。……俺も男としては気をつけねば。


「大変だな、外見だけで誤解されて」

「本当それー。こうやってくつろいでだらだらできんのも、あんたの前だけー」

「まじぃー? 好きになっちゃうわー」

「えーきもぉーいー」


 間髪入れずに飛んできたゴミを見るような視線に、俺は思わず吹き出した。こう言うやり取りを出来る女子も貴重だと思う。


「他の男子もあんたみたいだったら楽なのに。学校だと色々めんどいし」

「俺みたい?」

「他の男ってさ、私がちょっと笑いかけただけで『脈ありかも』って勘違いしてくるの。 男女の友情が成立しないんだよね、なんか」


「男女の友情は成立するか?」みたいな話題が酒の席で上がったりするが俺は成立すると思う。でもその価値観を共有し合える人はなかなかいない。俺と由梨が仲良くできているのも、この価値観も一つの要因だ。


「見て見てー、ニコッ?」


 人差し指を両頬においてわざとらしい笑みをこちらに向けてくる。


「キュン」

「胡散臭」


 と、由梨はげしげしと俺の肩を小突いてくる。


 そんな調子でひとしきりじゃれ合い、手元のグラスに口を付けた。アルコールが回って少し火照った頭で、ローテーブルの上に視線を落としたとき、あることを思い出す。


「ってか、そんなことよりレポート! やばい教えて!」

「アルコール入れてんだから今日は辞めようぜ。それに俺だって終わってないから」

「なら一緒に今からやろ」

「えー……」


 そう言って、床に置いてあったトートバッグからこれまた雑にノートPCを取り出す由梨。俺もデスクから自分のPCを持ってきてテーブルの上に並べた。

 せっかく楽しい時間なのに気分は台無し。まぁそれでもやんないといけないんですけどねぇー。俺も渋々キーボードに手を伸ばした。


 お互いAIなどを使って作業をして、十五分が経った頃。


「……眠い。やっぱ無理」

「だから言ったじゃん……」

「仮眠するから二十分後に起こして」


 限界を迎えたように由梨の頭がこてん、と俺の肩に落ちてきた。

 オーバーサイズのパーカーから、柔軟剤と香水の匂いが鼻をくすぐる。


「……おい、寝るならベッド行け」


 声をかけるが、返事はない。仮眠すると言って仮眠になったことは一度としてない。これは朝までぐっすりコースだろう。まぁ都合のいいことに明日はバイトがないからいいのだけど。


「……ほんと、無防備すぎるだろ」


 二人きりの部屋で、肩に乗る横顔を見ながら俺は小さく毒づいた。


 ◇


 結局、二十分で起きることなどなく由梨をベッドに運び、俺は余った毛布にくるまってソファで寝る羽目になった。


  「……んー。よく寝た」


 翌朝、のそりと毛布から這い出してきた由梨はジャージ姿で髪もぼさぼさ。しかしその表情はすこぶるスッキリしている。


「仮眠はどうだった?」

「よく寝れた。風呂借りる」


 由梨はあくびをしながら、ベッドから降りると洗面台に向かっていった。そしてシャワーの音が聞こえると同時に俺も洗面所へ入っていく。信じられないと思うが俺らの関係だとこれも許されている。


「今日の予定は?」


 歯を磨きながら質問すると大きな声で返事が返ってくる。


「習い事も手伝いもないから暇。そっちは?」

「バイトなし。課題あり」

「よし、ならなんもないか。せっかくだし、どっか行く?」


 ぶっちゃけ課題のやる気もないから由梨からの提案はかなりあり。なんなら最近課題の疲れもありどこか遠出したい気分でもある。


「車でどっか行こうぜ。レンタカー借りて」

「まじ!? 横浜いこうよ! 私、今から準備するー」


 シャワーの音が止まると嬉しそうな声をあげる由梨。それと同時に俺も歯磨き粉を吐き出して口をゆすぐ。


「今日のコーデのご希望は」

「上青、下黒」

「へいへい」


 俺はクローゼットから青のYシャツと黒のスキニーパンツを選び出すと、洗面所に持っていく。相変わらず強い美意識とこだわりだけは徹底しているのが彼女らしい。


 十五分後、メイクを完璧にしカジュアルにな服装をした美少女が現れた。


「どうよ、可愛いでしょ?」

「はいはい、可愛い可愛いー」

「でしょでしょ。お母さんに可愛く産んでもらったからね」


 そんなこんなで俺達は、スマホで近くのレンタカーを予約した駅前の駐車場へと向かった。用意したのは、ちょっとしたドライブには十分なファミリーカー。由梨は手慣れた様子で助手席に乗り込むと、シートを倒しシートベルトを締める。免許を持っていない彼女にとって、ここは完全に自分専用の特等席らしい。


「横浜でぶらぶらして帰り由梨の家でよい?」

「よいよい。じゃあーレッツゴー!」


 俺のプレイリストを車につなげ、音楽を鳴らしていると窓を開けながら鼻歌を歌う。きっと友人にこのことを話したら、心底うらやましがるだろう。


「お前さ、大学の他の男たちに車出されたりしないの? なんかあいつら喜びそうじゃん」

「あー、いるいる。サークルの先輩とか『今度ドライブ行こうよ、美味い店連れてくから』って。絶対に行かないけど」

「なんで? たぶん色々奢ってもらえるだろそのほうが」

「やだ、気使う。奢られんのも恩の押し売りって感じで嫌」


「恩の押し売り」って。まぁこう言うのを気にするタイプだ。やられっぱなしを嫌いギブアンドテイクの関係を望む彼女らしい。


「その点、宏人はちゃんと割り勘でって言ってくれんじゃん。こっちとしてもその方が助かる」

「俺は一人暮らしだからな。財布もそんな余裕ないんだよ」

「今回もガソリンとレンタカー代は払うね。その代わり昼飯は出して、相殺で」


 そんな、いつもの気安いやり取りをしながら、俺達は横浜へ向けて車を走らせた。


 高速を降り、目的の商業施設に車を滑り込ませる頃には、ちょうど昼時になっていた。まずはぶらぶらと見て回ることにして、俺達は服屋に入ることにした。

 手頃な夏服はないかと物色していると、二つのハンガーを持って由梨がこっちにやってくる。


「左と右、どっちが似合うと思う?」


 左手にはアイボリーのブラウス。右手には白を基調とした黒の模様入りの柄シャツ。こういう時に、どう答えるのが正解なのか恋愛弱者の俺にはわからない。とりあえず正直に言ってみるか。


「左。そっちの方が夏らしくて良いと思う」

「わかった。やっぱり右にするこのデザインの方がカッコいいし」

「……おいこら」


 そう言って、全く悪びれもなく柄シャツをキープし由梨はレジに向かった。たぶん最初から答えは決まってたんだろう。ちなみにこれを聞いたのは「こういうの男は喜ぶでしょ」となんとも由梨らしい理由だった。


 ◇


 住宅街に続く大通りを走っていると、由梨が隣の席でパチリと目を覚ました。


「おはようさん。もう夜だけど」

「あー寝ちゃったか。ここ家の近く?」

「そんなとこ。中華街からの帰り道でぐっすり」


 まぁ弾丸だったし仕方ない。帰り道はその分俺の好きな音楽も流せたしよしとする。


「あのさ、この住所の近く止めてくんない? 親に声かけてくる」


 スマホで見せられた住所に従い俺達は由梨の実家に向かった。


 そこは住宅街の片隅にある、白い屋根の一軒家。


 家の前の小道に車を付け「じゃあな」と送り出そうとしたその時、タイミング良くガレージの奥からエプロン姿の女性が外に出てきた。家の前に停まる車と、助手席から降りようとする由梨。そして運転席の俺の姿を見て、パッと目を輝かせた。


「あら! 由梨、おかえり! ……って男の子?」

「げ、お母さん」


 由梨が露骨に嫌そうな声を漏らすが、時すでに遅し。早足で運転席の窓際までやってきた。電話越しで声を聞いたことがあったがたぶんこの人がお母さんだな。


「初めまして。同じゼミの――」

「宏人くんよね? 由梨から聞いてるわ。『お泊まりくらいする仲良い子』ってこの子でしょ? ラブラブなのね」

「お母さん、うるさい。ちょっと横浜まで買い物行って、送ってもらっただけだから」


 由梨が車から降りて面倒くさそうにバッグを肩にかけるが、お母さんのテンションは上がる一方。


「お父さん! ちょっと、お父さん出てきて! 由梨が男の子を連れてきたわよ!」


 玄関のドアが勢いよく開き、お父さんと言われる人がこっちにまでやってきた。絶対何かいらぬ誤解をされてる。


「白幡ですが。君は由梨の……彼氏?」

「初めまして。彼氏ではなく友達です。今日は買い物に付き合ってもらって……」

「友達? あー、宏人くんか! ごめんなうちの娘が迷惑かけてるだろ、色々振り回してるだろうし」


 名前を出すまでもなく俺が誰だか気づいたらしい。こちらが恐縮していると、由梨が車のドアに寄りかかりながらケタケタと笑いだした。


「宏人は怒んないから大丈夫」

「まったくお前は……。わざわざ車で送ってくれてありがとうございます、もしよかったらごはんでも――」

「あ、言い忘れてた。私この後駅前で飲んでくるからヨロ―」

「そうか、それは仕方ないな。宏人君、今度は是非ご飯でも一緒に食べよう。それともし良かったらこれ持っていってくれ」


 そう言って大量のパンが入ったビニールを渡される。確か、実家がパン屋とか言ってた気がするからそう言うことなのだろう。一人暮らしだしこう言うのはマジで助かる。


「ありがとうございます。すみません、そろそろ車の返却の時間があるのでここら辺で」

「由梨、ご飯行くのは構わないけど彼に迷惑かけないでよ。それとこんな真面目でいい子、簡単に手放しちゃダメよ?」

「手放さないって。将来的にまた挨拶にでもくるでしょ」


 由梨は呆れたようにため息をつき、「もう行くよ」と俺の車のルーフをポンと叩いた。

「またいつでもいらっしゃいねー!」と言う両親に送られながら俺はゆっくりと車を発進させた。由梨は助手席に深く寄りかかりながら、訝しむようにこちらを覗いてくる。


「あんた顔赤いけど大丈夫? どしたん?」

「い、いや……。勘違いじゃね?」


 そんなのあの言葉のせいだ。「将来的にまた挨拶にでもくる」ってどういうことだよ。

 彼女の言葉に少しだけ動揺してしまい、俺のハンドルを握る手にはいつもより力が入っていた。


 ◇


 車を指定のパーキングに停め駅へと続く静かな帰り道。昼間の賑やかさは嘘のように消え去り、二人の足音だけが規則正しくアスファルトに響く。


「なんかいいな家族って。久々に実家帰りたくなった」

「徳島だっけ?」

「そうそう。たまに連絡してるけどさ、簡単に顔合わせられないからな」


 あの姿は羨ましかった。うちの家族も仲がいいと思うが由梨の家族ほどではない。

 三人の仲睦まじさを見ていると、ふと自分もあんな家族をもてるのか不安になる。人生結婚がすべてではないにしても、俺だって興味がないわけではない。


 そんなことを考えていると由梨はふと足を止めた。


「今日さ、両親とあんたが会った時なんか変な感じした」

「変な感じ?」

「うん。お父さんやお母さんにも安心して紹介できたと言うか……。だから『将来的にまた挨拶にでもくる』とか思わず言ったのかも」


 どうやら彼女もあの発言を気にしていたらしい。なんか安心した、意識してるのが俺だけみたいだったから。


「でも、今すぐ彼氏欲しいとか思わないかな」

「まぁそうだな。俺も今の生活で充分満喫してるし」

「だよね。なんかさ……このまま誰かと結婚する未来が見えないんだよね。私、バリバリ働いて金稼いで趣味の旅行とか自分の成長につながることしたいし」

「なら別に結婚しなくてよくない? このご時世で結婚がすべてじゃないし」

「そうだけど、お母さんは孫の顔見たいんだって。流石にここまで自由に育てられたんだからさ。その思いには答えたいなぁーなんてね」


 今日の様子から見ても、確かに由梨が愛されているのは目に見えて分かった。お母さんの思いに応えたいと言うのもなんか由梨らしい。


「それで色々考えたんだよね……。あんたとのこと。私達って異性の友達にしては行きすぎだよね?」

「幼馴染とかでもないのに異性の家出入りしてるしまぁ、な」

「そうだよね。さっきも言ったけど今は誰とも付き合いたいと思わない。私は今の宏人とのこの心地いい友人関係を続けたい」

「うん俺もそれはそうだな。お前といると楽しいしバカできて満たされるから」

「それでもさ、『何言ってんだよ勝手だな』とか『都合良すぎだろ』って思われるかもだけど――」


 由梨はまっすぐに、俺の目を見つめ言葉を繋げる。


「将来、私の薬指には宏人とお揃いの指輪をつけてると思うよ」


 サバサバした彼女らしい、力強い真っ直ぐすぎる言葉。薬指ってそう言うことだよな。


 俺は恥ずかしさを隠すようにおどけた返事をした。


「……それは俺に今後、彼女作らないでってこと?」

「そういうわけじゃない。でも宏人はもう彼女出来ないと思う」

「その心は?」

「私っていうこんなにも気が合って、面白くて、誰もが振り返る絶世の美少女と出会っちゃったから。きっと他の子と付き合っても『由梨ならなぁ……』って比べちゃうよ?」


 呆れ半分だけど確信を突かれた気がして、思わず苦笑をしてしまう。

 俺だって警戒心が強いほうなのに、自宅にあげ自由に出入りさせてる時点でそれは図星なのだろう。他の女子と一から関係を築く未来なんて、今の俺には到底想像がつかない。


 確かに想像すればするほど、将来俺の隣で笑っているのは由梨な気もする。


「そっかー……。まぁ、それもそうかもな。由梨と一緒にいる未来がなんか見える」

「可哀想、私と大学生っていう一番いい時期に出会って。今後誰も目に入らなくなっちゃうね」

「相変わらずだなお前。あーあ、由梨がそういうなら俺もバイトとか就活頑張るか。負けないように」

「おっ、なんかやる気になったみたいだねぇ」

「そりゃな。お前と徳島にいつでも帰れるくらい金貯めないとだし」


 由梨は一瞬だけ驚いたように目を見開いた後、嬉しさを隠しきれない様子で、くしゃりと笑みを浮かべた。


「それは無理だよ。私との飲み代で全部消えるから」

「俺の将来設計、すでに破綻してんじゃん」

「そうだよ。私と出会った時点で将来設計なんて狂うでしょ」


 街灯の下、由梨は再び歩き出した。少しだけ照れたように歩幅を進める彼女の後ろを、俺も早足でついていく。


「遅いー早く行こー 」

「あ、おい! わかったから、待ってくれって!」


 付き合ってもないのに、お互いの将来を確信してて、異性の友達にしてはいきすぎているこの関係。


 今更名前をつけるのは野暮なのかもしれない。

[あとがき]

ここまで読んでいただきありがとうございます!

この作品では「恋人ではないけれど、誰よりも特別な相手」という関係を書いてみました。

皆さんは男女の友情は成立すると思いますか?


もしよろしければ感想やリアクション、ブックマーク、評価のほどよろしくお願いいたします。

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