第五部 地
走る走る走る。
その先に、壁があるとも知らずに。
「いってぇ!」
ぶつかってみると、土で出来ていたので、あまりダメージは無かった。それよりも……。
「あーらあら。ちゃんと前見て走りなさいな、お馬鹿さん」
「チーナ!?」
何回見てもチーナだ。なんでここに?
「戦争始まって荒れてるから穴掘ってここまで来たのよ。汚れちゃって気分悪いの今。だから走って壁にぶち当たるライト君でも見ようと思って」
「性格悪っ!あと今それどころじゃねーんだよ!」
「あぁでも、こっから先は光の速さで走っても無駄だと思うわ」
チーナは俺を助けたいんだか邪魔したいんだか……全然分からねぇ。
「こっから先に、ヒュドラって知ってるかしら」
「……分かんねー」
「あら、無知にも程があるわね」
「なっ」
「仕方ないからちょっと教えてあげましょう。
ヒュドラは九つの首がある蛇のモンスターで、毒の息を吐くの。あれはそれを再現した精霊ね」
「……なるほど」
モンスターとかは空想なのかもしれないけど、それを再現するために今までの精霊たちがあったとしたら……胸糞悪いな。
「で、あなたの弟さんが戦ってるって訳」
「エントが?……まぁ、妥当か」
「あらあら。心配なの?心配しすぎも信頼してないって証になっちゃうわよ?」
「……確かにな」
「でね、ライト君はどうしたいの?」
「……ソウマに会いたい」
「じゃあ、迂回した方が良いわ」
と、チーナが指差す方には精霊が所狭しと蠢いている。
「……マジで言ってる?」
「ライト君ならぶち抜けるでしょう?」
それでもとりあえず炎吐くなりなんなりさせて当たったら困るんだよな……。
「うーん……」
「弱虫ライト君ならそう言うでしょうねぇ」
「うっ」
言い返せない……。
「仕方ないから、あの子達は私が遊んであげるわ」
「出来るのかよ?」
「あなた私を見くびってるんじゃないの?
本当、本気の私を見て腰抜かすんじゃないわよ?」
とチーナは深呼吸をし……妖気が刺々しくなった。
今までは離散しすぎて分からなかったが、なんだろう、気迫すら感じる。
「チーナってこんな強かったのか?」
「あのね。年がら年中バンバン妖気垂れ流して、『私強いよ』って言う奴はただの馬鹿じゃない?
私は油断した相手を急に襲って……」
精霊たちがその気迫に後退りする。しかし、チーナは土の壁で逃げ場を無くす。
「蹂躙するのが一番楽しいワケ」
精霊たちはなんとチーナにひれ伏していた。
「……すげぇ」
性格はともかく。
「これが、女王の気迫ってやつよ」




