第四部 再来
マペさんと話をしていると、強大な何者かが遥か遠くから近づいてくる気配がした。
「……兎の国の結界は、破れない筈なんですが……」
マペさんの言う通り、戦争時の兎の国の鎖国は尋常ではない。人の移動だけでなく、妖気や電波さえも遮断する。
「でも、この妖気、どこかで……」
ただ、澄んだ妖気だと思った。その気配が近付いて来る度、その予感は確信に変わる。
「……ソウマ」
そうだ、これはソウマだったんだ。雰囲気は変われど、芯は全くブレていなさそうだ。
「お仲間ですか?」
「はい。最高の仲間、フォニックスの一人です」
「……そう、ですか」
マペさんは微笑んだ。
「多分姉は、あなたたちがこの領域まで達せられると、信じてたんでしょうね」
マペさんは立ち上がる。
「もうちょっと、戦って来ようと思います……フォニックスのみなさんにも、会いたいですし」
「そうですか。みんな良い奴なんで、安心して下さい」
マペさんを送り出したら、退屈になってしまった。
それに……俺はソウマに、謝らなきゃいけない。謝ってもどうにもならないけれど。
一人で悶々としていると、ケトクが入ってくる。
「なぁ、俺後どれくらいで治るんだ?」
「……今すぐ治したいですか?」
「……?」
ケトクはいつになく真剣な面持ちで俺の腕に触れる。
「まだ未完成ですが……私の努力全て、ライトさんに使います」
優しい光が俺を包んだかと思うと、ゆっくりゆっくり怪我が塞がっていった。体が動くようになり、腕を見やるとケトクは俺の側で眠っている。
それを察したのか、ミトさん、フェルク、ウンモがやって来る。
「ケトク、あなたによっぽど恩を感じてたみたいで。糸、消しておくわね」
ミトさんはケトクの頭を撫でながら俺に手をかざす。
「ありがとうございました」
三人は快く俺を送り出してくれた。
目指すはソウマ。マペさんを持ってしてもまだまだ精霊たちはいるようだった。
「よっし、ぶち抜くか」
屈伸、伸脚……良い感じだ。ただ、一面に広がる赤の上を走るのは、ちょっと気が引けるな……。それ以外道は無いけど。
一歩踏み出す。不穏な雰囲気なのに当たる風は爽やかだ。
走り出す。景色が滑らかに流れていく。戦いで走るのとはやっぱり違う。
でも、そんな瞬間は一瞬で。すぐに精霊に行手を阻まれた。なんだか攻撃する気になれず、彼らの上を跳び移りながら進んでいく。多分認識されてないし、大丈夫だろう。
なんたって、俺は。
その文字通り、『光』になったのだから。




