第三部 憑
俺はマペと話しながら休むことにした。
「昔のギ……じゃなかった」
「キルラなんて言われもしましたが……本名はキキョウです」
「あ、別にタメ口で良いんですよ?俺は部下でしたし」
「良いですよ、ライトさん」
一方。僕、ミネーシャは建物を出て行こうとしていた。
「もういいの?」
とミトに呼び止められたが。
「ああ。……それにしても、相変わらず随分とお人好しだな。破産しないのか?」
実の子でないらしい子供がいる。
「そこはまぁ、ね」
ミトは人差し指を唇に当てる。
「そういう所も相変わらずなようだ」
と、今度こそ外へ出る。すると。
見慣れない少年がマペによる血痕の前でしゃがんでいた。
「見ない顔だな」
と、その少年の視線の先を見やると、虫が飛んでいる。
「あぁ、どうも」
声を掛けて初めて僕の存在に気付いたようだ。
「虫が好きなのか?」
「はい。シムと名乗るくらいには」
「ははっ。それは確かに好きらしいな。だが、君一人で外に出ては危ないのではないか?」
「僕一人じゃありません」
少年が手を挙げると、騒がしい羽音を立てて虫たちが現れる。
「これは驚いた。色々なものを操る者は数多だが、虫とはな。食物連鎖の下に位置するものを使う訳を聞いても?」
「証明したいんです。彼らは強いと」
「……ほう」
この歳にになると、純粋な子供に心を刺されることがあるらしい。
「彼らは個々の力で争わない。百匹が犠牲になろうとも一匹を倒せたら勝利。そういう世界です。特にこの子達は」
シムはミツバチを指に止まらせる。
「だが、死んだ百匹を蔑ろにする事もない、と?」
シムが頷くと、黒い影たちがチラついた。
「彼らの想いは、全部。僕が背負って行きます」
「君は中々良い趣味をしているようだ。僕も人の事は言えないが。どうだ?一瞬でも良い。手伝ってくれないか?」
シムは頷く。
「じゃあ、あれを倒すとするか」
マペによって一掃されたが、すぐに他の奴らが押し寄せて来ていた。
シムは返事もせず、虫たちを向かわせた。
「ふむ……君にそっくりだ。“ミネーシャ”」
うっかり、外で漏らしてしまった。まぁいいか。そろそろ“交代”の時間だ。
「それは無いだろう。僕はあんなに真っ直ぐじゃないさ」
「そうか?研究をしている時の君は子供のようにはしゃいでいるではないか」
「それはそれ、これはこれ、だ。今日も代わりたいのか?説明が面倒だろう」
「良いだろ、別に」
「分かった分かった。やりすぎ厳禁だぞ。“ソウマ”」
「了解。ちょっとだけだって」




