page.8 劣等感
産業都市バベルにあるコンサートホールの席にニックは座っていた。この日はバイオリンのコンクールが開催されていた。バベル近隣の都市からも参加しており、一年に一回の大きなコンクールである。
ニックは次々披露していく人の演奏を聴いて拍手している。そして、次にでてきたのはアヒョンであった。
純白の衣装に負けないくらいの美貌で、会場の若者が別の意味で釘付けになっていた。ニックは誇らしげでもあり、アヒョンを変な目で見るなと感情が交じりあっていた。
アヒョンは一礼して、バイオリンを構えた。
アヒョンが奏でる音色は弾きはじめから、引き込まれるように感じた。柔らかくそして繊細なおとであった。ニックには音楽はあまり分からないが、とりあえず他の人よりも良いと感じることはできた。
アヒョンは、演奏が終了して深くお辞儀をして退席した。
「あ!ニック~!!」
アヒョンはコンサート終わりにニックを見つけ、大きく手を振った。ニックは他の人に注目されながらで恥ずかしながらアヒョンのもとに行った。
「ちょっとアヒョンっ!おっきな声出さないでよ、恥ずかしいじゃないか」
「いいじゃない!」
「それはともかく、優勝おめでとう!!!」
アヒョンはコンサートに見事優勝して、プロとして活動できる権利を獲得した。
「ありがと~!!ニック!!」
アヒョンは、ニックに抱きつき喜んでいた。ニックは思わず股関が熱くなったが、それよりも祝福もこめてアヒョンの頭を撫でた。
2人は会場をあとにして歩いた。
「さすがアヒョンだよ、長年バイオリンやってきた甲斐があったね!」
「まぁね!私には不可能なんて言葉はないもんねっ!」
アヒョンは物心つく頃からバイオリンに触れてきていた。家も裕福で設備も最初から整っており、環境も味方して、いわば勝ち組の人生を送っていた。
ニックはそんなアヒョンに素直に尊敬しつつ、劣等感もこころの奥で感じていた。ニックは本当に平凡な家庭に生まれ、平凡に育ち生きてきた。その中で恵まれていたとすれば、産業都市バベルに生まれたことと学校でアヒョンに出会ったことだ。
ニックは1人で本を読んでいるところに声をかけてきたのがアヒョンであった。その頃からオーラから普通の人たちと一線を画す存在の彼女が話しかけてきたことに、当時のニックは驚いていた。
そんなニックを面白おかしく笑うアヒョン。そこから何だかんだでよく一緒にいることが増えたのであった。
「音楽って良いよね…言葉に現せないことを表現してくれる。バイオリンだけじゃなくてピアノとかチェロとか色々あるし。あ、あと最近オルゴールってやつも新しく出たか」
アヒョンは指をおりながら数えていた。
「アヒョンが奏でればなんでも綺麗だよ」
「ニックの童貞」
「今の話で全然関係ないだろぉ!!」
ブレイブ達が滞在する第二の村の夜、宿場の窓から見えるのは祭りのような催しだった。この村は前に魔族の被害にあっていて、そこをブレイブ達とは別のパーティが救ったのだ。
それからパーティが泊まることになれば村総出で歓迎するといった風習ができたんだとか。
お手製の木の棒に鉄の板を叩き、リズムにのせていた。それに合わせて村の人は盆踊りのように踊っていた。
「すごい…火が建物の高さくらいまでのぼってますよ」
ラーボは目を輝かせて、窓から飛び出しそうに見ていた。
「そうだね、なかなか見れるもんじゃないね」
セレーナもにこやかに見ている。
「ブレイブさん達誘って間近で見てみましょう!!」
「えっ…あいつも来るんでしょ?」
「え?あいつ?ま、いいから行きましょ!」
ラーボはセレーナの腕を引っ張りドアを開けた。そこにはノックしようとしていたライアがいた。
「あ、ライアさん!」
ドアの外にはライアがノックしようとしていた姿勢で立っていた。ブレイブはその後ろくらいで興味無さそうに突っ立っていた。
「よぉ、メンボー。外が賑やかだから見に行かないかって誘いに来たところだよ」
ライアは、ノックする手の形からゆっくり手の広げ挨拶した。
「奇遇ですね!ブレイブさんもいますよね!皆で行きましょ!……って!!私はラーボですっ!!」
ありがとうございました。
同じ種族でも、文化がこんなにも違うんですね。




