page.3 王女の行方
ジゴホウ国王女、ネムレリアを魔王に拐われてしまった。痛みと悲しみで気絶してしまったブレイブが、次に目にしたのは医務室の天井であった。身体を動かすと身体が痛み悶えた。起きたことに気づいた色気のある女医は動かないように諭した。それにおとなしく従いベッドに寝転がった。
しかし、目の前でネムレリアが居なくなったことがどうしてもフラッシュバックして居ても立ってもいられなくなり、また身体を起こした。案の定、痛み悶えて呆れながら叩きつけるようにベッドに戻した。痛みが少しずつ引いていき、ブレイブは女医に尋ねた。
「今どうなってる?」
「あなたは五体満足だよ?」
「いや、それじゃなくて…ネムレリアは」
「王女は親衛隊が捜索しているわ」
「そうなんだ…」
「爆発した城下町は幸いなことに負傷者はいたけど、死亡者は居なかったことを私は喜ぶわ」
若いブレイブには、今何がどうなっているのかを理解できるほどの力はなかった。ただ、ネムレリアが目の前から消えてしまったことだけ。取り戻したい、その気持ちしか頭にはなかった。
一晩が経ち、ブレイブは医務室で夜を過ごした。次の日に女医はブレイブの元に行き状態確認をしていた。
「うん、昨日に比べれば良くなってきてるわね。薬出しておくから帰れるよ」
女医はその言葉の後に、付け加えるようにブレイブに伝えた。
「あと、さっき聞こえてきたけど拐ったのは魔族の仕業なんですって。だから、王女奪還のための人材を集めるみたいなことを言ってたわ。良かったわねすぐに王女帰ってくるわよ」
「え…?それって俺も行けるのかな」
「え?あなたが?そんなに簡単じゃないわ」
女医は驚いたが、優しく諭し危険なことをしてほしくない気持ちで向き合った。
「今あなたがここにいられるのも、とても幸運なことなのよ。まだ若いしこれからのことを考えないと」
「…」
ブレイブは女医の言葉が強く刺さった。確かに、魔王は手加減していたといえ、機嫌次第ではあそこで自分は死んでいてもおかしくはなかったのだ。言葉通り幸運であったのだ。しかし、自分の手でネムレリアを救いだ したい気持ちのまま医務室をでて帰ろうとした。
ヘッドホンを身に付けて。うなだれながら廊下を歩いていると城内で言い争う声がした。その方角へ向かうとジゴホウ国の国王を中心に重役が議論を重ねていた。国王は、小じわがあるが身体は鍛え上げている。顔も逞しく口髭もあり慧眼のようであった。
ブレイブはそれを階段の柵越しに聞き耳をたてていた。
「今すぐ王女の奪還、報復をするべきだ!」
「そうだ!魔族は我々人間族を甘くみすぎている!」
周りで魔族への憎しみで感情論で離している者が多い中、国王は静かに諭した。
「やすやす戦争をして国民の明日は守られるのか?WPPは黙っていない。慎重に考えるべきだ、状況確認も含めて少人数ごとに魔族の領地に派遣するのが良い」
「そうですがっ…!そのように悠長に構えていてはネムレリア王女の安全はどうするのです!?」
国王は少し間を空けて答える。
「とりあえず、派遣するもの達を募集せよ」
国王は言葉を選び目を見ず、その場から立ち去った。向かう先にブレイブがおり、ブレイブは慌てて物陰に隠れた。ゆっくり階段を上がる国王はピタッと足を止め、声をかけた。
「そこにおるのは誰じゃ?」
ブレイブは観念して顔を出した。少しばつの悪そうな顔をしていた。ブレイブの顔をみて顔を明るくした国王。
「おぉ、ブレイブじゃないか。怪我は大丈夫か?」
その言葉にブレイブは反射的に涙が溢れてしまった。
「うぐっ!ご、ゴメンなさ…」
ブレイブの言葉を遮るように国王はブレイブを抱きしめた。
「ありがとう、娘を助けてくれようとしたのだろう?ワシの力不足で申し訳なかった」
ブレイブは国王の温かさを感じ涙を流し続けた。
「ネムレリアのことは任せてくれ。必ず連れ戻すよ」
国王はブレイブを見つめた。ブレイブは涙を袖で脱ぐい取り、
「さっき言ってたネム助ける募集、俺も受けるよ!俺の責任だ!必ず救い出す!」
ブレイブのまっすぐな瞳に、国王は少し口元を緩め微笑んだ。
「そうか…そんなにネムレリアを思ってくれてありがとう…」
ー3年後ー
ありがとうございました。
次回より、第2章が始まります。




