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戦え戦隊 悶えんジャー  作者: パープル
4/16

桃色工房

 「で?結局あの密書、博士がライ様に送りつけただけだったんでしょ?」

 

 まぁ最初から分かってたけどね、とパープルは頬杖を付く。

 その格好は言うなれば紫色の戦うメイドさん。

 隣でせっせと作業しているブルーも今はロリータではなく、可愛らしい水色のメイドさん。


 「まぁ、いいじゃん。楽しかったし、パープルだってライ様に会えて嬉しかったんでしょ?理由でもなきゃ会いに行けないっていつもうじうじしてるんだからさ」

 「う~・・・」


 刺繍をしていたピンクが顔を上げてむすっとしているパープルに苦笑した。

 その姿もメイドさん。

 ピンク色の甘ったるい、メイドさん。

 手の止まっていたパープルにピンクが指示をだし、作業を再開させる。


 今3人が作っているのはお店に出す小物だ。

 ピンクがレッドに立ててもらったお店、その名も「桃色工房」。

 よくアダルトな店と間違えられるが、中身は至って普通だ。

 髪飾りやレースで編んだチョーカーなど可愛らしいものが並んでいる。

 どれもよく出来ていて尚且つ精密だ。

 ピンクの趣味。

 裁縫。

 学生時代から「職人」と呼ばれるほどの腕前でなかなか良く売れる。

 カフェも開いている。

 パープルが紅茶好きでお菓子屋さんで働いていたせいだ。

 何故メイド姿なのかと言うと、ブルーの趣味。

 始めパープルはダブリエを着ていたのだがブルーに却下された。

 同じメイド服を着ていると言うのに3人とも大分印象が異なる。

 皆器用なので一応各自で作っている。

 今は開店前。

 しかし、外はかなり騒がしかった。


 「・・・ピンクぅ~?ピンクのファンがまた来てるよ?手でも振ってあげれば?」

 「絶対私だけじゃないでしょ。ロリータと女の子達はブルーとパープルのファンじゃない」

 「でも男の子はほとんどピンクなんだぞ・・・」


 3人揃って窓の外を見れば外がより一層色めき立つ。

 嬉しいような嫌なような、そんな感じだ。

 まるで客寄せパンダのようで気持ち良いものではない。

 カメラを出して来る人もいてピンクが顔を顰めた。


 「・・・少しくらい笑ってあげたら?」

 「ブルーこそ顔引きつってるくせに・・・・・パープル?」


 パープルが眉根を寄せてカツカツと入り口まで進んでいく。

 ばん!と扉を開いたかと思うと・・・。


 「カメラは止めろって言ってるでしょう!人の迷惑も分からないんですか?常識ないんですか?・・・ってそこ!撮るなっ!!ぶっ殺すよ!?」


 しーん・・・と辺りが静まり返る。

 ふんっと鼻を鳴らしてパープルが中に戻ってきた。

 ピンクとブルーはそんなパープルを見上げてぽかん、としていたかと思うと顔を合わせてぷっと笑った。


 「「姉御~!!!!」」

 「はぁ?何言って・・・」


 静まり返っていた外から「キャー!!お姉様ー!!」と叫びが響いて、ガクッとなる。

 ピンクとブルーは顔を寄せ合ってくすくす笑う。


 「本当にパープルは姉御って言うか・・しっかりしてるよねー・・・普段は」

 「うん、普段はぁ~!!」

 「・・・どういう意味」

 「ライ様の前じゃデレデレじゃん?」

 「可愛い子ちゃんなんだぞ!」

 「・・・・・・・・・・・・・だって、ライ様はライ様だし・・・もぉ~・・・やめてよ・・・もう直ぐ開店だし私キッチンに戻るから。後よろしく」


 「逃げたぁ~」「逃げたぞ!!」とはしゃぐ2人を置いてさっさと奥に引っ込んでしまったパープル。

 ふと時計を見れば開店3分前。

 さぁ、開店しますか!

 ピンクとブルーは扉を開くため立ち上がった。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 わいわい、がやがや。

 込み合うかのように思えた店内だが、朝いたファン集団にはお帰りいただいた。

 余りにも騒がしかったためパープルがまた切れたのだ。

 「申し訳ありませんが、他のお客様のご迷惑になります。お帰り願えますか?」とにこやかに。


 ブルーのファンはロリータの可愛らしい女の子が多い。

 そのためか、純粋に買い物やアフタヌーンティーを楽しんでくれるため問題ない。

 パープルのファンは年下が多く、うるさいがパープルの教育が行き届いているため騒ぐ者は少ない。

 問題はピンクのファン。

 圧倒的に男が多く、うるさいしかさ張る。それに数が多い。

 お客として来る人も居るだろうが、大半がピンクをぼ~っと見つめて突っ立っている。

 ピンクが可愛すぎるのがいけない。

 照れてはにかんだ顔が’萌え’以外の何者でもない。


 カフェに人が入るとパープルが自然、奥に引っ込むことになるのでブルーがちょこまかと走り回って頑張っている。

 ピンクも手伝ってはいるのだが、手作りの雑貨販売が本業。

 そんなに手伝えない・・・のだがこき使われまくっている。

 少しでも休もうものならブルーがキャシャー!!と威嚇してくるのだ。


 「もう少しだから頑張るんだぞ!」

 「は~い」


 3時から4時の間だけのアフタヌーンティーのみを目的にしたカフェ。

 ぶっちゃけ桃色工房のおまけだったわけだが、メイド姿の3人が評判を呼び、毎回繁盛しすぎて困っている。

 1時間営業にして正解だった。

 ほどなくしてカフェの営業時間が終わり工房に戻る。


 今日は学校帰りと思われる女の子が多かった。

 きゃいきゃいと雑貨を物色する彼女らをにこやかに眺めつつ、ちりりん・・・と来客を告げるベルが鳴ったため、笑顔で「いらっしゃいませ」と言いかけたピンクは店内に入ってきた派手な容姿の男を目にして後悔した。


 「ピンクさん、こんばんは!今日も可愛いですね・・・。やはり俺に釣り合うのはピンクさん、あなただけで・・・・ぶぅ!!」


 カッキーン・・・と金属バットが派手な容姿の男、エンに直撃した。

 エンは頬にめり込んだバットを取り、投げた本人に投げ返す。

 物凄い勢いで帰ってきたバットをすんなりと受け止めスカートの中にしまっている、ロリータ。


 「ってーな!何すんだよ、姉ちゃんっ!!俺の顔に傷でも付いたらどうするんだっ!世界の損害だぞ!?」

 「天・誅!なんだぞ!!人の嫌がることはしちゃ駄目なんだぞ~」


 そう、ロリータ。ブルーである。

 実はブルーとエンは血こそ繋がっていないものの姉弟なのだ。

 ピンクに襲いかかろうとした弟にお仕置きしたわけだ。

 エンが円形に赤くなった頬を擦って鏡を見ていると、頬にひやりとした感触があたった。


 「ん。大事な顔なんでしょ?どーぞ」

 「ありがとうございます、パープルさん・・・俺の顔に傷なんか出来てないですよね?」

 「ん~?別になにも・・・ああ、そっか。大丈夫、大丈夫。ちゃんとかっこいいから」

 「そうですよね!!」


 キラキラと輝きを取り戻したエン。

 それを見たピンクが「余計なことを・・」とパープルを少し睨んだ。

 その顔を見てちょっと萌えたパープルはピンクの頭をよしよしと撫でる。

 「なんだよぅ~やめろ~」と言いながら嫌がって見せるピンクが可愛くて頭をぐしゃぐしゃにする。

 ブルーとエンがきゃんきゃんと騒いでいるのを見て顔を顰めているピンクの頭をもう一撫でして安心させるように笑った。


 「連れてくから安心しな?」

 「?・・・あー、もうこんな時間?じゃあ後は私達だけでやっとくから、いってらっしゃい」

 「ん。エン君、城に行くんでしょ?一緒に行こ」


 有無を言わせずにパープルはエンを引きずっていく。

 「ああ~・・・ピンクさ~ん!!」と叫ぶエンを無視してピンクとブルーはパープルに手を振った。


 「ご飯までには帰って来てねー」

 「ん」

 「エンをよろしく~」

 「・・・ん」


 ずるずるずるずる・・・とエンを引きずってパープルは消えた。

 「やぱり姉御だね」「うん」と頷きあう2人。

 日が傾き始めると流石に人も少なくなって来る。

 店番をしながらレース編みをする余裕ができた。

 あみあみ、あみあみ・・・。

 ブルーはパソコンで絵を描き始めている。

 かきかき、かきかき・・・。


 




 「お~い、お二人さんいつまでやってるんだ?もうパープルが帰ってご飯作ってるぞ」

 「博士!!」


 がばりと立ち上がり博士に突撃したのはもちろんブルーだ。

 博士の腰に手を回しぎゅーぎゅー抱きついている。

 そんな2人を生暖かく眺めつつ、窓の外を見たピンクは首をかしげた。

 確かに暗いが3時間くらいしか経っていないように見える。

 いくらなんでも早すぎるのではないだろうか?


 「・・・パープル帰ってくるの早くない?ライ様のところに行ったんじゃないの?いつも思うけど早いよね??」

 「そう言えばそうだね・・・はっ!もしやライ様早いんじゃぁ・・・」


 ブルーが下ネタに走る前から博士が俯いてぷるぷる震えている。

 堪えきれないとばかりに「ぎゃははははは!!!」と笑いだして、腰に纏わり付いていたブルーは「?・・!?」と博士を見上げた。

 そんなブルーの頭をぽんぽんと叩きつつ滲み出る涙を拭っている。


 「ぷぷ・・・そうダネ。早いのかモネ。く・・・くくっ!!」

 「・・・?何で片言なの?」

 

 ブルーは疑問符を浮かべるしかない。

 ピンクも「え~何、何?」と興味深々だ。

 博士はそんな2人の頭をぽん、ぽんと叩き身を翻した。


 「俺ちょっと酒飲んで来るわ。ご飯いらないって言っといて」

 「「は~い?」」


 上機嫌で出て行った博士を見送りながら2人は地下にある基地に戻る。

 晩御飯の匂いが漂っていて2人は顔を見合わせてニヤリと笑った。


 「カレーだね」

 「カレーなんだぞ!」


 食堂に行くと、ニヤケ顔の皆がいた。

 皆、がたがたと震えているイエローを見ている。

 その目は焦点が合っておらず、汗まで掻いている。


 そんなイエローの前にパープルがカレーを置いた。

 そしてにっこりと微笑む。


 「はい、どぉぞ」

 「あ、あああああ、ああ、ありが、ががとぅ」


 パープルが奇跡的にイエローに笑顔を向けているというのにその三白眼がパープルを捕らえることは無い。

 ただ、カレーを凝視している。

 パープルが更に笑ってスプーンでカレーを掬い、「あーん」とイエローの口まで持っていく。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタがたがたガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタがたがたたががたがたがたがたがたがたがたがたがたがたがたがたがたがた・・・・・・ぶはぁ!!!!!


 ・・・震えながら血まで吐き出すイエロー。

 汗びっしょりになっている。


 そして、終に口を開いた・・・・。




 「お、俺は、カレーが嫌いだーーーーーーーーーー!!!!!!!」



 全員が噴出した。


挿絵(By みてみん)




 



 

 

 

 

 

 

  

ピンクちゃんの話予定だったのですが・・・

何故か落ちがイエローに。

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