表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の元一般人 ― 神に選ばれた落ちこぼれ、最強の“使い方”で異世界を掌握する ―  作者: ITIRiN
第5章:最強の帰還、はじまる“家族”の日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/66

第58話:“白”に込めた想い

日本には「知らぬが仏」ということわざがある。――知らなければ悩まなくていい。

なので俺は、マイカの“奥さん”発言を華麗にスルーし、再び居間へ戻った。


「そういえばアリスたちはどこに行った?」


「あやつらなら、残りの掃除をしに行くと言っておった。あと少しじゃし、昼までには終わるじゃろ」


「おい、何ひとりだけ抱っこされてサボってんだ。セリアも早く行ってこい」


しゃがんで床に下ろそうとすると、セリアが唇を尖らせる。


「う~、私はまだ離れたくないのに……ティアが余計なこと言うから」


「抱きついたまま何を言うておる。はよ戻らんか」


「にしても、よくメイド長・副メイド長・教育係の前で堂々とサボれるよな。俺は副メイド長の前でしかサボる勇気ないぞ」


まあ、サボったら主にミナとマイカに怒られるけど。


「今回はセリアの気持ちも分かりますし“特別”。……でも、そろそろ戻りなさい」


「はいはい、分かったわよ。さすがにこれ以上あの子たちだけに任せるのは悪いしね」


最初から長居する気はなかったらしく、名残惜しそうに俺から離れると、“もう勝手にいなくなっちゃダメよ”とだけ言い残して部屋を出ていった。


立場的にも、今回一番心配させたのはセリアかもしれない。今後は勝手に消えるつもりはないが――仕事はサボりたい時もある。出る前に書き置き、これでいこう。


そんなことを思っていると、ミナが何かを抱えて近づいてきた。俺が立ち上がると、恭しく差し出す。


「ソウジ様。私とリアーヌからのプレゼントです。よろしければお使いください」


「ん? 黒のロングコートに、黒に近い赤のチョッキ、それとループタイか。シンプルで格好いい。気に入ったけど……どうして?」


「この二週間、頑張っておられたご褒美でもありますが、一番は“二度とあのような怪我をしてほしくない”からです。今すぐ、私たちの衣服と同じ防御魔法を付与してください」


ああ、そういうことね。

正直“オートバリアがあるから後で”って思ってたが、いざという時に抜けるのが人間。今回はオートバリアを張り忘れました、はい。


面倒を減らすためにも、ありがたく使わせてもらおう。


ロングコート、チョッキ、ついでにループタイにも防御魔法を付与。着替え始めると、ミナが補足する。


「その三つは特殊繊維で作っています。返り血や汚れは一切つきません」


「それは助かる。どうやっても血は付くからな……」


チョッキのボタンを留めようとするが、義手の左手がまだ不器用で手こずる。そこで――


「ほれ。ボタンもループタイも、わらわがやってやる。しゃがめい。……まったく、何回同じこと繰り返せば学ぶんじゃ?」


「だって、ボタンすら自分で留められないのは負けた気がしてさ」


「普段は面倒くさがるくせに、変なところでこだわるやつよの。……よし、できた」


この世界では白シャツが基本。だから自分でボタンを留める必要があるのだが、この二週間は左手が使えず、毎朝ティアに手伝ってもらっていた。


俺は気にせずやってもらったが――その光景を面白く思わない人もいたようで。ティアは俺の背後にいる視線を感じ取ると、さらりと言う。


「これからは、わらわではなく“お主の女子”にやってもらうんじゃぞ。……まあ、わらわが嫁なら話は別じゃがの」


「二週間も一緒に暮らしてたのに、そんな素振りは一切なかったよな? お前が俺を好きになる未来、見えないけど」


――ミナたちの前では言えないが、毎晩同じベッドで寝てたくらいだ。ロリ状態のティア相手に手を出す気は一切起きなかったけど。


「決めつけはよくないですよ、ソウジ様。ティアさんだって女性です。歳がいくつでも、そういう未来は――」


「ミナよ、それはどういう意味じゃ?」


「いひゃい、いひゃいですヒィアしゃん!」


ティアが“年寄り扱い”にキレてミナの頬をむにーっ。俺は視線をそらし、ふとループタイの金具に刻まれた模様に気づく。


「なあ、このマークは?」


「この国の新しい国章です、ご主人様」


「新しい国章? 国名は全部変えるつもりだが……俺の意見は?」


「どうせ坊主は“面倒だから任せる”って言うだろ、ってことで、こいつらが勝手に決めてたぞ」


分かってるな、君たち。デザイン考えるの大嫌いだし、丸投げする気満々だった。


「ちなみに国名は?」


「そちらは未決です。ご希望があれば」


「じゃあ――ヴァイスシュタイン王国で」


「響きはいいな。意味は?」


「ヴァイスはドイツ語で“白”。“シュタイン”は響きが良かっただけ。白は白崎の“白”な」


つまり、俺の名字を国名に混ぜたかった――


「ふむ。自分と結婚した者は“〇〇・シラサキ”か“〇〇・国名”になるから、名字の一部である“白”を入れたかった、と。……お主、意外と束縛が強いのう。独占欲、強いじゃろ」


「お前、人の心を勝手に読むな」


「それと。お主は“自分からは”女子を好きにならん。告白もせん。逆は受け入れる。じゃが誰でもよいわけではなく、“お主が気に入った者だけ”。随分わがままよ」


さすが420歳、伊達に長生きしてない。


――そう、俺は基本“自分から好きになる”がよく分からない。だから告白したことも、誰かと付き合ったこともない。

さらに俺は“気に入った人たち”で周りを固めたい派。面倒くさい自覚はある。

独占欲・束縛が強いと言われ、ミナたちに引かれるかと思ったが――むしろ嬉しそうだった。


なぜかそこから名字の話になり――


「こちらの世界では“ミナ・シラサキ”と“ミナ・ヴァイスシュタイン”、どちらで名乗ればよいのでしょう?」


「状況で使い分けるのがよろしいかと。たとえば“国王の王妃”としては“リアーヌ・ヴァイスシュタイン”、ご主人様の“妻”としては“リアーヌ・シラサキ”――このあたりで」


自分を当然のように王妃扱い。強気だな、リア。

まあミナだけ王妃で他は“ふつうの嫁”なんてする気はないが――。


しばらく名字談義が続いたのち、ミナが思い出したようにポケットから小箱を出す。


「ソウジ様の左腕を回収した際、腕時計を外しておきました。お返しします。幸い、壊れや傷はありませんでしたが……」


うーん、義手の腕に巻くのは微妙だな。とはいえ、これ結構高かったし――。


「俺も忘れるところだった。ほら、プレゼント」


「アベルから? 意外だな……って、箱がやたら高そう」


「姫さまたちのに比べれば安いけど、まあ高いのは高い。王侯貴族が使う店の特注だ」


怖いから値段は絶対に聞かない。うん、聞かない。


箱を開ける。


「――懐中時計か」


「ああ。坊主はいつも腕時計だったろ。でも今の腕だと、さすがにな。だから懐中時計にした」


「なるほど」


俺は腕時計と懐中時計に防御魔法を付与。懐中時計はコートのポケットへ。

そして今まで使っていた腕時計は――


「これはアベルにやるよ。貴族目線だと安物かもしれないけど、日本ではそこそこした。正装にも合うし、着けてて問題ないだろ? それに“俺が使ってた”ってだけで、将来的には価値が出ると思うぞ」


「いや、値段はさておき、価値や性能は間違いなくこれが上だろ……。本当に俺がもらっていいのか?」


「俺はもう使えない。セレスさんは自分のを持ってる。デザインは男物だからミナたちも違う。――残るのはアベル。ああ、戦闘時は外せよ。壊したら泣くからな」


俺のはGショ◯ク系じゃなく、ビジネスウォッチだ。防御魔法を掛けても、荒事には不向き。


「んじゃ、ありがたく貰うわ」


アベルは腕時計を受け取り、自分の左腕に装着した。


――その直後、ミナとリアが“私たちにも何かソウジの大切なものを”と騒ぎ始めたのは、言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ