表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の元一般人 ― 神に選ばれた落ちこぼれ、最強の“使い方”で異世界を掌握する ―  作者: ITIRiN
第5章:最強の帰還、はじまる“家族”の日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/65

第55話:診断結果と黒き義手

冒険者ギルドを出ると、ティアが横目で俺を見た。


「次は病院じゃな」


「は? なんで病院? お前の頭でも診てもらうのか?」


「誰がじゃ。お主の耳の件じゃろうが」


あ~……途中から“聞こえないのが普通”になってて、正直あまり気にしてなかった。


「でもさ、なんで聞こえないんだろ。まあ、聞こえないおかげで“良いこと”もあるっちゃあるけど」


「おそらく、その“良いこと”とやらが原因なんじゃろうな」


俺にとってはメリットでも、医者から見ればどうなんだか――などと考えているうちに病院が見えてきた。


「病院はお主が勝手に改築したと聞いておったが……見た目は普通じゃな」


「城と騎士団の寮はともかく、病院まで現代日本の見た目にしたら違和感すごいだろ。世界観ぶっ壊すわ」


「ふむ、確かに。寮は敷地内にあるからまだよいが、あの建物だけ浮いとるのう」


寮は“ちょっと良い社宅”イメージなので違和感バリバリ。ただ敷地外からは見えないからセーフ。


「でも中身は全部最新なんだぞ。……ほら」


胸を張って扉を開けた瞬間――


「お、やっと来たか。診察してやるから、さっさと入りんさい」


「ちょ、婆ちゃん!? 何その急展開!」


「どうしたもこうしたもあらん。すぐ診察、ほれ動きな」


腕をつかまれ、そのまま診察室へ。ティアが自己紹介を済ませたところで婆ちゃんが俺を見る。


「それで、耳が聞こえなくなったのはいつ頃からだい?」


「気付いたのは、ティアと修行に出て初めて盗賊とやり合った後」


「ふむ。その前――元国王様らを殺した時は?」


あの時は頭がぐちゃぐちゃで覚えてない。ただミナとリアが来た時には普通に聞こえてた気がする。


「記憶が曖昧じゃな……。わらわの予想では一回目の盗賊狩りの時からじゃと思う」


「だとすると、初めて“人を殺した”精神的ショックが大きすぎて、二度目以降の対人戦から脳が勝手に聴覚を遮断する――そんな感じかね。……よく心が壊れなかったもんだ。ティアちゃんが上手くコントロールしてたのは見てて分かったけど」


「それはリアーヌのお陰じゃ。何かあっても大丈夫なよう、持続系の鎮静魔法を掛けておったようじゃ。継続は一週間。残りの一週間は……賭けじゃったがの」


なにそれ!? 初耳だぞ。――でも言われてみれば、人を殺しまくったわりに落ち着いてた。初戦の衝撃と“無音”のせいだと思ってたが、リアのお陰でもあったのか。


「とはいえ、保険も用意してたんだろ?」


「当たり前じゃ。もしもの時は、わらわが何とかしておったわい」


「それに加えて、ソウちゃんは疲れると熱が出やすい体質なのに、そこも完璧にコントロールしてたよ。切り上げのタイミングも、ご飯のバランスも。――いいメイドさんを持ったね」


やたらティアが褒められてる。……って、待て。


「なんで婆ちゃんが俺の体質まで知ってんの?」


「そりゃー、私がこの国の王族貴族の担当医だからに決まってるだろう。ソウちゃんが熱で倒れた時のデータもこっちに送られてきてるよ」


「じゃあ次! なんで俺たちの二週間を知ってるみたいな会話してた!?」


「知らなかったのかい? 毎日ソウちゃんが盗賊と戦ってるとこを一戦分、その後の夜ご飯やティアちゃんと遊んでる様子を、毎日映像で流してたんだよ」


詳しく聞けば――俺が消えた日に、まず元国王どもを殺した映像をフルで流し、修行に出たこと、翌日からはその様子を一部毎日見せるとミナが発表。ティアがスマホで撮影→良さそうな部分を警備室へ→街中で放映、の流れらしい。


スマホと警備室を繋げたり、配信できるようにしたのは確かに俺だが……君たち、使いこなし過ぎでは?


「だから戦闘中や飯の時にティアがスマホ弄ってたのか。――で、誰の作戦?」


「勿論わらわじゃ。修行を見せればお主への好感度は上がる。これから王になるなら尚更じゃろ」


「普段の姿を見せたのも大きかったね。修行が進むほど盗賊への態度は冷たくなっていった。でも日常のソウちゃんを見せたおかげで、『ただの殺人鬼じゃない』って伝わったはずだよ」


確かに、殺してばかりの映像だけより、日常カットが混ざった方が印象は柔らぐ。


「ちなみに、俺が日本人って話は?」


ギルドで誰かが『勇者を超えし異世界の王と闇天使』とか言ってたのが気になってた。


「それもミナちゃんが一緒に発表してたよ。『ソウちゃんは日本人だから、人もモンスターも殺すには覚悟がいる』って。左腕を失った理由や、ここからの成長を意識して見てもらう狙いだろうね」


「そこはミナに任せておった。効果のほどはどうじゃ?」


「最初は失望も多かったね。『異世界人=勇者』の期待値が高すぎた。なのに左腕をあっさり失った映像だし」


まあ、そうなるわな。


「でもそれは最初だけ。左腕がないこと、戦闘中は耳が聞こえないこと、生き物を殺すのに慣れてないこと、助けられず苦しんだこと、助けたのに罵倒されたり目の前で死なれたこと――。その全部が“人間味”として効いた。応援や尊敬の声は、気付けば増えてたよ」


ありがたいけど、人間って本当にちょろい。手のひら、クルクルだ。


「――で、俺の耳は結局どうなる?」


「正直、様子見だね。耳が原因なら治しようはあるけど、今回は“脳”。しかも自己防衛となると、一生そのままの可能性もある」


「別に聞こえんでも、わらわは勿論ミナやリアーヌ、アベル級ならお主に合わせて動ける。最初は戦闘後に戻るまで三十分ほど掛かっておったが、今は長くても十分。問題なかろう」


そういうことなら、四人には申し訳ないが頼らせてもらう。


「おっと、忘れるところだった。悪いけどソウちゃん、上だけ脱いでおくれ」


「なんで」


「義手を付けるからさ。ミナちゃんに頼まれて、武器屋の爺さんと急いで作ったんだ」


武器屋って爺さんがやってんのか。後で行く予定だし、その時に礼を言うか。


* * *


装着と説明を受けたが、理解できたのは――“俺の左腕を元に作ったから、バランスは以前通り”の一点だけ。


「付け心地は?」


「左手の細かい動きはまだだけど、バランスはだいぶ良くなった」


「最近は慣れとったようじゃが、歩きにくそうではあったからな。良かったではないか」


「……義手をじっと見て、どうしたんだい? 気になる点でも」


左腕がないよりは全然いい。ただ素材むき出しで、黒い特殊金属って感じ。変に塗られるよりはいいけど――


「左手だけでいいから、手袋ない?」


「……見た目、気になるのかい」


「俺は別にいい。でも、皆が“気にならない”とは限らないだろ。だから――」


婆ちゃんは用意していた黒い手袋を渡してくれた。俺はそれをはめ、病院を出る。


「お主、ずっとその手袋を着けておるつもりか?」


「気に入ったのが見つかれば変えるけど、基本はするかな。寝る時は外すけど」


体温はないから、夏でも暑くない。


「なら――わらわが作ってやろう。お主の手袋を。何色が良い?」


「作ってくれるのは嬉しいけど、頼むからオシャレなやつで。色は黒」


「任せておけ。わらわは家事だけでなく、裁縫も得意なのじゃ!」


ティアのどや顔に、沈みかけてた気持ちが、思わず軽くなる。


黒い手袋が、俺の“日常”をもう一度つなぎ直す――そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ