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世界最強の元一般人 ― 神に選ばれた落ちこぼれ、最強の“使い方”で異世界を掌握する ―  作者: ITIRiN
第5章:最強の帰還、はじまる“家族”の日常

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第47話:左腕を失っても、俺は王だ ―封印の果てで目覚めた“真の敵”―

なんだかんだで結局ミナとイチャつき、

二人の荷物を収納ボックスにぶち込んだあと――ついでにアベルの分まで放り込み、マリノ城の玄関脇に例のパネルを設置した。

陛下たちの呼び止めは無視して帰ってきてから、数時間が経とうとしている。


「ミナとの婚約の件って、どのくらいでまとまりそう?」


「そうですね……。

まだこの国でのソウジ様の立場は微妙ですし、まずは国王宣言をなさらないことには、お父様方も話を進めにくいかと」


やっぱりか。

パフォーマンス込みでこの国を“派手に乗っ取った”つもりだったが、まだ怪しむ連中は多い。

国王宣言と婚約発表を同時にやれば早いと思ってたが、甘かったな。


そういう連中を黙らせるための金をばらまく政策は何案か用意してある。

あとは地道に信頼を積むしかねぇ。……はぁ、面倒くせぇ。

二週間後くらいに勝手に“謎の好感度アップイベント”でも起きりゃ楽なのにな。


「この前の会議では婚約も国王宣言も嫌がってたのに……急にどうしたの?」


「それが、マイカ様。ご主人様が強引に、私たちとの婚約を取り付けてきたんですよ」


強引というより一方的、だが――誰も本気で反対している様子はない。

あとはミナとリアの母親が上手くまとめてくれるだろう。


「ソウジ君って普段は子どもっぽいけど――仕事中や外では驚くほど大人っぽくなるよね。

ちょっと背伸びしてる感じもあるけど、それに気づけるのは私たちみたいな人だけだよ」


「当たり前だ。お前らの前でしか気を抜かねぇ。出会う全員に俺の“中身”を見せるつもりはない」


魔法でポーカーフェイスを作っていたのに、母親二人に見破られたのは少し面食らった。

女の勘は侮れない。


「確かに普段のソウジ様は子どもっぽいですが、ベッドの上では―――」


ドォォォォォンッ‼


ミナが余計なことを言った瞬間、外から爆音が響いた。


「あっ、爆発かな?」


「リアーヌ! 訓練場のアベルとティアさんに連絡を! マイカさんは動かないで!」


二人は冷静だった。こうした事態に慣れているのだろう。だが俺は別の異変を感知した。


牢獄周辺の監視魔法が、一斉に警報を鳴らしている。


……は? 全員、脱獄してやがる。


結界は壊れていない。外部から破られた形跡もない。ということは――内部からの脱走か。


考えるより先に動く。

自動再展開の結界は“外に出られない”だけで魔法封じの効果はない。

最悪、この国全体を巻き込む可能性だってある。


「……チッ、行くか」


ビーサンを蹴り飛ばし、ブーツに足を突っ込む。

ムラマサを左手に召喚した瞬間、視界が白くはじけた。


転移。


* * *


「……ゲホッ、ゴホッ……なんだこれ、煙が濃すぎる」


爆発の衝撃で舞い上がった土煙に視界は奪われ、息を吸うだけで喉が痛い。

それでも前方を見れば、高そうな服を纏った連中がこちらへ近づいてくる。


“……こっちも同じか。”


交渉の余地を考え、フェイク・フェイスを展開する。直後、男たちは立ち止まった。


「やあ。君の顔を直接見るのは初めてだ。私はこの国の“国王だった者”──で通じるかな?」


「前国王か。俺の脳内イメージは“下品な笑みのデブ”だったが、意外と顔は整ってんな。娘が美人なのも納得だ」


「まさか君に褒められるとは思わなかったよ。これは“ありがとう”と言うべきかな?」


「お礼はいらねぇ。早く“お家”に帰ってくれ。そこにあるだろう、牢獄っていう立派な家が」


「ああ、あの牢獄ね。意外と居心地が良くて気に入ってたんだよ。時間になれば飯が出て、食べ終わったら食器が消える。どういう仕組みなんだい?」


「気に入ってんなら早く帰れ。今日の夜飯はステーキかもしれねぇぞ」


互いに探り合う会話。だが内心は焦っていた。


フェイク・フェイスがあっても、この状況では一言のミスが命取りになる。

マリノ王国での件とは違い、今度は完全に敵地のど真ん中だ。


「そういえば、王女やメイド、騎士は時々顔を出したが――君だけは一度も来なかったな。忙しかったのかい?」


「いや、あんたらをここに送った夜に飲み過ぎて二日酔いだったり、ピクニック気分で行った先で殺されかけたり……色々あってな」


半分本当で半分嘘。実際はミナたちが気を利かせて俺を遠ざけていたのだろう。会わせない方が良いと判断したに違いない。


「そうだったのか。てっきり王女たちが“君の心を守るために”遠ざけているのだと」


「……自分の身で、俺の凄さを思い知っておいて、よくそんな間抜けな考えができるな」


「ああ、確かに君の力は凄まじい。だが――」


薄笑いが空気を裂いた。


「――後ろがガラ空きだぜ、坊や!」


――ッ!


風を切る音。瞬間、鈍く鋭い衝撃が肩口を打ち抜いた。時間が伸び、世界がスローモーションになる。


白い光の断片が視界を横切り、端で“何か”が落ちるのが見えた。

それが自分の左腕だと理解した瞬間、妙に静かだった。痛みも恐怖も、どこか遠い。心の奥底に残ったのは――奇妙な安堵。


……ああ、これが冷静ってやつか。


「おい……なんで俺が“人を殺すのに抵抗がある”って分かった?」


「この状況でお喋りとは面白い。お前ら、私がいいと言うまで動くな」


元国王の一声で周囲の兵は構えを解いた。体格からして全員が元騎士団で、魔法で作られた簡易武器を携え、薄笑いを浮かべている。


「では答えよう。まず一つ目――君はこの国を“乗っ取った”くせに、我々を即座に処刑しなかった。真に支配を示すなら見せしめの公開処刑が最適だ。だが君はそれをしなかった。する気もない」


「なるほどな。ミナも“公開処刑にすべき”って言ってたし、王族なら当然の判断だ。で、“一つ目”ってことはもう一つあるんだろう? 言ってみろよ」


「ふふ……そんな立派な武器を持っておきながら、抜く素振りすら見せなかった。まさか“脅しにすら使われず”、左腕ごと落とされるとは思わなかっただろうね」


挑発の笑み。声は静かに、そして冷たく響いた。


「さあ、お喋りはここまでにしよう、新国王様。これから君には死んでもらい、この忌々しい結界を消してもらう。……さて、どうする?」


――殺さなければ、殺される。

――殺される前に殺せるのは、俺だけ。

――だが、殺す以外にも生き残る手段はある。


一つは逃げてミナたちに任せること。

もう一つは――日本に逃げ、二度とこの世界に戻らないこと。


ティアの言葉が浮かぶ。俺が日本へ帰れるかどうかの境界線は、こいつらを“自分の手で殺すかどうか”だと。


だが、もしミナたちに殺させれば、それは“俺の命令”になる。結局は同じだ。誰かに殺させた時点で、それは俺が“殺した”のと変わらない。


日本へ戻り普通の生活を望むなら――あの城にいる全員を、国民を見捨てねばならない。


――選択は、最初から決まっている。


「――来い、ムラマサ」

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