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世界最強の元一般人 ― 神に選ばれた落ちこぼれ、最強の“使い方”で異世界を掌握する ―  作者: ITIRiN
第4章:奪う覚悟 ―最強が初めて守るもの―

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第43話:騎士団団長は、まさかの親父さん!

「本当に大丈夫なんですか? 別にソウジ様が会う相手は私のお父様なのですし、今日無理に行かなくてもいいんですよ」


なぜミナが玄関でこんなことを言っているのかというと、

ミナの父親と会う約束をしていた日の朝――熱は下がったものの、まだ病み上がりだったからだ。

しかも、俺が熱を出した原因といってもいい人物にこれから会いに行くのだから、心配するのも無理はない。


「でも今日行くって約束しちゃったし……まあ、なんとかなるでしょ」


「お嬢様のお気持ちも分かりますが、今日は交渉ではなくご挨拶の予定ですし、大丈夫ではないでしょうか」


「前回はそれで殺されかけたけどな。ぶっははははは!」


……当事者の俺からしたら、笑い事じゃねぇんだけどな。


「そんで、どこに転移すればいいんだ? 面倒くさいしいきなり庭にでも行くか?」


「今回は大丈夫だと思うけど、庭はやめておいた方がいいと思うぞ。

また殺されかけたら坊主もたまったもんじゃないだろ?」


「次ソウジ様にそんなことをしたら即処刑です。

大体、前回だって本当は殺されていてもおかしくなかったのですから、次はありません」


「やはり無難なのは、入国審査が行われている門の近くが一番よろしいかと」


あの殺されかけた思い出の場所か。

ちょっと気に入ってる門番がいるくらいで、あんまり気は進まないけど、まあしょうがない。


「んじゃあ門まで飛ぶから離れるなよ」


そう言うと、約二名は前回と同じように腕を組んできたので、

俺はアベルだけ確認してから転移した。


* * *


今回も門のすぐ近くに転移したのだが、朝の10時過ぎということもあり、少し列ができていた。

俺たちは最後尾に向かいながら――


「はい到着。パッと見た感じ、今日は弓兵部隊様はいないな~」


「もはやそれ警戒じゃなくて嫌味だろ。どんだけ根に持ってんだよ」


「……この間、ティアに訓練場の改造を頼まれてさ。どんなのがいいんだって聞いたら、

『そうじゃの~、やはりあやつらには色々なシチュエーションでの戦闘訓練をさせとうから、それができる訓練場がよいのう。もっと具体的に言うと気候・地形の変化が自由とか、誰かが実際に体験した戦闘を再現できるとか……』

って言ってたんだよ。で、作る予定なんだけど、やっぱりテストが必要だと思わないか?」


「…………」


どうやら俺の言いたいことを理解したらしく、アベルは黙り込んだ。

俺はそのまま続ける。


「最初は注文者のティア本人に確認作業をやらせようかと思ってたけど、アベルにやってもらうことにしたわ。

もちろんシチュエーションは、俺がここで殺されかけたやつな。どうやってあの攻撃を回避するのか、見せてくれよ」


ちなみに戦闘記録を再現する場合、相手が使った攻撃の威力はそのまま再現される予定だ。

もちろん痛みは感じるだけで、実際に傷が付くことはない。

……まあ、即死級の攻撃を食らっても“死なないだけ”で、精神的には地獄を見ることになるけど。


「そういえばティアさんはどうしたんですか? さすがに今日はついてくるかと思ったのですが」


「あいつなら、『そのレベルならわらわが行く必要もなかろう』とか言って、いつも通り訓練場に行ったぞ」


「まあ、陛下からしたら前回のことを考えると、ティア様がいなくて良かったと思われるでしょうが……」


そりゃそうだ。

なんたって自分の護衛対象が命の危機に晒されたんだから、普通なら文句のひとつも言われて当然。

……普通なら、な。


俺の護衛メイドは普通じゃないから、むしろ感謝しそうだけど。


「つか、さっきから普通に師匠の声で喋ってるけど、そんなこともできるのかよ?」


魔法で他人に変身できるんだから、それくらい簡単に決まってるだろ。――いいこと思いついた。


「『そんなことでいちいち驚くなんて、アベルはソウジ様の凄さを全然分かっていませんね。あなたはもうクビです』」


「うえ゛⁉ クビってどっち!? マリノ王国の方か!? それならまだ坊主の国で――」


「『両方に決まっているでしょう。あなたみたいな人、ソウジ様の国にもこの国にも不要です。分かったら早く私達の前から消えなさい』」


「そっ、そこまで⁉ 坊主のことが好きなのは分かるけど、流石にそれは横暴すぎないか姫様!」


「ちょっ、私は何も言ってませ……ああ゛っ、ソウジ様!」


……まあ、普通にバレるわな。


「あははははは……。お前、クビな」


「おかしいだろ! 普通は姫様の声を使って遊んだだけってオチだろ!」


「ご主人様。アベルで遊ぶのもいいですが、そろそろ私達の番ですよ」


リアに声をかけられて前を向くと、ちょうど順番が来たらしく、この間の門兵が姿勢を正した。


「お待ちしておりました、ミナ様・リアーヌ様・アベル様、そしてソウジ様」


「お仕事ご苦労様です。早速ですが、入国の許可とお父様への連絡をお願いしたいのですが」


「はっ、かしこまりました。少々お待ちください」


この前と違って、随分と落ち着いた対応だな。

まあ事前に俺達が来るって分かってたんだろうし、当然か。……あれはあれで面白かったのに。


そんなことを考えているうちに、他の三人は例のメダルを光らせ、入国許可を得ていた。


「俺それ持ってないんだけど入れるのか? まあ、入れないなら前回みたいに不法侵入するけど」


「それは是非ともご遠慮頂きたいんだがねえ、ソウジ君」


不意に名前を呼ばれ、そちらを向くと――

そこには、アベルによく似た若い騎士が立っていた。


「おっ、親父⁉」


「親父? ってことはこの人はアベルの父親か?」


「はい。この方はアシル・アベラール。アベルのお父様ですよ、ソウジ様」


親父に苗字があるってことは……もしかして。


「お前、実は貴族かなんかなのか?」


「まあ、俺の家は歴史ある騎士の一族だからな。自分で言うのもなんだが……この国では結構高位の貴族だぞ」


「はあ⁉ 一言も聞いてないんだけど!」


「お前には言ってないからな。当たり前だろ」


どうやらアベルの家は有名らしく、隣国でも知らぬ者の方が少ないらしい。

とはいえ、俺はこの世界の人間じゃない。知らなくて当然だ。


「雇い主に身分を隠してたとか、身分詐称だから。やっぱお前クビな」


「なんか知らんが大変だなアベル。このままだと無職だぞ」


「ちょっ、それどういうことだよ親父! 俺、まだこの国の騎士団に所属してることになってるよな!?」


アベルの焦りを無視して、親父さんは俺に向かって微笑んだ。


「ということで改めまして。私はアベルの父で、この国の騎士団団長を務めておりますアシル・アベラールだ。

よろしく、ソウジ君……いや、ソウジ・シラサキ様、かな?」


流石アベルの親父さん。

俺の正体を知っていても、態度がまるで崩れない。


「別に名前は好きに呼んでくださって構いませんよ。今のところは“ただの異世界人”ですので」


わざと『異世界人』と言ってみたが、反応は無し。

当たり前だが、今日も見事なポーカーフェイス状態だ。


「あははははは、もちろん知っているとも。

今、この国の騎士団や王貴族の間では君のことで大騒ぎだからねえ。色々な意味で……」


最後の一言、妙に声が低かったな。……探りついでに少し遊んでみるか。


「あ~、これ絶対ミナのせいだわ。いきなり男を連れ帰ったあげく、

『私とリアーヌはもうソウジ様のものです』とか言ったからな。アベルの親父さん含め、皆さんお気の毒に」


「いや、絶対坊主が色んな魔法を使いまくったのが原因だろ」


「まだいたのかアベル。お前はもうクビにしたんだから早くこの国の騎士団に戻……あ、そっちもクビになったんだったな。

だったら尚更ここにいる場合じゃない。早く次の就職先探してこいよ」


「あははははは。ブノワの奴が“君に脅された”って言うから心配していたんだけど……ただの面白い子じゃないか。

良い人に出会ったなアベル。……残念ながらクビになったようだが」


この人、アベルの親父さんだけあってマジで面白い。

完全に気に入ったわ。


「なあミナ。アベルの代わりに、この人をうちの騎士団に入れようぜ」


「流石にそれは無理かと。アベルならまだしも、アシルは騎士団団長ですし、何よりお父様とは旧友の仲だそうなので絶対に離しません」


なるほど。だからさっき、国王を呼び捨てにしてたのか。


「マリノ王国の王様と、その国の騎士団団長が旧友の仲か……。なんかカッコいいな。

俺もそれやりたいから、うちで団長やんないかアベル」


「旧友の仲になるのはよろしいですが、間違っても悪友にはならないでくださいよ……ご主人様。

私はこの前の飲み会のこと、一生忘れませんからね」


この前の飲み会――夜中の回復魔法と、ゲロ事件のことか。

……あの時のリアはマジで怖かった。気をつけよう。

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