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世界最強の元一般人 ― 神に選ばれた落ちこぼれ、最強の“使い方”で異世界を掌握する ―  作者: ITIRiN
第4章:奪う覚悟 ―最強が初めて守るもの―

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第34話:矢の洗礼と、国王へのご挨拶

「「「「…………」」」」


「ま、間に合った……」


そう呟いた直後、腰が抜けて崩れ落ちかけたところを、ミナとリアが両脇から支えてくれた。

おかげで地面にへたり込まずに済んだが――初めて命の危機を感じたせいか、体の力が抜けて踏ん張りがきかない。


「おい、大丈夫か坊主」


「………………」


「チッ、坊主のやつ、驚きすぎて完全にイッちまってるぞ! リアーヌ、セレニティ・オルド(鎮静魔法)をかけろ!」


「今やってます! それより、あっちの様子はどうなってるんですか!」


「俺じゃ見えねぇよ! それを聞くためにも坊主の回復を急げ!」


――しばらくして。

リアのセレニティ・オルドで呼吸が落ち着くと同時に、少しずつ思考が戻ってきた。

……代わりに、腹の底から怒りがふつふつと湧き上がってくる。


「ざっけんなよ‼ なんだあの威力は! 転移で海に飛ばしてなかったら確実に死んでたぞ! しかも見事に“俺だけ”狙い撃ちだしな‼」


何が起きたかは言うまでもない。

向こうは――ためらいゼロで矢を放ってきたのだ。しかも、見るからに魔法を山ほど付与したヤバい代物を。


だから俺は反射的に、転移魔法を展開してあの海――初めてドラゴンと戦った場所へと繋ぎ、矢を落とした。


にしても、えげつなかった。

千里眼で追っていたら、最初の一本が発動した瞬間、人ひとり閉じ込められそうな透明の箱が出現。

そこへ残りの矢が次々突っ込み――爆発、炎上、冷気の充満、黒い瘴気……まるで魔法の見本市。

まあ、あんな大技を何度も撃てるとは思えないが。


「そんだけ元気なら大丈夫だな。それで、あっちの様子は?」


「“必中”技だったのか知らねぇけど、向こうは相当慌ててる」


「ちなみにどんな魔法だった? 怒りっぷりからして、見てたんだろ?」


俺が見たままを説明すると、アベルが肩をすくめた。


「それ、多分うちでも最大級の攻撃魔法だな。さっきまで、あれを知ってる連中は“必中”だと信じてたはずだ。それを避けられたら……そりゃ焦る」


「……あの人達のところへ行きましょう。誰の指示か知りませんが、ソウジ様に手を出したこと――後悔させてさしあげます」


「待て待て待て。国際問題になりかねないからやめろ」


「ご主人様はまだ“名乗って”おりませんが、実質的には国王同然。もう既に国際問題でもおかしくありません。それに、もし宣言済みでしたら――即、戦争もあり得ましたね」


……あっぶねぇ。

三人の荷物を取りに来ただけなのに、開戦とか笑えない。いや、他人事なら笑うけど。


「えっと……お取込み中失礼します。王城から、入城許可が下りました」


お、門兵のお兄さん。

てっきり逃げたと思ってたけど、ちゃんと仕事してたのね。疑ってごめん。


「よ~し、じゃあ国王本人に“お詫び”を貰いに行くぞ~」


「坊主、今ふざけてる風で実はめっちゃ怒ってるだろ」


「そんなわけないだろ。まあ、ちょっとは怒ってるけどな……。ミナとリアがいなきゃ、この国には二度と来なかっただろうな」


「本当に申し訳ありません、ソウジ様。王城に着き次第、早急に事実確認を――」


「いや、そういうのはいい。謝られたって何も――」


「私にできることなら何でもします! だから――んぅ⁉」


泣きそうな顔で言葉を被せてくるミナ。

このままじゃ確実に泣く。説得の言葉も浮かばない。なら――塞ぐしかない。


――という、童〇らしいシンプル思考に従い、俺はミナの唇を奪った。


「ご主人様ってば大胆ですね。まさか陛下へのご挨拶より先に、国民の前でお嬢様とキスなさるとは」


「おい! 何のんきに言ってんだ! 警備兵がこっち向かってきてるぞ!」


案の定、周囲がざわつき始める。


「俺は悪くないですよ! 悪いのは全部、あそこの弓兵部隊です! でも全力で逃げます!」


王城の方角を掴み、キス体勢のままミナを左腕で抱き寄せ、リアを右腕で引き寄せる。

すぐさま自分にだけ浮遊魔法をかけ、両足でアベルのコートの裾を引っかけてずり寄せ――


「おい‼ いきなり何すんだ!」


「うるせぇ! 体が半分になりたくなかったら、黙ってろ!」


アベルが大人しくなったのを確認し、足を離す。――転移、発動。


* * *


「ここは……城内の庭園か。来るの、一週間ぶりだな」


「んっ……ちゅ、んふっ……しゅごいでしゅ、ごしゅじんさま……」


「わたし、ソウジ様に嫌われちゃうかと思って……ひっく、えぐっ……」


「……何してんだお前ら‼ 坊主に泣きついてる姫様は兎も角、お前は離れろ、このエロメイド!」


転移直後、リアの突然のディープキスで視界が塞がっていたが、アベルがリアを引き剥がしてくれて、ようやく視界が戻った。


うわ……離れる時、涎が糸引いてた。

頬は上気、目はとろん――えろすぎ。今度、サクランボのヘタでも渡してみるか。


「あん……何するんですか、いきなり」


「何で坊主とキスしてんだよ! しかも舌まで入れやがって!」


「だって、お嬢様だけズルいじゃないですか。私だって、不安で一杯だったんです」


最初は不安でも、途中から完全にスイッチ入ってただろ。舌の回し方、プロ級だったぞ。


「さっきの件は二人のせいじゃない。俺の言葉を信じずに構えてたアベルは兎も角、ミナとリアは即座に守ろうとしてくれた。――それで嫌いになるわけないだろ」


この国の方は……今後の対応次第だがな。


「だそうですよ、お嬢様。いつまでご主人様に抱きついてるおつもりですか?」


「初めてソウジ様に抱きしめてもらいました。……凄く幸せで、離れたくありません」


「いや、泣き止んだなら離れてくれ。早く国王に挨拶しに行くぞ」


「さっきまで優しかったのに、いきなり態度変わりすぎだろ。どこが“ちょっと怒ってる”だよ、完全にキレてんじゃねーか」


当たり前だ。

俺が王女にいきなりキスしたのも悪かったが、その直後に武器構えて突っ込んできたんだぞ?

あれ、完全に“もう一回殺る気”だったろ。どんな言い訳するか楽しみだ。


「てか、そろそろ行かないと拙いだろ。入城許可もらってから結構経ってる」


「そこはお気になさらず。お父様達の準備に時間がかかりますから、むしろ今が丁度よいくらいです。……とはいえ、これ以上は悠長にしていられませんね。残念ですが、参りましょう」


ミナがそっと離れ、代わりにリアがすっと近づく。


「ご主人様、お口の周りをお拭きしますので、動かないでくださいね」


「あひがとう、リア。……でも、だれの“しぇい”だろうな」


「そうですねぇ……やはり、ご主人様に矢を放った無能共のせい、でしょうか。――はい、綺麗になりましたよ」


確かに元を辿ればあいつらだが、それを“責任転嫁”って言うんじゃないか? まあいい。


「よ~し、国王本人が、どう言い訳するか聞きに行くぞ~」


「お前、時間経つほど怒りレベル上がってねぇか?」


「時間が経つと落ち着くのは自然。落ち着くと怒りが明確になるのも自然。つまり今の俺の怒りも、自然現象だ」


「……坊主、理屈は合ってるけど怖ぇよ」


「三人とも、この先何があっても“絶対に”手を出すな」


そう念押しすると、三人は順に頷いた。


「かしこまりました、ご主人様。ただし、私達が危険と判断した場合はお許しください」


「それと、ソウジ様がやり過ぎそうになった場合は止めますからね」


「あ~あ。坊主が何をやる気かは知らんが……陛下も可哀想にな」


――いやいやいや。可哀想なのは二度も殺されかけた“俺”だからな。そこ、間違えるなよ。

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