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世界最強の元一般人 ― 落ちこぼれ天才、最強の『使い方』で人生逆転!  作者: ITIRiN
第3章:築かれゆく王の日常、そして勇者召喚の影

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第23話:婚約未遂と、ファーストキス強奪事件

こいつにとって、俺に抱っこされることはそんなに大事なのか?

だいたい、まだ話は終わってないってのに。


「今は身長より気にするべきことがあるだろ」


「あら、そんなことあったかしら?」


「あるに決まってるだろ!」


「ちょっと、人を抱っこしてる時に大声出さないでよ。耳に響くわ」


……ねえ、もう下していい?

気を遣って抱っこしてただけなのに、なんかもう下したくなってきたんだけど。


「悪かった。今度から気をつけるから、とにかく話を進めさせてくれ」


「今度からってことは、これからも私をこうして抱っこしてくれるのかしら?」


「それは、この後の話次第だな」


「ふふ、もうそこまで考えてるなんて流石ね。この状態でそんなカッコいいこと言われたら……濡れちゃうわ」


……こいつ、本当に教育の賜物ってやつか?

ハイスペック人間を作る過程で知識も全部叩き込まれたんだろうけど、下ネタまで仕込む必要はなかっただろ。いや、これがセリアのキャラなんだろうな。


「それで、実際どうするつもりなんだ?」


「う~ん、ソウジならどうするのかしら?」


――俺が一番恐れているのは、セリアの存在が他国の貴族にバレた時だ。

「前国王の娘をこちらに嫁がせろ」と言われれば厄介だし、断れば確実に政治利用される。


特に、この国の住民に事実を知られるのは致命的だ。

暴動が起きるのは間違いないし、隙を突いて戦争を仕掛けられる可能性だってある。


だから、俺が考えられる最善策は――


「俺がセリアと結婚するのは……まだ嫌だ。だから婚約者として発表する。それしかない」


大々的に婚約を公表すれば、他国から「嫁に寄越せ」とは言えなくなる。

それに、俺との婚約は国際的なカードにもなる。変なことを言えば最悪戦争が始まる――その抑止力だ。


もっとも、実現させるには俺が正式に“この国の王”になっていなければならないんだが……まだ宣言すらしていない。


「これはちょっと変わったプロポーズかしら?」


「どう考えても違うだろ。俺ならどうするか、って聞かれたから最善策を答えただけだ」


「でも最善策が“婚約”だというなら、それはもうプロポーズみたいなものじゃない?」


……は?

もしかして、これセリアに嵌められたのか?

いや待て、相手は頭が回るタイプだ。絶対ある、そういう計算!


「逆に聞くけど、セリアは本当に俺でいいのか? 今日初めて会ったばかりの異世界人だぞ」


「今の私には、あなたと結婚する以外の選択肢はないわ。それに――今のところソウジのことは好きだし」


「今のところ、ね。なら言っておくが……セリアの親を含め、俺が消した奴らはまだ生きてる。だが、いつかは殺すことになる。それでも俺を好きでいられるのか?」


「………ちゅ。……ふふっ、これが私の答えよ」


――ん?

今の……キス?


「おまっ、キスしたのか!? 俺まだ一回もしたことなかったのに!」


「私も初めてよ、旦那様♪」


***


……セリアに、ファーストキスを奪われた。

実感は正直、まだない。

けど――たぶん今のは、俺の人生で一度しかない瞬間だったんだと思う。


とりあえず“旦那様”呼びはやめさせて、俺はキッチンへ戻った。


「随分と子供達と仲良くしてるじゃねーか、アベル」


「お前、今までどこに行ってたんだよ」


「悪い悪い。で、どこまで終わった?」


「坊主が言った食器類を子供達が全部並べて、座る場所を決め終わったところで坊主が戻ってきた――そんなとこだ」


タイミング的にはちょうどいい。


「それじゃあ次はコップと、この飲み物をテーブルに並べてくれ」


「「「「「はーい!」」」」」


よし、その間に――


「アベル、そこの鍋持ってきてくれ」


「ん? ああ、このデッカイ鍋か……おもっ⁉ なんだこれ、重すぎだろ!」


「それ一個で六十人分のカレーが入ってるんだから当たり前だろ。あと三つあるから頑張れよ」


このカレーは騎士団の寮に運ぶ用だ。

最低でも百三十人分、さらに警備兵二十人分。おかわりや辛口・甘口の二種を用意したら、業務用の鍋が四つになってしまった。


「お前も一個くらい持て!」


「おいおい、アベルが持って行くことで騎士団内での人気を高めてやろうって俺の心遣いを無駄にする気か?」


「こんな見たこともない食いもん、俺が持って行ったところで坊主の評価が上がるだけだろうが!」


「チッ、バレたか。……よっと、ほら早く行くぞ」


「そうだ! 坊主にはディメンション・シェルフがあるんだったな! なら一緒に入れろよ!」


どうせ最後は自分で持つことになるんだから、無視っと。


***


「おい、ここ玄関だぞ。まさか俺にこれを持って外に出ろって言わないよな?」


「安心しろ。外に出る必要はない。この壁の四角い板、触ってみろ」


「おおっ! 光った!」


「画面に項目が出ただろ? 行きたい場所を選択すればいい。今回は騎士団の寮な……ぽちっと。はい、これでそこのドアを通れば寮の玄関に着く」


「はあ⁉ ここ玄関のドアだろ! どういう仕組みだよ!」


「ただの転移魔法の応用だ。……あっ、言っておくが誰でも使えるわけじゃない。許可した人だけで、行ける場所も限定される。もちろん日本には繋がらない」


「帰りは?」


「同じ操作で戻れる。はい、いってらっしゃ~い」


***


――数分後。


最後の鍋を運び終えて戻ってきたアベルに、カレーライスの写真を渡す。


「これ見ながら盛り付けろ。ご飯は寮の炊飯器にある。“開けるな”って張り紙してあるから分かるはずだ。あとは……ほら」


「今度は大量の袋かよ。中身は……高級酒⁉ どうしたんだよこれ!」


「ミナ達が面接してる間に、前の城から回収したやつだ。“俺に頼んで分けてもらった”って言っとけ」


「子供のクセに気なんて遣うな。ちゃんと坊主からだって伝えるっつうの」


「うるせぇ。部下に手柄を立てさせるのも上司の仕事だ。酒持って、飯食いながら飲んでこい」


アベルは新入りで、しかもいきなり騎士団長になった。

今後のことを考えれば、団内での株を上げるに越したことはない。


「上司様がそう言うなら従うさ。サンキューな」


「おう。ただし楽しみすぎるなよ。こっちに戻ってきたら、俺の世界の酒も飲ませてやる」


「マジか! なら酔い潰れないように気を付けるは!」


……おい。今のがなかったら絶対、潰れるまで飲む気だっただろ。

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