第19話:プレゼント作戦、まさかの大失敗!? 俺、なんで責められてんの?
さて、夜飯はこれで完成っと。あとはみんながいるかどうかだけど――
「おーい、そこにみんないるか?」
「お兄ちゃん! アベルおじちゃん以外は全員いますよ!」
この声はアリスだな。……ていうかアベルおじちゃんはさすがに可哀想だろ。まあ直させる気はないけど。
そんなことを考えながらリビングに移動し、ディメンション・シェルフからさっき買ってきた荷物をテーブルに広げた。
「んじゃ丁度いいや。まずはアリス、サラ、エレナ、リーザ、セリア。それからティアとエメさんにはこれな」
「ん? ソウジ、みんな同じ袋みたいだけど、中には何が入っているのかしら?」
「気になるなら自分で開けてみ。まあ俺からのプレゼント……って言うのはちょっと違うかもしれないけど」
「わ~あ! セリアちゃん見て! 可愛いメイド服だよ!」
「あら本当だわ。……それに、この生地の感触は触ったことがない。袋も見たことがないもの……もしかしなくても、これはソウジの世界の服ね?」
薄々思ってはいたが、やっぱりセリアは頭が切れる。
手元の情報を一瞬で組み合わせて答えを導き出すとか……お前、探偵にでもなれるんじゃないか。
「正解。あと、メイド服は同じものを数着ずつ、パジャマはデザイン違いで数着ずつ入れてあるから洗濯しながら着回してくれ。靴も入れてあるから、もしサイズが合わなければ言ってくれれば新しいのを買ってくる。……ああ、エメさんにはメイド服とブーツだけですけど、パジャマも必要なら言ってください。改めて用意します」
エメさんは年齢的に俺より一回り上っぽいから、さすがに選ぶのが気恥ずかしかったんだよな。
「ご配慮ありがとうございます、旦那様。その時はお願い致します」
ふぅ……今すぐ欲しいとか言われなくて良かった。もしもの時は通販サイトで選んでもらおう。
「次にセレスさんですね。セレスさんには執事服と皮靴を用意しました」
「これはこれは、私のような者にまで……ありがとうございます」
「いえ。エメさんもそうですが、自分みたいなガキに敬語を使っていただくだけでも恐縮してるのに、頭を下げて礼まで言われたら逆に困ります」
今までの人生で年上から敬語を使われるなんてなかったから違和感がすごい。正直やめてほしいんだが……まあ無理か。
「いえ、あなた様がどんな方であれ、私の旦那様なのは変わりません。それに、私のような者が頂き物をいただくなど本来有り得ないこと。ですから、頭を下げるだけでは足りないほどなのです」
「そうなの?」
「う~ん、まあ立場によって違いますけど……普通は使用人にプレゼントなんてしませんよ。よっぽど親しい関係か、長い付き合いでなければ。私はリアーヌに渡したりしますけど」
なるほど、ミナが言うならそれが“普通”なんだろう。……でも俺はその風習を無視する!
元が一般人なんだし、いまさら貴族風習に染まれるか。
「じゃあ俺のことは孫だと思って、プレゼントをもらったってことにしてください」
「旦那様が私の孫ですか。ほっほほ……これまで多くの方に仕えてきましたが、そんなことを仰る方は初めてですよ」
「普段から孫として接してくれとは言いません。こういう時だけでいいので」
「旦那様の仰せとあらば。では、これからはそうさせていただきます」
今ふと思ったが……この流れだと、そのうちティアが「お婆ちゃん」として接してきそうで怖い。
いや、こんなこと考えてるのが本人にバレたら確実に怒られる。……忘れよう。
「はい、次はマイカ。これから秘書として働いてもらうから、スーツ一式とストッキング、それにパンプス――って言っても分からないか。記憶送るぞ」
用意したのはカジュアル寄りのスーツ。なんちゃって制服をイメージしてくれれば分かりやすい。
ちなみにストッキングは透明タイプ。決して俺の趣味じゃない。……ホントだって。
「ソウジ様の記憶ではスーツって黒白のかっちりした物が多いのですが、このような緩い感じの物でよろしいのですか?」
「正式の場なら堅いスーツの方がいいけど、ここで仕事する分にはこっちの方が楽だろ。毎日同じ服よりオシャレしたいだろうし。今度は自分で好きなのを買えばいいさ。仕事の時はこのスーツ、普段は私服って使い分けでもいい」
一応、仕事用に何台かPCは用意してある。
けど、やっぱり一部の人にはスマホも買った方が良さそうだな。
スマホがあれば服だって通販で好きに選べるし、何より連絡手段として必須になる。
今は春休み中だからずっとこっちにいられるが……四月からは大学が始まるしな。
「いえ、私は秘書兼宰相ですので。おしゃれなんてとんでもない」
「あ~、マイカは俺と同い年なんだし敬語とか様はいらないぞ。それにティアを見てみろ。こいつ、服を渡した後さり気なく部屋から出て行って、一人だけ着替えてきやがった。……マイカ、こいつの役職言ってみ」
「えっと、ソウジ様専属のメイド兼副メイド長……です」
「そう。なのにこれだぞ。別にティアみたいになれとは言わないけど、少しくらい楽にしても良くないか?」
「どうじゃソウジ。似合うかの?」
ティアの着ているのは、白と黒を基調にした和風寄りのメイド服だ。
本当は完全な和服メイド服を着せたかったが、それだと下駄まで用意したくなるからやめておいた。
慣れてない靴は危ないしな。
「挙句の果てには感想まで要求してくる奴がいるんだから、気にするなって」
「そ、そこまで言うなら普通に喋るけど……。え~と、呼び方はソウジ君でいい?」
「全然いいぞ。それと、これはスケジュール帳とボールペン。良かったら使ってくれ」
「ありがとう。それじゃあこれはソウジ君の予定を管理するのに使うね」
あ~、そういう使い方もあったか。
俺としては、秘書と宰相で忙しくなるマイカのためにと思って渡したんだが……。
まあいい、後でもう一冊買ってやろう。
「それで……なんで二人は俺をジッと見てるんだ?」
二人――ミナとリアーヌさん。
しかも「勿論私達へのプレゼントもあるわよね?」って顔してる。……用意してないんだけど。
「あの~、ソウジ君。もしかして二人には何も?」
「もしかしなくても何も。俺が買いに行ったのは“これから必要な物”だからな。二人にはもう渡してあるだろ、昨日」
「「「「「…………」」」」」
ちょ、待て待て待て‼
な、なんだよその目‼
ミナ、リアーヌさん、ティア、マイカ、エメさんまで……。
しかも五人揃って「こいつホント駄目だ」って顔してるじゃねーか。
……特にミナの目が怖い。これ、完全に地雷踏んだやつだ。
俺、何か悪いことしたか?




