第173話:お出掛け前も可愛いソウジ
その後もなんだかんだと母娘間でのちょっとした言い争い的なものが続いたものの、各自自分の部屋へと片付けや仕事の準備をしに行っていたセリア達がこの部屋に戻ってくる気配が感じられたと同時に、アンヌとティアは再び遠慮なしに殺気をぶつけ合いながら訓練場へ転移を。
エメは先輩兼上司もとい、セリア達最年少組の姉としての……いつも通りの表情へと変えたため、ソウジを起こす前に再度記憶を改変させながら
「私知ってるのよ~。弟や妹(最年少組)の前ではそうやってお姉さんぶってるけど、ミナ・リア・マイカ・ティアの四人の前では、さっきみたいに普通の女の子として素の状態でお喋りしたりしているってこ・と・を♪ ……おっと、そういえば四人だけじゃなく、もう一人いたわね」
年甲斐もなくそんな学生みたいな意地悪を言うと、エメは可愛らしく頬を赤く染めながら
「ちょっ、レミアお母様⁉」
「あはははは、冗談よ冗談。そうよね~、私はまだ本人の口から直接聞いたわけでもなければ、二人っきりで何かをしているところを見たわけでもないし? 勝手な決めつけはよくないわよね」
「んぅ~、レミアお母様の意地悪‼」
なんて、彼女の言葉通り意地悪をしてきた母親に、これ以上余計な詮索などをされないように―――といった感じで、キッチンから少し離れた居間の方へと向かうよう私の背中を両手で押してくるのを内心楽しみながら、そこにあるソファーへと腰を下ろした後、
『どうせ二人っきりの時にでも隠れて色々しようとしていた方が何を仰っているのやら』
とエメが言っていた通り、実は既にアンヌほどではないにしろ、私もみんなに内緒でソウジとは母子としての時間を作っていたりするため、普段の生活では見られないような表情や感情、行動といったものを本人の意思とは関係なく覗かせてくれる瞬間が堪らなく好きで……。
その中でも一番キュンときたのは、連休最後に二人で映画を見に行った日にあった、
あの小さな子供のように自分の中にある嬉しさを隠しもせず、遠慮なしに手を引っ張ってきた朝と、それを見終わった後の感想を無邪気に喋っていた時だったのだが……。
なんて先日あった出来事を思い出しながら記憶改変を終えた私は、軽くソウジの背中を叩いて起こした後、
『今日はみんな忙しいみたいだから、お昼ご飯を食べにサムールへ行きましょうか』
と言ってあげると、本当は嬉しくて仕方がないくせに、可愛げもなくそれを私に察せられないよう我慢しているつもりなのだろうが、こちらから見れば全く隠せていない状態で
『ん。今準備してくるからちょっと待ってて』
そう言い、走って自分の部屋に行ったかと思えば、今度は走ってエメのもとへ向かっていき
『ねぇ、見てエメ姉! この服どう?』
と、本人にとっては精一杯のお洒落をしたつもりなのであろう自分の格好を嬉しそうに見せていたりといった一連の流れを目の前にし、
あの時のソウジも良かったけれど、これはこれで凄いキュンとさせられるわね。ん~、でもやっぱりあの日を超えるほどのものではない……と言いたいところなのだけれど、これはこれで可愛すぎるというかなんというか。
なんてことを人が真剣に考えていることをいいことに、こちらの隙をついて
『よくお似合いですよ、ソウジ様。ですが私ならもっとソウジ様をカッコよくしてさしあげられると思うのですが……どうなさいますか?』
『本当? そしたらミナ姉と、リア姉と、セリア姉と、マイカ姉と、ティア姉と、そっ、それから……ユリー姉にもカッコいいって……言ってもらえる?』
『んふふっ、もちろんですよ……ソウジ』
といった感じで弟を自分好みの格好にしただけでなく、あの子のことを呼び捨てにしてみたりとやりたい放題していたのが今から数分前のことであり、現在は約束通りサムールへとお昼ご飯を食べに行くために
建物側から順番に私、そしてその私と手を繋いでいるソウジ。同じく手を繋ごうとしたものの、五歳の息子に拒絶反応レベルでそれを嫌がられ続けたどころか、出来るだけ近くを歩きたくないのか少し距離をあけられているブノワ―――といった感じで親子三人仲良く……ないわねこれは。




