第16話:膝枕と“お兄ちゃん”呼びで、人間らしさを取り戻す
やがて風呂組が帰ってくる気配。
起き上がろうとすると――
「あら? もう少しこのままでもいいのに」
「リアーヌさんやティアならまだいいけど、子供達に見られるのは恥ずかしい」
「私は気にしませんけど?」
「俺が気にするの。……それにあの子達の服も買いに行かなきゃだし」
「どちらへ?」
「地球の方。今回買うのはメイド服とかパジャマだから」
「私も行きたいです!」
「今日は忙しいから今度な。代わりに――ほら」
俺は城の設計画面を出し、ミナに渡した。
「それを使って好きに部屋とか城のデザインを変えていい。ただし、バツが付いてる部屋だけは触るなよ」
「えっ⁉ そんな簡単に変えられるんですか?」
「ああ。もしこんなことが世間にバレたら、建築業界の連中が一斉に俺を消しに来るだろうな。
材料は無限、デザインは自由自在……そんな奴がいたら"仕事が全部潰れる"からな」
「そんな秘密を私に教えて良かったんですか?」
「何を今さら。ミナのことは信じてるって言っただろ」
「ふふ、もう一度聞きたかっただけです♪」
そこへ風呂上がりのティアがにやり。
「お主ら、何をイチャイチャしておる」
「俺は無関係だ。ミナが勝手に……」
「そんなこと言って~。ソウジ様だって、私に頭を撫でられて"嬉しそうにしてました"よ?」
「えっ……ソウジ様、頭撫でられるの好きだったんですか?」とリアーヌ。
「お兄ちゃんは頭を撫でられるのが好きなんですか? それなら、私と一緒です!」とアリスまで混ざってくる。
……流れを止めるのは無理だ。
「じゃあ俺も撫でていいか?」
「はい! さっきはリアーヌお姉ちゃんに撫でてもらったので、次はお兄ちゃんがいいです!」
"リアーヌお姉ちゃん"、か。
……流石メイドというか何というか、子供達と仲良くなるのが本当に早い。俺にもそのスキルを少し分けてくれ。
「それじゃあ撫でるぞ。……どうだ?」
「お兄ちゃんの手、大きいのに優しくて気持ちいいです~」
「うちも! ソージ兄ぃ、次はうちの番!」
「えっ!?」
「ズルい! サキ兄ぃ、私も!」
「ソウジ、特別に私の頭も撫でていいわよ」
「ちょっと待て、落ち着け! 順番だ!」
「「「「「はーい‼」」」」」
みんな元気よく返事をしたあと、一列に並び始めた。
俺は子供達の目線に合わせるためにしゃがんで、順番に頭を撫でていく。
――と、その時。
視界に入ったのは頭ではなく、なぜか足。
「ん?」と思って顔を上げると……
「……なんでミナまで並んでるんだ」
「なんでって、私もソウジ様に頭を撫でられたいですもの」
「お前は昨日、ドライヤーの時に撫でてやっただろ」
「昨日は昨日。今日は今日ですよ、ご主人様」
……って、リアーヌさん。あんたまで並んでたのかよ。
「二人は後だ。それよりも……まずはエレナだ」
「いえ、私は……ご主人様のメイドですから……」
「知ってるかエレナ。"この城では俺がルールだ"」
そう言って抱き上げ、頭を撫でる。
「メイドだとか関係ない。ここにいるのは全員家族だ。だから遠慮すんな」
「……もう。ソウジ様って本当に"無茶苦茶"なんですから」
その言葉と共に、ようやくエレナも笑顔を見せた。
***
――はぁ。子供の相手はやっぱり疲れる。悪い気はしないけど。
……ん? なんかまた列が出来てるんだけど。今度は"高い高い"希望か?
俺、そろそろ買い物に行きたいんだけど。
……いや。
こういうのが、必要なんだろうな。
王様の俺じゃなくて――
“人間の俺”を見せる時間。




