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世界最強の元一般人 ― 落ちこぼれ天才、最強の『使い方』で人生逆転!  作者: ITIRiN
第2章:王になるという選択

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第9話:この選択が、世界を動かす

……頭の下が温かい。それにやけに柔らかくて、妙に心地いい。


「……ん、うん?」


「あら、起きましたかソウジ様」


目を開けると、リアーヌさんが俺を見下ろして微笑んでいた。

……って、なんで俺は膝枕されてるんだ?


「えーと……なんで俺、リアーヌさんに膝枕されてるんだ?」


「理由ですか? それは――お嬢様とのじゃんけんに勝ったからですね」


全然答えになってねぇ。むしろ謎が増えた気しかしないが……まあいい。

せっかくだし、もう少し堪能しておこう。


「あら、ソウジさん起きたんですね。良かった」


「おお坊主、意外と早く目ぇ覚ましたな」


リビングからお姫様とアベルもやって来る。

そこでようやく気絶前の記憶が蘇ってきた。


「俺、どれくらい寝てた?」


「今は夜の十時過ぎですので、二時間ほどですね」


「二時間も……」


さすがに悪い気がして上体を起こすと、リアーヌさんが少し残念そうに言った。


「あら、そのままでも良かったのに」


「リアーヌばっかりズルいです! 次は私にやらせてください」


「おいお前ら。次がどうとか言う前に、今はやることあるだろ」


「うぅ……確かにアベルの言う通りですね。じゃあ次は私の番ですからね!」


いや、次ってなんだよ。

そもそもいつから俺は、この二人に膝枕されるような関係になったんだ?

……まあ、悪い気はしないけど。


「で、坊主。気絶する前のことは覚えてるか?」


「お姫様が“ボハニアのクズ共を処刑してくれ”って話してたあたりまではな」


「ってことはほぼ全部か。……じゃあ単刀直入に聞く。なんで気絶した?」


「……俺の世界じゃ戦争や殺人は滅多になかった。殺人犯は重罪人扱いだ。

つまり俺は、生き物をまともに殺したこともなくて……あの瞬間、怖くなって気絶したんだ」


三人は「やっぱり」という顔をして頷いた。


「なるほどな。そんな奴に“処刑しろ”なんて言ったら、そりゃ潰れるわ」


「そういうことだ。ドラゴンを斬った時だって抵抗があった。まして人間なんて……」


「まあ、どこの騎士団でも最初の一殺は地獄だしな。特に新人は」


「それは貴方のせいでもあります。入団したばかりの子達を、いきなり盗賊討伐に放り込むからです」


「はあ? 騎士なら人を斬れなきゃ話になんねーだろ! 心のケアはお前の鎮静魔法で完璧だし」


……この二人、口喧嘩する割に息ピッタリだな。


だが俺の目はお姫様に向いていた。

さっきからずっと下を向いたまま黙っている。――大体理由は分かるけど、声を掛けるべきだろう。


「お姫様、少しいいか」


「え? あ、はい……大丈夫です」


リビングに移動すると、お姫様は深く頭を下げてきた。


「知らなかったとはいえ……あの時、国民の前で処刑をお願いしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


「やっぱり気にしてたか。別にお姫様が悪いわけじゃない。だから気にするな」


「ですが……あの時のソウジさんの反応は、初めて人を殺した人と同じものでした。そんな方に……」


「いいって言ってるだろ。それに乗っ取りの件は協力する。安心しろ」


「そ、そんな! あれは私達だけで……」


「俺にも関わりがある以上、勝手に事を進められる方が困る。だったら一緒にやった方がマシだ」


ボハニア王国の隣国はマリノ王国だけじゃない。

俺の城があるこの土地も隣にある。

つまり、お姫様達が行動を起こせば、その影響はこちらにも及ぶ。……それくらい分からないお姫様じゃないはずだ。


「……ですが、今のソウジさんに人殺しをさせれば、心が壊れます。そんなことは絶対にさせられません」


「処刑だけが選択肢じゃないだろ。牢にぶち込んでおくとか、方法はいくらでもある。ボハニアを見捨てることは出来ない」


確かに関わらない方が楽だ。

だが今回は、人の命が掛かっている。見捨てられるわけがない。


「……本当にいいんですね?」


「ああ。止められてもやる」


「分かりました。その時は私達が代わりに手を汚します。そして、絶対にソウジさんを守ります」


「好きにすりゃいい。だが一つだけ言っとく。あの国の次の王は俺だ。勝手に殺すのは許さねぇぞ」


俺の言葉には二つの意味がある。

一つは――慣れているのかもしれないが、できるだけお姫様とリアーヌさんの二人には、人を殺してほしくないという気持ち。

もう一つは、俺の選択のせいで人が死んだなんて結果を残したくないという、ただの自己保身だ。


お姫様はどこか嬉しそうに微笑み、静かに頷いた。


「はい、承知しました……ソウジ陛下」


「それはまだ早いだろ。それより作戦会議の続きだ」


* * *


居間に戻るとリアーヌさんが新しい紅茶を淹れていて、アベルはふて腐れた顔でぼやいていた。


「戻ってくんの遅えよ」


「なんだ、元気ねーな。……まあ、リアーヌさんに説教されてたのは聞こえてたけどな」


「精神的には俺の方が大人なのに、なんで俺が怒られんだよ……」


「へえ、やっぱアベルの方が年上ってことでいいのか?」


「そうですね。種族によって成長速度は違いますが、人間年齢で換算するのが基本です」


「じゃあお姫様とリアーヌさんは、俺より二つ上ってとこか」


紅茶を運んできたリアーヌさんが笑顔で補足した。


「その通りです。ですので、私達のことを“おばさん”なんて思ったら駄目ですよ?」


「いやいや! そんなこと全然考えてないから。それに二人ともどう見ても十七歳くらいだろ」


「まあ、長命種は十七から二十歳くらいで見た目が止まるのが普通ですからね。……ソウジさんは十七歳でしたっけ?」


「え、ああ……まあ一応な」


駄女神のせいで若返ったせいか、俺は少し気まずくなったが――


「私はもっと下かと思ってました」

「申し訳ありません、私も十五歳くらいかと」


……そんなに若く見えるのか?

いや、もしかして精神年齢の問題か? ……考えるのはやめとこう。


気づけば二人は当然のように俺の隣に座っていた。

お姫様とリアーヌさんがぴったり隣に――なんなんだこの状況は。


俺はまだただの学生だ。

――それでも、この一歩だけは引き返せないと分かっていた。


この選択が、世界をどう変えるのか。

その答えを知るのは、もう少し先の話だ。

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