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青とわたあめ

作者: くどさん壱

青春。

春は青いものだったっけか。

夏、遠くに見える海を見ながらそう思った。

午後4時

そんな他愛のないことが気になってしまったので識のある友達に聞いてみることにした。

「青春。そっか確かに不思議だよね。それを知るためにはまず古代中国の陰陽五行思想を知ることが必要なんだけれど......」

僕はそっと目を逸らした。

スタートから明らかに理解し難そうな話だ、一気に興味が失せたのでまあ無視。聞いといて何様なんだろとは思ったけれどまあ仕方のないことだよなと割り切った。

「まあ昔のことだから断言できることではないけどさ。」

彼の締めの言葉に今まで聞いてたよーと頷くとまたホテルの窓の外を見た。

海、久しぶりに見たけどまあそんなウキウキしたものではないな。

最近は周りのものにあまり興味をもたなくなってしまった。とはいっても決して生活が辛い訳ではない。ただ『面白くない』それだけだ。

まだまだ時間があるな、と、窓枠に顔を乗せて目を瞑った。

午後6時

敷かれた布団にぎゅっと飛び込む。

ふわっとした布団の感覚は誰もが好きなものだ。

そして、まあ枕も。

何だか、その枕が輝いて見えたから、僕はそれを掴んで、宙へ放った。

ばっ、とあまり聞かない音が聞こえた。

音のなった方を見たら転がったわたがしと破れた襖が見えた。何だかそれが妙に面白くて、僕はまたわたがしを拾って襖に投げた。

広がっていく穴、穴ああなんて美しいんだろう。僕はそれの何が快感だったかは覚えていない。でも確かに気持ちが良かった。その白い襖に、ふわふわなわたがしがあたってそれが壊れていく姿が。

弱々しいそのわたがしが白くてなかなかに固い襖を壊す様に快感を得たのだ。

僕はホテルを飛び出た。何か抑えられない衝動が胸からふつふつと湧き上がった。それから何時間経っただろう、ただ、スマホが指す自宅の方向へ海沿いを走り続けた。

昼になった。遠くに海と入道雲が見えた。

夏の海と入道雲。誰かがそれを青とわたあめとそう言った。でも、僕にとってはあの青白い光に誘われるように投げたふわふわした枕が、今でも忘れられない青とわたあめだ。だってそうだろう、なぁ。夏よ、春に青を奪われるなよ。



襖を壊すと言うのは僕にとってはとても反省すべき事で絶対にやりたくない事なのですが、「もしやりたい人がいるならどう考えるんだろう。」と思って書きました。

やってしまったという後悔の念を感じない、僕が嫌いなタイプの主人公を描きました。


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