「誰にも見せないノイズ」
研究所の屋上。
夜風が吹き抜け、眼下には未来都市「I」の輝きが広がっている。
陽介は手すりに寄りかかり、ふと空を見上げる。
陽介「全部、俺が望んだ未来だ。
汚染は消え、人は笑い、世界は繋がった。
…じゃあ、なんでこんなに、静かすぎるんだろうな」
ポケットから古びたメモ帳を取り出す。そこには、初期のME理論式と、「人を救う力がほしい」とだけ書かれた過去の自分の文字。
「“救う”って何だ? “変える”って何だ?
いつの間にか、“支配する”にすり替わってたりしないか?」
背後から、美沙の気配。
美沙「いた。ここにいると思った」
陽介(笑って)「なんで分かった?」
美沙「陽介が“かっこつけたい時”は、大体この景色選ぶから」
陽介、少し照れたように肩をすくめる。
美沙「ねぇ陽介。最近、夢見る?」
陽介「夢?…見ない。昔は見てたけど、今は…もう必要ない気がして」
美沙(少し寂しそうに)「夢があるから、前に進めるんじゃない? 陽介が昔言ってたよ。『未来は、僕が創る』って」
陽介は答えず、静かに夜空を見つめ続ける。
その視線の先、わずかに“星のような光”が瞬き、すぐに消えた。
誰にも気づかれないままーーーー