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「過去から未来へ」

陽介の顔に、これまで見せなかった複雑な表情が浮かんだ。その視線を桐生から外し、何も言わずにゆっくりと歩き出す。桐生はその背中を見つめながら、息を呑んだ。


「どうしてお前は、そんなに自分を追い詰めるんだ? 俺たちが信じている『ME』が、こんなにも危険だって分かっているのか? それでもお前は、それを続けるつもりなのか?」


陽介は一度立ち止まり、振り返る。言葉が喉に詰まったまま、しばらく黙っていた。その間に、桐生は自分が言いたかったことを再確認していた。かつての仲間がいなくなった、その後の孤独感。だが、それよりも強く胸を締め付けたのは、陽介を信じてきた自分の無力さだった。


「お前が言いたいことは分かってるよ。」陽介は低い声で言った。「でも、俺には選択肢がなかった。俺がしたことが正しかったのか、それとも間違いだったのか、それすらも分からない。ただ、これ以上は引き返せないんだ。」


桐生がその言葉を受け入れることができなかった。その瞬間、背後から冷たい声が響いた。


「過去はいくらでも改竄できる。」その声は、あまりにも冷たく、まるで空気を切り裂くように耳に届いた。


二人は一瞬、動きを止めた。その声の主が現れた瞬間、陽介の目が鋭くなる。桐生が振り向くと、そこに立っていたのは一人の男性だった。その人物は、黒崎一真――未来から来たと言われる男だった。


黒崎は冷たく笑いながら、桐生に近づいていく。「君は未来を見たことがあるんだろう。自分の目で確かめたはずだ。だが、君はその後どうするつもりだ?」


桐生はその言葉に圧倒され、言葉が出なかった。黒崎は続けた。「君の兄は、未来エネルギーを悪用しようとして、結局自分自身を壊してしまったんだ。それが真実だろ?」


陽介が深いため息をつきながら口を開く。「あの事故、桐生。お前の兄が『ME』を悪用しようとして、最終的に自分の命を失った。俺は、あの時、彼に警告をしたんだ。それでも、彼は聞き入れなかった。」陽介の目には、後悔の色が浮かんでいた。


「だが、俺はその責任を感じている。」陽介が言うと、桐生の顔に驚きと怒りの色が交じった。


「お前が責任を感じるだと?」桐生の声が震える。「お前は、何を考えているんだ? あんな形で俺の兄を…。」


その時、黒崎が手を挙げて、二人を静かに見つめた。「君たち、二人とも過去に囚われすぎだ。過去は改竄できる。だが、未来は変えられない。」黒崎の目が鋭く光った。「君たちが今選ぶべき道は、ただ一つだ。過去を背負うことなく、未来を決めろ。」


桐生がその言葉を噛みしめるように聞き、しばらく黙っていた。陽介もまた、何かを考えているようだった。しかし、黒崎の言葉が二人に重くのしかかる。彼が言っていることは、ただの警告ではない。未来に関わる重大な決断だ。


桐生が一歩踏み出し、黒崎に向き直った。「お前が何を言おうと、俺はこれからどうするか決める。だが、陽介、お前が未来を変えようとしているその手段が、どうしても許せない。」


黒崎は静かに微笑み、陽介に視線を向ける。陽介はその言葉を受け止め、決して弱さを見せることはなかった。


「未来は、僕が創る。」陽介の声は、確固たる意志を込めて、空気を震わせた。


黒崎は一歩引き、二人の前で静かに立っていた。彼の目には何かを見越しているような、深い思索の色が浮かんでいた。



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