「予測不能」
研究員が帰った後、
陽介はひとり、青白いモニターに照らされながら、頭を抱えていた。
「世界を創った」英雄としての顔。
「世界を壊している」自覚。
どちらが本当の自分なのか、分からなくなっていた。
「俺が作ったこの世界は——
本当に、正しかったのか?」
通信機が震えた。
発信者は桐生剛。
受信ボタンを押すと、聞き慣れた声が、少しだけ硬く響く。
『話がある。
あの場所で。』
——あの場所。
学生時代、陽介・美沙・剛、三人でよく集まっていた、あの秘密の場所。
古びた展望台。
夜景が一望できる、都市のはずれ。
陽介は黙って通信を切った。
そしてゆっくり立ち上がる。
ーーーーーーー
風が吹き抜ける。
夜景の海は、かすかに揺れて見えた。
桐生が、手すりにもたれかかって立っている。
昔と変わらない無骨な背中。
だけど、今日はどこか違った。
陽介が近づくと、桐生は振り返り、真正面から彼を見据えた。
「なあ、陽介。
お前、本当に……正しいと思ってるのか?
——この世界も、MEも。」
陽介は一瞬、答えを詰まらせた。
胸の奥で、何かがきしむ。
「……ああ。
俺が、未来を創った。
だから……信じてる。」
かすかな自信と、痛いほどの虚勢。
桐生はそれを見抜いていた。
「僕」じゃなくて、「俺」か、、。
そして、重たく言葉を落とす。
「でもな……。
俺の兄貴は、ME開発中の事故で死んだんだ。
しかも、その事実は——隠蔽された。」
陽介の顔から、血の気が引いた。
「……お前の、未来って何だ。
誰のための未来なんだよ、陽介。」
夜風が、ふたりの間を切り裂く。
答えられない陽介。
握り締めた拳。
震える喉。
——友情の亀裂が、静かに走った。




