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光が差した世界
ー数年前ー
世界が大気汚染によって滅亡の危機に瀕していた時代、
一人の若き科学者が立ち上がった。
彼は20歳の若さで、「ME(Maguma Energy)」の基礎理論を完成させた。
その理論の完成までに要した期間は、わずか5年。
圧倒的な影響力と技術力をもって、彼の名とカリスマ性は瞬く間に世界に轟いた。
地熱を利用した高効率エネルギー「ME」は瞬く間に世界中へと普及し、
いまやすべてのライフラインを支えるインフラとして定着している。
未来都市「I」。
そこに彼の名を知らぬ者はいない。
そう、彼こそが——
神谷陽介。
“世界を救った男”である。
しかし。
彼自身が、その代償の重さに気づくのは、まだもう少し先の話である。