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「過去か未来か」
黒崎は、ゆっくりと剛に近づいてきた。
コートの裾が風に煽られ、夜の空気に鋭い緊張感が走る。
「君の兄も、犠牲になった。
——それでも、神谷陽介を信じるのか?」
「っ、、、、」
剛の表情が引きつる。
思い出したくもない過去。
陽介と共に走った青春の、裏に隠されていた血の匂い。
「陽介は……救ったんだ。世界を……美沙を……!
俺だって、信じたいに決まってんだろ!!」
「君が信じたいのは、神谷陽介か。
それとも——
あの頃の、何も知らなかった自分たちか?」
黒崎の言葉が、胸に突き刺さる。
剛は拳を握りしめた。
「いいか、桐生剛。
このまま何も変えなければ——
君の知っているこの世界は、あとわずかで終わる。」
黒崎は、コートの内ポケットから小さなデバイスを取り出す。
青白い光が、剛の顔を照らす。
「これは未来の記録だ。
見たければ、受け取れ。」
差し出されたそれを、剛はためらいながら見つめた。
——これを手に取れば、戻れないかもしれない。
——でも、このまま知らないふりをしていられるのか?
剛の喉が、ゴクリと鳴った。




