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「忍び寄る影」
町に起こる微細な異変——
一部の植物の異常な成長、空気のわずかな濁り、電力網の微細な乱れ。
人々は誰も気に留めないような現象を、桐生剛だけが見逃さなかった。
陽介との酒の席で聞いた、あの"違和感"。
それを裏付けるかのように、街は静かに、しかし確実に変わり始めている。
桐生は単身、各地のデータセンターや環境モニタリング局を訪れ、
古い知人たちのコネを使って極秘データにアクセスし始めた。
「これは……偶然なんかじゃない」
ある晩、桐生はとある公園のベンチに腰掛け、手元の端末でデータを睨みつけていた。
グラフは小刻みに、しかし確実に異常値を示している。
ふと、背後に気配を感じた。
振り返ると、遠くの街灯の下に、一人の男が立っていた。
顔はよく見えない。ただ、その存在感だけが異様に濃い。
そして、男は何も言わず、ふっと姿を消した。
桐生は端末を胸に抱えながら、静かに確信する。
——これはただの異変じゃない。
——何者かが、確実に動き始めている。
それが誰なのか、今はまだわからない。
だが、胸騒ぎだけは、日に日に強まっていった。




