「外部からの警告」
陽介は街の喧騒を背に、無意識に歩き続けていた。
周囲の人々の声が耳に入るものの、彼の心は静まり返っている。
桐生の警告、そして何より自分が感じていた微妙な違和感。
あの夜からずっと、その不安が陽介の胸に重くのしかかっていた。
「ME(Maguma Energy)――これが世界を支えている。これがなければ、すべてが止まる…」
陽介は無意識にそう呟きながら、街を歩き続けた。
彼の頭の中では、MEの供給が止まるという考えが何度もよぎる。しかし、それはあまりにも大きすぎて、現実味がない。
自分の手がけた技術、そして自分が世界を救った英雄として築き上げたインフラ。それを止めるという選択肢は、あまりにも恐ろしいものだった。
だが、桐生の言葉が心に残る。『何か、感じるんだ。大きな波紋が広がりそうな予感がする』。
そして、少し前から陽介自身が抱いていた「これはおかしい」という感覚。
何かが、この世界に歪みを生じさせている――その兆しが確かにある。
陽介は手を口元にあて、立ち止まった。
その時、ふと視界の隅に、何か動く影を感じた。
視線を向けると、目の前に黒崎一真が現れていた。
黒崎は、どこか冷徹な視線を陽介に向けながら、すれ違う瞬間にその言葉を放った。
黒崎「MEの供給を今すぐ止めろ」
その言葉が耳に届いた瞬間、陽介の心臓が跳ね上がる。
予想もしなかった言葉に、陽介は一瞬動きが止まる。
「――な、何を…?」
黒崎はそのまま歩みを続け、振り返ることなく答える。
黒崎「今すぐだ。君がこのままMEを供給し続ける限り、終わりは近い。未来を守りたければ、今すぐにその手を止めろ」
陽介は一瞬、言葉を失う。
その背中が遠ざかるのを見送りながら、彼は目を閉じて深く息を吐く。
黒崎が言うように、MEの供給が止まるという選択は、それだけで世界を危機に陥れることになる。
しかし、黒崎の言葉がどうしても引っかかる。
「どうして、あの男が…」
陽介は自分に問いかけ、また歩き出した。
彼の胸中では、まだ答えが見つからない。
だが、黒崎の言葉が確かに彼の心に深く刺さっていた。
そして、その日から陽介の中に新たな不安が芽生える。それは、MEを供給し続けることの意味、そしてそれを止めるべきなのかという選択肢が、彼の中で闇のように広がっていくことを予感させていた。




