表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

目を覚ましたその場所は…

読みに来てくださりありがとうございます。温かい目で見てくださると嬉しいです。


目を覚ますと、俺はどこかの暗い城の中にいた。



——―真っ暗だ。




 天城蓮が意識を取り戻したとき、そこにあったのは闇。まるで奈落の底に放り込まれたような、静寂と重圧。だが、次第に瞼の奥にぼんやりと赤い光が差し込んできた。瞼を持ち上げるように目を開くと、そこに広がっていたのは——見たこともない異形の空間だった。



 漆黒の石材で築かれた天井は高く、赤黒い炎を灯した燭台が、等間隔に並んでいる。


 壁には奇妙な紋様が刻まれ、どれも脈動するようにうごめいていた。空気はどこか湿っていて、だが嫌な感じはしない。むしろ肌に馴染むような感覚すらある。


 「……どこだ、ここ……?」


 蓮は身を起こし、周囲を見渡した。そこは巨大な玉座の間だった。床は光を反射しない漆黒の石で敷き詰められ、頭上のシャンデリアは血のようなルビーで彩られている。部屋の先、玉座に座していたのは、漆黒の衣に身を包んだ女——――。


 「…………目覚めたようね。ようこそ、“我が魔王軍軍”へ」


 目の前には、一人の女性。長い白髪、妖艶な微笑み、

――そして背中から伸びた漆黒の翼。


その声は深く、そして妖艶。まるで魂に直接響くような不思議な響きだった。蓮は立ち上がり、警戒心をあらわにした。


 「私はルシェリア=ヴァル=ネーヴェ。魔族を率いる王――魔王……と言った方がわかりやすいだろうか」


 


 蓮は息を呑んだ。現実感がない。だが、胸の内で何かが騒いでいた。ただの驚きでも、恐怖でもない。もっと根源的な……何か。


 「……なぜ俺を?」


 「理由は単純。我が軍には“適格者”が必要だ。そしてお前には……その素質がある。魔族としての資質がな」


 その言葉に、蓮の背筋が凍った。


 「俺が……魔族?」


 「ふむ、そう思うのも無理はないな。だが、我らが解析したところ……お前の魂には、魔族由来の因子が深く刻まれていた。 

人の世界で生まれたとしても、お前は“混じり者”だ。

人でもなく、完全なる魔でもない……。 だが、それこそが貴重なのだ。 そして、お前がこの空間に違和感を覚えぬのも、その魂が共鳴しているからだ」


 蓮は、知らずに胸元を押さえた。そこには、いつのまにか刻まれた魔紋が赤く光を帯びていた。


 「感じるだろう、その脈動を。魔王城の魔力が、お前の内側と共鳴している証拠だ」


 たしかに、体の奥底に何かがある。まるで魔王城そのものが、自分を歓迎しているかのような感覚だった。


 そのとき、玉座の間の扉が音もなく開き、二人の魔族が姿を現した。一人は黒き翼をもつ青年。もう一人は蛇の下半身を持つ女。どちらも、異形でありながら神々しさをまとっている。


 「ルシェリア様、この者が例の“適格者”ですか?」


 「うむ。紹介しよう。天城蓮、彼らは我が軍の13幹部の一部。左が深淵の空賊レヴァント、右が毒蛇の巫女ミュラ。いずれも、お前の同胞となる者たちだ」

 


 蓮はまだ心の整理がつかないまま、二人を見つめた。だがその瞬間、奇妙な感覚が走った。二人の“魔”が、自分の中の何かと接続される感覚。まるで同じ回路を持っている者同士が、自然と認識しあうように。


 「やはり……こいつは“こちら側”の者だな」


 レヴァントがそう呟いた。


 「自覚がないだけで、魂の質は完全に魔族よ。しかも相当高位の。下手をすれば……我々よりも、ね」


 ミュラの目が細くなる。蓮はたまらず口を開いた。


 「俺は……人間……、のはずだっ……、」


 「人の世界では、魔の因子は封じられていた。だがここでは違う。魔王城は魔力の源。お前の“本質”を明らかにする場所なのだ」


 セレネが立ち上がる。その歩みは静かでありながら、確かな威圧感があった。


「あなたは、勇者として召喚されたのではない。むしろ魔族向きのようだ。ステータスを見てみるといい」


 俺は混乱しながらも、自分のステータスを確認してみた。すると、そこには驚くべき事実が書かれていた。




――――――――――――


名前:天城あまぎ れん

種族:人間(異世界転移者)

所属:魔王軍直属 特別戦力

称号:異界の来訪者/魔王の選びし者

年齢:17歳

レベル:1(成長限界値 不明)

HP:200

MP:300

攻撃力:25

防御力:15

俊敏性:22

知力:35

幸運:???(測定不能)

スキル:


・《世界適応》

▶︎異世界の環境に即時適応し、潜在能力を最大限に引き出す


•・《心核の共鳴》:深く繋がった者との感覚共有

▶︎ 魔王の力に反応し、成長率と能力が飛躍的に上昇する(※魔王ルシアとの接触時に発現)


•深淵の剣王アビス・ブレイドロード

▶︎ 天城の感情・罪・記憶に反応して“進化する”唯一の魔剣。

この剣は彼の影より生まれ、彼が成長するたびに姿も力も変化する。



••《収納》:無限収納空間を開閉可能


・《???》:現在封印中。特定条件で解放予定



特徴:

・魔族・魔王軍からのみ影響を受ける特殊な存在

・召喚時、通常の英雄召喚とは異なる魔法陣が使用された形跡あり

・成長速度は常識外れ。スキル枠の大半が「未覚醒」としてロックされている

・本人に戦闘経験は乏しいが、直感力と反応速度が高い


備考:

召喚した魔王ルシア本人が“運命の鍵”と評する存在。彼がこの世界に与える影響は、まだ誰にも読めない――。


――――――――――――




 どうやら俺は、魔族としての適性が高いらしい。しかも、スキルを見る限り、ただの魔族ではないようだ。



まだ、何もわからない。

だが、心のどこかで——この場所の空気が、自分の“居場所”だと訴えかけていることは否定できなかった。


 「適格者は居場所が無い者,闇を抱えているものが多い。突出した戦闘能力や技能を持っている事も相まって、この世界では忌み嫌われている」


「俺に……、戦いの才能があると……?」


「技術型の場合もあるが、お主の場合は戦闘型であろうな。――――1つ勘違いを訂正しておこう。私はお前に戦いを無理強いするつもりはない。あくまで、保護して居場所を与えるだけだ。本人の意思を尊重する。それが魔族を統率する王としての義務だ」


「居場所を…………」


考えてみれば、居場所など家族を事故で亡くしたあの時から――――無かった。


「もし、出て行くとしても止めはせん。先ほども言ったが、本人の意思次第だ。だが――、私はお前に興味がある。一緒に暮らしてみないか?」


そう言って差し出された手は、まるで戦など知らぬかのように滑らかで白く、細くしなやかだった。


「――――お願いしますっ……!」

魔王と言うのは、日本では恐ろしい存在として描かれることが多い。だが、しかし――――目の前にいる人は自分にとっての居場所のような安心感を感じる。



その瞳は優しくて――――――



「私のことはルシアと呼べ。お主の名は?」


「天城蓮です」


そう言って差し出された手を取り、しっかりと握る。


「――好きなだけいるといいさ。よろしく頼むぞ、天城蓮」


そう言ってルシアが差し出した手は、驚くほど柔らかく、滑らかだった。まるで戦場で剣を振るったことなど一度もないかのような、繊細な手。


蓮は一瞬ためらいながらも、その手をそっと握り返す。互いの手が触れ合う瞬間、妙に鼓動が速くなったのを感じた。


「これからよろしく頼む」


微笑むルシアの表情には、威厳とともにどこか人懐こい温かさがあった。だが次の瞬間、その柔らかな手が蓮の手をぐっと引いた。


「えっ──」


不意を突かれた蓮の身体がバランスを崩す。そのまま引き寄せられ、気づけば彼女の胸の中に抱きしめられていた。頬に当たるのは長い銀髪、そしてふんわりと香る花のような匂い。


「……ちょ、ちょっと待って、ルシア?」


「わ、わかってる! でも……今のうちに、こうしておきたかったの!」


魔王とは思えないほどに早口でそう言ったルシアの顔は、真っ赤だった。先ほどまでの威圧感はどこへやら、まるで年頃の少女のように戸惑い、恥じらいの混じった眼差しを向けてくる。


蓮は抱きしめられたまま、困惑を隠せずにいた。まさか、初対面で握手した直後にハグされるとは思ってもみなかった。しかも相手は、魔王なのだ。


「なんでいきなり……?」


「だって、ずっとあなたと会えるのを楽しみにしてたんだもの……。会って、話して、握手したら……なんだか我慢できなくなって……」


ルシアの声はだんだんと小さくなっていく。彼女の細い指が、蓮の背中をぎゅっと掴んでいた。力は強くない。だがその仕草には、言葉以上の想いがこもっているように感じられた。


しばらくの沈黙の後、蓮はゆっくりと息を吐き、軽く苦笑した。


「魔王って……意外と、かわいいんだな」


「なっ……!」


ルシアの顔がさらに赤くなる。その表情を見た蓮は、ようやく緊張がほどけたように肩の力を抜いた。


こうして、天城蓮と魔王ルシアの奇妙な関係が始まったのだった。





ここでなら――――俺を必要としてくれる…………“誰か”がいるなら


胸の奥に残る、詩織と高嶺の悲痛な叫びが頭をよぎり、一瞬顔を歪めそうになるが、異世界で“誰かのために生きる意味”を探し始める――



 


 


 


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をしていただけると、執筆の励みになります。


ブックマークもして貰えると本当にうれしいです。


よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ