出会い2
それは…いつも通りグループで話していた時だった
「もぉ、波瑠くんカッコイイ♡」
そんなことを凜々亜が毎日言っていて、うんざりしていた、そんな時だ
「凜々亜ちゃんって、制服の着方センスあるよね…!」
唯なりに、凜々亜を褒めつつ、話題をつくろうとしたのだろう
それが凜々亜の逆鱗に触れることだとは知らずに。
「えー、あー、ありがとー、けど唯ちゃんがそんなこと言うの珍しくない? ウケる」
そんなことを言いながら凜々亜がクスクスと笑っていた
正直、私はそこでもう嫌気が差していた
あぁ、始まるんだ
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「せんせー、桃瀬さんが教科書破れちゃったみたいでーす」
凜々亜が唯を虐めるようになった1日目、唯はまだ気づいていなかった
「カバンの中で破れちゃったのかな…」
なんて言っていた始末だ
そこで私は大人も子供も同じだということを再認識した
毎日毎日、凜々亜は唯が孤立するように仕向けている
私が幾ら唯を守っていても…きっと、凜々亜のバックにいるのは生徒会メンバーだ
生徒会が何故そんなことをしているのかは知らない
知りたくもない
だけど…私はそこで殺意が湧いていた
だが、流石に殺す訳にもいかないのでぐっと殺意を押し殺していた
しかし、凜々亜が初めて唯の腕に大きなアザをつけた時、私の中で何かがプツンと切れた
その後、私は放課後すぐに唯話しかけた
「私についてきてください」
そう言うと唯は驚きつつもすぐに支度をし、とある人の部屋に向かった
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私はその人の部屋の前に着くと、すぐにチャイムを鳴らした。
その人の名前は紫以奈 流々(しいな るる)。
一度も学校に登校していないクズ野郎だ
けど、それなりに理由があるのは何となく察している
例えば…中学時代に虐めにあっていた、とか
とりあえず話を聞こう
そんなことを考えていると案外すぐに流々は出てきた
「何か用ですか…先生……って、誰?」
急に押しかけてきた私達に動揺を隠せないようだがそんなことはどうでもいい。
「紫以奈くんは何故不登校に?」
「……初対面の人にそれ聞く? 普通。 ……お察しの通り、虐められてたからだけど、それが何?」
私が話を進める中、唯はまだ少し困惑していた
無理も無い。
急に不登校の男子生徒のもとへ押しかけたのだから。
そんな唯を見かねたのか、それとも気まぐれかは分からないが、流々が「入ってきて」と言うので有難く上がらせてもらった。
以外にも部屋は清潔で、唯も安心したようだった
そこで私は話を進める
「紫以奈くんは、虐められていた時……いえ、どうやって復讐しましたか?」
「……復讐代行を使った」
「そうですか、ありがとうございました」
私は聞きたかったことはある程度聞けたので立ち去ろうとする
あ…1つ忘れていたことがあったな
「紫以奈くん…いえ、もう流々くんでいいですね? 流々くん、連絡先を教えてください、虐めについて相談したい事があります」
唯はまだ虐めに気づいていない様子だったので、小声で言っておいた
そうして、私と流々は連絡先を交換し、部屋を出た
だが唯は、私が虐めについて相談したい、と流々に言っているのが聞こえていたようだった
「なぎさちゃん、大丈夫?」
などと、何度も言われた
唯の方が心配だ
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ある日、唯が一人で学食に行こうとしていたので駆け寄りに行った
「唯ちゃん、一緒に食べましょう!」
前までだったら悦んで私と食べようとしただろう、なのに唯は何も言わない。
表情も一切動かさない。
そんな唯を見かねて何度も話しかけたが、何も言わない。
諦めた方がいいか…なんて考えがよぎったときだった
「私と話してたらなぎさちゃんまで虐められるから。 分かったら早く退いて」
そんな冷たい言葉だった
完全に壊れてしまっている…
「そんなことしません。 退きません。 絶対にです! 私は友達を守ります、初めてできた大切な友達を守ります」
驚いた、こんな綺麗事、私は嫌いだったのに
「全部、全部捨ててまで私を守る価値なんてないよ。 生徒会入りが決まったなら尚更だよ、それに…学校を卒業する為にも他のクラスの子達を退学にさせないと…私は絶対足でまといになる。 だからせめて迷惑がかからないように居ないように振る舞うから…だから私なんか守らないで」
「それが、本心ですか?」
私は思ったことをそのまま唯にぶつけた
すると唯は泣き出してしまった
嫌われても構わない。
だから、本心を聞きたい
「復讐…したい…っ……手伝って…」
唯の言葉からそんな言葉が出てくるとは思わなかったが、それが唯の本心なら喜んで受け入れよう
「復讐の時間ですね…」
私が初めて人を知ろうと思った日だった。
5話
「彩雨さん、今日から私も生徒会、という認識で間違っていないでしょうか?」
「ウン、モチロンだよ! 早く生徒会室に行かないと、生徒会長に怒られるヨー? 早く行こ!」
「あ、はい、了解です」
……生徒会に必ず凜々亜の味方をしている奴がいる。
そいつに証拠を叩きつけて退学にしてやる…
唯を虐めたこと、後悔してもらう
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「初めまして、七色なぎさと申します! 生徒会には、誰かのためになりたくて入らせて頂きました! よろしくお願い致します…!」
そう言いながら私は深々とお辞儀をした
まぁ、無難な自己紹介をしたし、あとは唯を虐めている奴を見つけ出すだけだ…
「えっ?! なぎさちゃん?! ウソでしょ?!」
ん?
騒がしいな、私の名前を呼んで騒がないで欲しいのだが…
「あ、あたし、七色咲! 憶えてない?」
…?
覚えていないな
私は一度見たものは記憶するんだ、覚えていないということは知らない人だろう
「すいませんが、記憶には…」
「そ、そっか! ごめんねぇ…」
「騒がしいですね。」
「あーっ!! 生徒会長! ごめんごめん!」
「…改めて、生徒会長の白甘 知奈です。覚えておくように。」
「はい、分かりました」
「やほ! なぎさちゃん!」
この声は…
「新村くん?」
「うん! 僕だよ! 」
蒼も生徒会だったのか…?
「あ、あ、あ…蒼くん?! 今日も可愛いねぇ、お菓子食べる? それとも成績上げる?」
え…?
生徒会長…?
「あ、あの…彩雨さん、これは一体…?」
「アー、生徒会長は重度の可愛い男子好き……ショタコン、ナンダヨ!」
「そ、そうなんですね…」
まぁこれはこれで弱みか…?
「あー、すいませーん、遅れましたぁ…♡」
なんだ? この甘ったるい声は…
何処かで聞いたことがあるような…
「こんるあ〜♡ 遅れちゃってすみませ〜ん♡ けどこの可愛い顔に免じて許してくださぁい♡」
あ…クラスメイトの…
「七騎さん?」
「えーっ?! 覚えてくれてたのぉ? なぎさちゃんって呼んでいい?!」
「え…まぁいいですけど…じゃあえっと…私は楼々愛ちゃんと呼びますね!」
「うんうん! そう呼んで!」
楼々愛、か…何処ぞのVTuberにいそうな名前だな。
というか…何故楼々愛は私服なんだ?
「あの…答えたくなかったら大丈夫ですけど…楼々愛ちゃん、何故私服なんですか?」
「え? あー、知らない? るるちゃん、お父さんがこの学校の理事長と仲いいから推薦入学したから私服でもいいの♡」
「そうなんですね! 興味深いです!」
「えー、るるちゃんも、なぎさちゃんにめちゃ興味ある♡」
「そうだなー、例えばぁ…♡」
そう言いながら楼々愛は私に近づき、耳元でこう囁いた
「なぎさちゃんは本当に良い子なのか…とかぁ…♡ あとはぁ…過去に何があったのか……とか気になるなぁ…♡」
そう、この甘ったるい声を私は知っている
「貴方、まさか……」
七騎楼々愛。
この学校の理事長と父親が仲が良い。
そして……楼々愛は私のお父様……父親、つまりマフィア組織の幹部だ
あの時、確かにこう言われたのを憶えている。
『るるあと、楽しいこと、しよっか?♡』
あぁ…気持ち悪い
気色悪い
最悪な気分だ
『ふふっ、ビクってしてて可愛い♡』
う…ぁ…っ……
「……生徒会長、すいませんが今回はこれで失礼します……」
「……わかりました、さようなら、二度と来なくても良いですよ」
「えぇ、生徒会長、酷〜い♡」
一刻も早くあの甘ったるい声から逃れなければ…
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私は落ち着くために図書室へ向かった
「はぁっ……ん……最悪だ…」
「あの…どうしましたか?」
また聞いたことがあるような声…
「あの……わたし、黒院 蘭です…図書委員やってます……」
「え? あ…はい、こんにちは、黒院さん」
黒院って…あの赤点ばっかりの?
……まぁいい
「べ、勉強…教えてくれませんか?」
「あー…えっと、もちろんいいですよ!」
「あっ、ありがとうございます…! えっと…お名前は?」
「私は七色なぎさです! よろしくお願いしますね!」
そう言いながら私は手を差し伸べた
「は、はい…」
蘭は、私の手を取ってくれた