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花畑


'心配する必要なんてなかったわね。無駄なことしたわ'


私は巨大カメレオンの大量の死骸を見て、遠慮なくさっさと命令すればよかったと後悔する。


アスターは実践経験がほとんどないため心配していたが、それは杞憂だった。


それもそのはず。


アスターは魔物より強い生物と毎日手合わせしているのだから、例え実践経験がなくても、余程のことがない限り負けることなどあり得ない。


「お嬢様」


アスターは巨大カメレオンを全て倒してから話しかけた。


「なに?」


「少し離れたところに誰かいます」


巨大カメレオン全て倒しても花畑の魔法は解けなかった。


と、なるとこの魔法は他のものが作ったもので、巨大カメレオンをたちはそのものを手下となる。


「捕まえろ」


「はい」


そう返事をするとアスターは駆け出す。


私はここで帰ってくるのを待つ。


一緒に行ってもよかったが、2人で行くよりアスター1人で行かしたほうが確実に捕まえられる可能性が高いので、足手纏いにならないようここにいる。


アスターが帰ってくるまでの間、呪いの模様がないか確認するが、どこにもない。


「もしかして、ここじゃないとか?」


'いや、そんなはずはない'


私は数回首を横に振り、今思ったことを頭の中で黒く塗り潰す。


ちゃんと探したわけでもないし、花畑は広い。


どこかに必ず呪いの模様が付けられているはずだとそう自分に言い聞かせる。


'魔物がいる時点で、ここには何かあるはずよ。森の時もそうだったじゃない'


私は森で黒い霧に襲われたことを思い出し、巨大カメレオンがいたのはきっと同じ理由だからだと予想するもあくまで予想は予想で、心配になり、アスターが戻ってくるのを待つことなく呪い探しを始める。




「……何をしてるんだ?」


アスターはこちらを見ていた者を捕まえ戻ってくるが、ローズが消えていて何かあったのかと焦って探していると、今度は全身に花びらを引っ付けた化け物になっている姿を見て呆れてしまう。


その姿を見たアスターは一体どの姿が本当なのかわからなくなる。


悪魔のような笑みを浮かべ容赦なく痛ぶるのが本当なのか。


それとも困っている人を助ける姿が本当なのか。


誰も知らない知識で、人々の生活を豊かにし幸せにするのが本当なのか。


化け物の姿になろうと、恐れず突き進むのが本当なのか。


'一体どれが彼女の本当の姿なのだろうか。いや、きっとどれも彼女なのだろう'


アスターはそう受け入れようとするが、どうしても普段容赦なく痛ぶられているからか、自分たち以外に優しくするローズに不満が湧き上がる。


だがすぐに我に返り、今はそんなことを考えている場合ではないと、捕まえた者を引き摺りながらローズに近づいていく。


「お嬢様」


ローズの目の前に立ってから声をかける。


「……」


私は呪いの模様探しに夢中で、声をかけられるまでアスターに気が付かなかった。


ゆっくりと顔を上げてアスターを見るも逆光で顔が見えなかった。


「何してるんですか?」


アスターは近くでローズを見ると顔と服が土で汚れ、髪がボサボサになっていることに気づいた。


いつもの姿と大して変わらないが、ここはスカーレット領ではない。


自分の領地なら誤魔化し用もあるが、他の領地となると話は別だ。


男爵家だろうと貴族なのには変わりはない。


もし、こんな姿を人に見られ噂にでもなったら社交界で笑いものにされる。


そう思ったアスターは気づけば、ローズの顔についた土をはらおうと手を伸ばしていた。


「ああ。ありがとう」


私は差し出された手を掴み立ちあがってから先ほどの質問に答えようとするが、アスターがいきなり「うわああー!」と叫びながら手を払ったせいで、私はバランスを崩して後ろに倒れてしまう。


'うわぁ。綺麗'


倒れた衝撃で花びらが舞い、空を背景に何種類もの花びらを見るのはとても綺麗で目を奪われてしまった。


'いや、違う。そうじゃないでしょう'


私はすぐに我に返り、スッと立ち上がってアスターを見下ろす。


「おい、こら。今のは一体なんだ。ボケ」


「……」


今のアスターには何も聞こえなかった。


それどころではなかった。


自分が今、どれほど危険な状況なのか把握できないほど困惑していた。


'私は一体何をしようとして……!'


無意識にローズの顔に触れようとしたことを思い出し、一気に自分がわからなくなる。


あんな悪魔のような人間を女性扱いするなんて、と。


ローズに手を握られ、ようやく我に返ったが、もし握られてなかったら、そのまま顔に触れていたと思うと自己嫌悪に陥ってしまう。


そのままアスターは自分の世界に入ってしまったため、何度も話しかけられていたのに気づかなかった。


「おい。僕ちゃん。もしかして、私を無視してるのかな?いい加減お返事してくれないかな」


地面に手をついて深刻そうな顔をするアスターに何度も話しかけるが、反応はなく全て無意味に終わった。


「えー。ちょっと嘘でしょう。もう、怒らないから。いい加減戻ってきてよ」


さっさと呪いの模様があるかどうかの確認をして、次に行きたいのにアスターの意識が戻ってこないと1人で確認する羽目になる。


それが嫌で、さっきのことは許すから戻ってこいと言うも、聞こえてないのかまたしても反応がない。


「……まじか」


私はこれ以上やっても無駄だと判断し、腹を括って呪い探しを再開する。


呪いは花畑の真ん中の土に大きく描かれていたが、見つけるのにに時間以上かかってしまった。


アスターは結局、意識が戻らず私1人で探した。


アスターの意識が戻ったのはそれから10分後だった。


戻った方法は人には言えない方法でやったためその方法は秘密にさせてもらう。


まぁ、簡単に言えばアスターが地獄のような痛みで目を覚ましたと思ってくれたらいい。


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