報告 3
'はぁ。まじで、クソ面倒なことになった'
ルネの言葉を聞いて、私は右手で目元を覆いながら深くため息を吐く。
'仕方ない。腹を括ってやるか'
元の世界なら絶対に起こり得ない状況に陥ったからか、それともどの世界でも他人の命を簡単に奪う者たちへの怒りからかはわからないが、とにかく腹が立ち、どんな手を使ってもフリージア領を助け、呪いなんてふざけたことをした者たちへ後悔させてやると、久しぶりの獲物に高揚する。
目をギラギラとさせて、フッフッフッと笑い出した私にアイリーン以外の男たちは一斉に壁際に避難する。
ルネに関しては間近で見た恐怖からか、壁にへばりついてしまった。
私が「ルネ」と名を呼ぶと「はい」と返事をするも怖すぎて何度も瞬きをしてしまう。
「詳しい説明はしなくていいわ。あんたは、この呪いを解けばいい。できるわよね」
説明を聞いたところで、自分に解けるわけではない。
それなら、全部任せて終わった後にどういう仕組みだったのか聞いて、次回にいかせばいい。
そう思い、ルネに解けるか尋ねた。
「もちろんです」
ルネは短い背筋をピンッと伸ばして首を縦に振りながら返事をするも、心の中では私の表情を見て「断る選択肢なて最初からくれてねーじゃん」と叫ぶ。
ルネはもし断ってたら、絶対に酷い目に遭わされていた、と確信していた。
その予想は当たっていて、もし断っていたら、ハリセン叩きの刑に処されていた。
「なら、この件はルネに任せるわ」
現時点での最優先は男性の呪いを解くこと。
本当ならシオンも一緒に呪いときをさせたかったが、カルアの呪いと魔物の件があるためルネ、1人に任せるしかなかった。
応援が到着するまで、まだ日にちはかかる。
厳しい戦いになるが今は耐えるしかない。
「わかった」
ルネは面倒くさいと思いながら、男性の呪いを解けなければ、褒美のスイーツが食べられなくなるので、絶対に解いて見せると気合いを入れて返事をする。
「とりあえず、一旦この話は終わりにして、次は私たちの報告をするわ」
私はそう言うと、森での出来事を話した。
黒い霧に襲われたこと。
木に呪いの模様が描かれていたこと。
それがカルアの呪いだということを話した。
その後はアスターとシオンと合流した話だ。
それはさっきシオンが話したので、わざわざ2度する話でもないので省略する。
全班の報告が終わった後、私はみんなの明日の役割を言ってから会議を無理矢理終わらせた。
疲れたせいで眠くて限界だったからだ。
※※※
「じゃあ、昨日言った通りの役割でみんなお願いね」
私がそう言うと各々返事をする。
朝食を食べ終わり、行動を開始する。
昨日と役割が変わったのはアスターとルネだけで、それ以外は一緒だ。
シオンには悪いが、最優先は呪い関連をどうにかすることだ。
魔物は最悪、シオンに本気を出させれば問題ない。
後々、面倒なことにはなるが、そうなったらそうなったで上手く丸め込めばいい。
こればっかりは運だ。
天に祈ったところで変わりはしないので祈らない。
シオンを信じるしかない。
「さてと、私たちも呪い探しをするとしましょうか」
「はい」
今日は昨日行った森とは真逆の方から探すことにした。
昨日、呪いをどこから探すかアスターと相談したとき川から探そうと決めたあとに、アイリーンにフリージア領内の水は問題ないので探す必要はないと言われた。
但し、領地全体が呪われたので飲める水ではなくなっている。
それを聞いた私は水の妖精王は水に関したらなんでもわかるのだと感心した。
アイリーンのおかげで、川や湖を探さなくていいのでかなり助かった。
なので、川の次に最も怪しい花畑から探すことにした。
今から行くところは土地が呪われているのに、なぜか影響を受けてないという。
侯爵曰く、美しい花々が咲き乱れているらしい。
他の場所は汚れたり、臭かったり、荒れていたりと最悪なのに、花畑は美しくていい匂いがするなど怪しすぎるので調査するしかない。
ただ初めてくるところなので、簡単な地図を書いてもらい、その通りに歩いているが、肝心の花畑に一向につく気配がない。
2人共方向音痴でも、地図を読めないわけではない。
何かに阻まれているのか同じところをぐるぐると回り邪魔されているみたいだった。
「アスター」
私が名を呼ぶと同じことを思っていたのかアスターは「はい」と返事をしながら剣を抜いた。
「わかる?」
私は私たちの邪魔をしているのは魔物ではないかと思い、どこにいるかわかるかと聞くが、アスターは軽く首を横に3回振ってから「すみません。わかりません」と言った。
魔物の瘴気が至ところに撒かれていて、気配を感じるのが得意なアスターでも、これでは特定することはできなかった。
相手が隠れるのが得意なせいもあるだろうが。
「そう。なら、仕方ないわね。侯爵には許可は取ったし、焼き払おうかしら」
私はそう言うと地面に大きな炎の魔法陣を出現させる。
「お嬢様。見つけました」
そう言うとアスターは魔物の場所へと一直線へと向かっていく。
脅しが効いたみたいだ。
昨日、ルナにカルアの呪いは同時に破壊しないと意味ないと言われていたので、最初から今いる場所を焼き払うつもりなどなかった。
今のはただの揺さぶりだ。
効果があるかわからなかったが、魔物は動揺して魔力制限が一瞬乱れた。
その一瞬さえあればアスターなら見つけるだろうと思っていたので、賭けに出て良かった。
失敗したら、少しだけ周辺を燃やす方法をしていたかもしれない。
「そう。なら、あとはよろしく」
私はそう言うと魔法を消し、アスターが魔物を倒して戻ってくるまで地面に座って待つ。




