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報告


私は軽く咳払いをし、申し訳なさそうな顔を作ってからこう言った。


「アイリーン。もう一つ頼み事をしてもいい?」


「はい」


私は元気よく返事したアイリーンの頭とお尻に犬の耳と尻尾が見えた。


'男どもと違って、アイリーンは素直で可愛いわ。それに比べてこいつらは……'


私は後ろにいる3人を見てからため息を吐く。


人をゴミを見るような目で見たり、仕返しをしようとしたり、命令に背いたり、敬語を使わなかったり、と3人の私への態度が失礼極まりないのを思い出し怒りが込み上げてくる。



'今なんで私(俺様、俺)の顔を見てため息をついたんだ?'


3人はローズの自分を見る目がゴミを見るみたいな目をしていたことに気づき、今度はなんなんだと思う。


だが、すぐにどうでも良くなったのか、ローズはアイリーンに笑顔で話しかけた。


それを見た3人は「今の絶対要らなかった行動(やつ)だろ」と思わずにはいられなかった。



「ありがとう。疲れているのにごめんね。本来なら、アイリーンがやらなくていいことなのに」


私がそう言うと、アイリーンは首を横に数回振ってからこう言った。


「気にしないでください。ご主人様のお役に立てることが私の幸せなのです。ですので、謝る必要はありません」


それを聞いた私は数回瞬きをした後、スッと顔に力を抜きアイリーンに微笑む。


「ありがとう」


私はアイリーンの頬を撫でようと手を伸ばすが、今のアイリーンの体は手のひらサイズなので、結果的に体全体を撫でるような形になってしまった。


私はアイリーンが満足するまで撫でていようと思ったが、結構経っても飽きる気配がないのでソッと手を引っ込めると、彼女は残念そうな顔をしたと思った次の瞬間、いつも通りの顔に戻ってからこう言った。


「それで、ご主人様。もう一つの頼みとはなんでしょうか?」


「それはね、残りのスライムを全て回収して欲しいの」


「わかりました」


アイリーンは大量のスライムがいたから、全身スライム塗れになったのかと納得する。


スライムは小さいので倒しても体にかかることはほぼないのに、こんな風になったのは大量にいたからだとしか思えなかった。


アイリーンはスライムが薬になるということを知っているので、回収して欲しいと言われ、私がたくさんの人を救うためにそう言ったのだと思い、十分人助けしているのに、まだ人助けしようとする姿に感動した。


「じゃあ、行こうか」


アイリーン、1人だけに行けというのは違うので一緒に行こうと思いそう言ったが「私1人で行きますので、ご主人様はお風呂に入ってください」と残るように言った。


一日中、歩き回って疲れているのは顔を見たらわかるので、アイリーンは少しでも休んで欲しくて自分1人で行くと言ったのだ。


「わかった。ありがとう。スライムは海にいるわ。シオンが結界を張っているから場所はすぐにわかると思うわ」


せっかくの気遣いを無碍にするわけにもいかず、お言葉に甘えることにした。


それにアイリーンなら大丈夫だろう。


なんたって水の妖精王なのだから。


それにシオンが本気で作った結界なら破壊するのに時間はかかるかもしれないが、隠すためだけに張った結界なら問題はない。


そう思い、言った後シオンの方を見て「すぐ破壊できるよね」と目で語りかけると、シオンは肯定するかのように頷いた。


「わかりました。では、行ってきます」


そう言うとアイリーンは海へと向かって飛んでいった。


アイリーンが見えなくなってから、私たちは建物に入りお風呂に入った。





※※※





「それじゃあ、お互いに今日の出来事を報告し合いましょうか」


風呂から上がり、夕食を食べ終わってから話し合いを始める。


「じゃあ、俺たちからします」


シオンがスッと手を上げる。


自分たちは魔物と戦っていただけだし、大した報告でもない。


それに途中から探索班と一緒に行動したので、知らないのは治療班だけなので、自分たち退治班から言った方がいいだろうと思った。


「うん。そうね。2人からの報告の方がいいね」


途中から一緒に行動していたので、退治班は特に何か重要な話はないことはわかっている。


自分たちは呪いの件で重い話になるだろうし、治療班も領民の治療についてなので重い話になる可能性が高い。


この2つの後に話すのは流石に嫌だろうと思い、私はシオンに報告するよう言う。


「結論から言いますと、このフリージア領の周辺にいたセイレーンは全て倒しました」


'ほとんど主人のお陰だけど'


シオンは魔法でセイレーンの鱗を取り出し、どれだけの数がいたのかをわかりやすく教える。


「それと、山の中、街にいた魔物を倒しました」


今度はツノやキバを取り出す。


鱗だけで相当部屋が狭くなったのに、ツノ、キバが大量に出てきたので部屋がぎゅうぎゅう詰めになり、全員がくっつく羽目になった。


急いでシオンにどうにかするよう叫ぶと、空間魔法に保管してくれたおかげで、自由になり息をするのが楽になった。


「結構いたのね」


今私たちがいる部屋はローズの部屋に比べたら狭いが、それでも結構な広さである。


元の世界の子供部屋の3倍の広さだ。


その広さを埋め尽くす魔物の体の一部となると、想定していたより魔物がいて驚いた。


'よくこの数の魔物がいてあの人たち生きてられたわね'


フリージア家に仕える騎士や平民騎士がいるとしても、よく耐えれたなと不思議に思う。


「まだ、結構残ってます。俺たちはまだフリージア領の4分の1も回れてないからな」


フリージア領はスカーレット領より広い。


侯爵と男爵なのだから領地の広さがちがうのは当たり前だが、スカーレット家は特別で侯爵家並みの広さを誇る。


その理由は国の一番端で、さらに山と荒地ばかりだから。


今現在の開拓した土地だけで比べるとフリージア領の方が広いが、人が住めない、開拓してない場所も含めるとスカーレット家の方がほんの少しだけ広い。


なので、領地の至る所で人が住めるフリージア領を全て1日で回るというのは無理な話。


その点は最初からわかっていたので問題はない。


ただ4分の1程度でこの数の魔物となると、フリージア領はかなり危険な状況なのかもしれないと思った。


'思ったより空気が重くなったわね。大したことないと思って軽く流そうと思ってたのに……いきなり最悪だわ'


私は初っ端から重い話になったせいで頭が痛くなる。


その後もシオンは話を続けたが、その後のことは全部知っていたので考え事をするために聞き流していたが、巨大スライムの話になると、治療班が驚いた声を出していたのだけはなんとなくわかった。


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