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巨大スライム 2


「お嬢様」


アスターも2人と同じようにスライムも見たまま話しかける。


「なに?」


私もアスターの方を向かず、スライムを見たまま返事をする。


「どうやって倒しますか?」


私はアスターのその問いかけを聞いて、彼が何を聞きたいのかがわかった。


アスターならスライムなど脅威にならないが、この大きさのスライムとなれば話は別だ。


倒せないから心配しているわけではない。


ゲームをしないのでスライムの倒し方は知らないが、この世界でアスターがスライムを倒した時のことなら知っている。


スライムが破裂して四方八方に飛び散ると書かれていた。


もし、その内容通りにこの巨大スライムを倒したと仮定しよう。


どうなるかなんて簡単に想像できる。


巨大スライムが破裂して四方八方に飛び散る。


あたり一面がスライムだらけになり、掃除するのが大変になる。


最悪そのスライムが飛んできて、全身スライムになってしまう。


アスターは自分が倒せばそうなるとわかっていたので、どうすればいいか指示を貰おうと聞いたのだ。


それがわかったからこそ、私は悪魔の2人にいい方法はあるか聞こうとしたそのとき、ルネが炎の魔法で攻撃をした。


「まっ……!」


慌てて止めるも既に手遅れだった。


ルネの魔法は巨大スライムに直撃した。


そして破裂し、飛び散ったスライムが勢いよく飛んできて全員、全身スライム塗れになった。


私は半分以上吹っ飛んだスライムを見たまま、無言で隣で飛んでいたルネを掴む。


そのまま怒鳴り散らそうとするが、深呼吸して落ち着いてから笑顔で柔らかく優しい口調でこう言う。


「おい、こら、てめぇ。焼き鳥にしてやろうか?」


「……」


ルネは焼き鳥がどんな意味なのかわからなかったが「焼き」と言う言葉で焼かれた鳥の言葉だろうと想像して身震いする。


今は鳥の姿だが、本来は人の形をしているため身震いなどする必要などないが、契約してからずっと鳥の姿だったせいで愛着が湧いたからか、なんて冷徹なことを言うのだろうかと言葉を失う。


「ルネちゃん。黙ってないで、何か言うことがあるよね」


口をぽかんと開けて間抜け面で黙ったままのルネに遠回しにさっさと謝れと言う。


だが、ルネには聞こえてないのか微動だにせずただ口を開けて固まっていた。


'駄目だ。これは'


今のルネは意識が他のとこにいっていて、話しかけても無駄。


仕方ないので、ルネをそこら辺に落ちている小枝に紐で縛り付け、意識が戻るまで火で焼く。


獄炎の王だったルネに火など効かないだろうが、焼き鳥にしてやろうか、と口に出したとき焼けるのか気になり試してみることにした。


「お嬢様。何してるんですか?」


今まで黙ってみていたアスターは流石にこれは止めた方がいいかと思い声をかける。


「実験」


「実験ですか?それは一体……?」


「今の姿のルネは焼けるのか、焼けないのか、気になって」


「……確かに、それは気になりますね」


聞いたときはイカれてやがる、と思うも確かに鳥の姿の今ならどうなるのか気になり、隣で観察し始める。


アスターの切り替えの速さに隣で聞いていたシオンは「人間怖すぎる」とかなり引くも、少しして自分もどうなるか気になるなと思い、一緒に観察する。







'ん?なんか熱い?'


ルネは鳥のことを考えていたら、急にお尻が熱くなり、なんだと思い視線をお尻に向けると燃えていて驚きのあまり叫んでしまう。


すぐに消そうとするも、体がうまく動かずどうしてだと焦る。


だが、すぐに紐で括り付けられている際だと気づき解こうとするが、ボワッと大きな音が聞こえたと思った瞬間、火が一瞬で全身を覆った。


「ぎゃあああーっ!」


ルネは叫びながら紐を引きちぎり火を消そうと砂の上を転がって海へと入っていった。


その様子を黙ってみていた私たち3人は「この姿だと燃えるんだ」と呑気に思っていた。


「なんだ。一体何が、どうなって火が……」


ルネは海から出て、ヨチヨチと砂の上をあるいては状況を把握しようとして、すぐに気づいた。


ーー絶対主人が原因だ、と。


「何しやがる!」


ルネは思いっきり飛んでお腹にぶつかってやろうかとするが、固い何かに阻まれ攻撃は失敗した。


「攻撃がワンパターンね」


私はルネが怒り狂って突進を仕掛けてくると予想できていたので、ルネが海から出てきた瞬間、アイリーン直伝水の壁を作っておいた。


そのお陰でルネの攻撃を防げた。


普段のルネなら気づいただろうが、怒りで冷静さが失っていたのと、前回成功した経験があったのが重なって失敗した。


「というか、あんた。その姿だったら燃えるのね」


私は地獄の炎の方を統括していた悪魔の王様でも、鳥の姿だったら燃えるのだと思うと、面白くて馬鹿にしてしまう。


「そんなわけねーだろ!俺様は炎の使い手だぞ!たかが、火にやられるわけねーだろ!!」


'俺様は獄炎の王だぞ!'


ルネはプライドが傷つけられ叫ぶ。


「いや、何言ってんの。燃えてたじゃん」


「あれは……スライムのせいだ。本来なら燃えない!」


本当にルネが燃えた理由はスライムだった。


スライムが油の代わりになり燃えたのだ。


燃えたおかげでルネに纏わりついていたスライムはなくなった。


だから、もし全身スライム塗れでなければ燃えることはなかっただろう。


本来の姿だったら、例え全身スライム塗れでも燃えることはなかった。


だが、流れ的に言い訳しているようにしか聞こえない。


「うん、そうか。でも、燃えたことには変わりないけどね」


'もっとマシな言い訳をしなよ'


やっぱりアホだな、こいつ、と思いながら言う。


「……!」


'確かに!'


ルネは自分で認めた発言をしたことに気づき固まるも、すぐに主人が「その姿だったら燃えるのね」と言ったから否定しただけだと言い訳しようと口を開いたとき、何かが口を塞いだ。


すぐにそれが主人の手で、鷲掴みにされたからだとわかった。


'なぜ、また鷲掴みに?'


ルネはまた鷲掴みにされた理由がわからず、何度も瞬きをする。


「さて、ルネちゃん。海に入ったおかげで頭が冷えて冷静になれたでしょう。それで、私に何か言うべきことがあるの思い出せたかな?」


笑顔なのに、怖すぎる笑顔にルネは全身から嫌な汗が吹き出した。


謝罪しなければとわかっているものの、何がいけなかったのかがわからない。


そもそも謝罪するようなことをした覚えがない。


それにさっきのことを思い出すと謝罪するのはそっちだろと思い、フイッと顔を横にする。


「……」


ルネの行動に私は更に笑み深める。


'馬鹿だな。さっさと謝ればいいものを'


私の笑みが深まったのを見たアスターは、顔を横にしたせいで、そのことに気づいていないルネを憐れむ。


「ルネ」


私は優しく話しかけて、掴んでいない手でルネの頭を掴み、私の方へと向ける。


「てめぇ、まじで1年間ゲロマズ飯食うか」


笑みから般若顔に、優しい口調からドスの効いた声に変えて言うと、ルネはようやく謝罪をした。


「すみませんでした!許してください!反省してます!二度と逆らいません。だから、ゲロマズ飯だけは勘弁してください!」


ルネは手を合わせて、何度も頭を縦に振りながら、何度も謝罪をする。


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