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合流


「なぁ、なんであの2人こっちに近づいてきてるんだ?」


セイレーンの群れを倒し、鱗取りを終え顔上げるとローズとルネに気づいたシオンが顔を顰める。


隣で同じ作業をしていたアスターはシオンに話しかけられ、何がと思いながら顔を上げて前を向くと同じことを思った。


「さぁ?理由は全くわかりませんが、一つだけ言えます。嫌な予感がします」


遠くからでもわかるほどローズとルネの笑顔に悪寒が走る。


「それは同感だ」


シオンも2人の笑顔を見て嫌な予感がしたのか、はぁ、とため息を吐くとそのまま視線を下に向けた。


ローズとルネが近づいてくるたび、2人の心は重くなっていく。







「2人ともお疲れ様。もう、セイレーン倒したの?」


私は大量のセイレーンの残骸を見て倒し終えたのかと思う。


「いえ、まだです。何体か逃しました。さすがに海の中で戦うのは難しいので出てくるのを待ってました」


シオンなら問題ないだろうが、雪男という設定のため本来の力を使って退治すれば、正体がバレ、国王を騙した罪で罰せられるので、それを考慮した上で2人はセイレーンがまた攻撃してくるのを待っていた。


「お嬢様はどうしてこちらに?」


そんな時に2人が笑顔で近づいてきた。


アスターは今度は何をさせられるのかとビクビクしながら、目的を尋ねる。


「ああ、それはね。2人にこっちの手伝ってもらおうともって」


私はそう言ってニッコリと笑いかける。


「!?」


それを聞いたアスターとシオンは冗談だろという顔をする。


魔物はセイレーンだけではない。


他にもいる。


魔物と呪いを両立させるのはさすがに難しいと言いたいのに、笑顔で断るなよ、と圧をかけられたら何も言えなくなる。


せめてもの抵抗で返事はしないが、どうせ最後には従うことになるだろう、と2人ともわかっていた。


「あ、大丈夫。2人の言いたいことはわかってるから心配しないで。もちろん。ルネにも手伝わせるから」


'ん?お嬢様/主人は手伝わないのか?'


2人はルネだけ魔物退治をするみたいな言い方に引っかかる。


'いや、そうじゃない'


アスターは気になるのはそこじゃない、と思い質問する。


「あの、お嬢様」


「なに?」


「わざわざ役割を分担したのに、今更一緒にするのですか?」


アスターの言葉にシオンも隣で「そうだ」と言わんばかりに何度も首を縦に振る。


「そりゃあ、範囲が広すぎて2人だったら見つけるのに時間がかかりすぎるからよ。時間が経てば経つほど呪いは強くなり、フリージア領は荒れていくわ。そうなれば、いくら魔物を倒したところで、また集まってくる。そうなる前に呪いを見つけて破壊するしかないじゃん。でも、治療班を減らすわけにはいかないから、そうなったら選択肢は一つしかないでしょう。だから、魔物をさっさと倒して4人で仲良く呪い探ししましょうね」


「……わかりました」

「……わかったぞ」


そう言われた断ることなどできるわけがない。


2人は結局こうなるのなら無駄な抵抗などせず、さっさと承諾すればよかった、と思いながらも同じくらい、またしてもいいように丸め込まれ、次こそは絶対に断ってやる、と意気込む。


「じゃあ、さっさと片付けて。その間、私は呪いがないか探すから」


私がそう言うと3人はセイレーン退治をしようとするが、海の中のセイレーンをどう引き摺り出せばいいかわからず動けない。


本来の力を使えるなら、悩みはしないが、使うことを禁じられている以上は従わないといけない。


どうしたものかと悩んでいると主人に「何で動かないの?」とさっさと動け、と言わんばかりの目を向けられる。


「主人。セイレーンは海の中にいる。本来の力を使えば……」


ルネが使えば簡単に殺せると続けようととするが「使ったらゲロマズ飯1年よ」と遮られる。


'ああ、そうだった。正体がバレないよう力の制限をかけてたんだった。すっかり忘れてたわ。黒い鳥と雪男が海の中に身を隠しているセイレーンを倒すのは無理よね。周囲には私たち以外誰もいないけど、この2人が一定以上の力を使えばバレるわよね'


本当に面倒くさいな、とどうするか考えていると、つい最近買った魔法の本に書かれていた内容を思い出した。


「わかった。私が引き摺り出すから、そのあとはよろしくね」


私は早速、本に書かれた魔法を試す機会が訪れたことが嬉しくて口角が上がる。


'うわー。あの顔をするってことはセイレーン終わったな。絶対今から禄でもないことするぞ'


主人の顔を見た3人は同じことを思い、心の底からセイレーンに同情した。


「さてと、いっちょやりますか」


そう言うと私は片手で掴めるだけ石を掴む。


集中して石に魔法をかけていく。


かけ終わると石を海の中に向かって投げ入れる。


'石なんか海に入れて何するつもりだ?'


ルネは主人の行動が理解できず、イカれてるなと思った。


石に何か魔法をかけたのは見ていたのでわかるが、何の魔法かまでわからなかった。


それはアスターとシオンも同じで、一体何がしたいんだと思いながら黙って見ていると、突然海の中から、ドン、ドン、ドン、と次々と爆発が起きたのかセイレーンたちが水しぶきと共に姿を現す。


「お、うまくいった。よし、もう一回と」


私はさっきと同じように石に魔法をかけ、海に投げる。


今度はさっきより遠い場所に。


少しして爆発する、


セイレーンたちが姿を現す。


それを数回繰り返していると、セイレーンは浮かんだまま動かなくなった。


私が作った魔法の爆弾はかなり強力なため、水中で至近距離で喰らえば、助かることはほぼないだろう。


ただし、それは人間だったらの話でセイレーンでは大したことにはならないと思っていたが、実際は効果があり、3人の手を借りなくても終わってしまった。


「回収よろしく」


私は持っていた石にかけた魔法を解いてから、下に落とす。


「……はい」

「……ああ」


アスターとシオンは返事をしながら、こんな簡単に倒せるならさっきまでの自分たちの苦労はなんだったんだろうと何とも言えない気持ちになる。


ルネに関しては不細工な顔で大欠伸をしていたため返事ができなかった。


というか聞いてなかったので、返事をするどころの話ではない。




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