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フリージア領 3


ルネが嫌そうな顔で「なんだ」と言って私の横に飛んで来ると、ルネを見たフリージア領の人たちは「え?この黒いちんちくりんの鳥が魔法をかけるのか?」となんとも言えない複雑な気持ちになり、それが顔に出てしまう。


唯一、顔に出さなかった侯爵は私を信じると決めたからか、ルネの姿を見ても驚きもしなかった。


「主人。あいつら、いま俺を馬鹿にしたよな」


ルネは私にしか聞こえないよう小声で言う。


「したかもね」


曖昧な言い方をしたが「馬鹿にされてるな」とルネが横に来たとき心の中で「悪魔の王様が馬鹿にされてる」と笑っていた。


「俺様の力を知らしめてもいいか?」


ルネは絶対断られるとわかっていたが、もしかしたらとほんの少しの期待を込めて尋ねる。


「絶対駄目」


私は笑顔で絶対にやるなよ、と圧をかける。


'ちぇっ。やっぱ駄目か'


予想はしていたが、駄目と言われルネは不貞腐れる。


口をへの字にして不満丸出しの顔をする。


「後でスイーツ作ってあげるから、ちゃんとやるのよ」


ルネにだけ聞こえるように口をあまり動かさずに言う。


「なに!?それは本当か!?絶対だから!」


ルネは自分にだけ作ってもらえると思い喜ぶ。


大きな声を出せば他の者にも気づかれるので、主人の頬に頬ずりして、可愛子ぶる。


「ええ。本当よ。だから、ムカついても我慢するのよ」


「もちろんだ!」


ルネは目を輝かせながら、フリージア領の人達に呪いを無効化する魔法をかけていく。


「お嬢様。ルネだけに何か作るつもりですね」


後ろからアスターが耳元で言う。


'チッ。あのアホが顔に出すからバレたじゃない'


小声ではなしたが、ルネは顔というより全身で喜んでいたため、バレるだろうと思っていたが、ルネが離れてすぐに問い詰められ「クソッタレ」と顔を顰める。


「文句ある?」


バレた以上誤魔化しても意味はないので認める。


「ありません」


笑顔でアスターは言うが、私はその言葉の裏に隠された本当の意味に気づき口を一文字にする。


私はため息を吐いてから「全部終わったらね」とフリージア領を救済した後にルネに作ろうとした同じものを作ると約束する。


「楽しみにしてます」


アスターは自分も食べれることに満足したため、そう言って離れていく。


「……終わったら全員分つくるわ。だから、お願いね」


アスターが離れて解放されたと思ったのも束の間、オリバー、アイリーン、シオンの3人も自分たちも食べたいと顔で訴えてきた。


こうなった以上、2人分も5人分も大して変わらないと思った私は3人の分も作るから頑張れよと遠回しに言う。


私たちが終わった後の話をしているうちに、ルネは全員分の魔法をかけ終えたのか「終わったぞ」と締まりのない顔で言う。


'うわっ。こいつ、自分だけ食べられると思って、気持ち悪いほど嬉しそうに笑ってるわね'


私たちの会話を聞いていなかったルネは自分だけが美味しいものが食べられると思いニヤニヤと気持ち悪いほど笑っていてが、少しして自分だけではなく全員が食べられると知り、顎が外れたのかと思うほど口を開けて倒れた。







「お嬢様。それで、我々は何をすればいいのですか?」


侯爵たちを見送った後、オリバーが尋ねる。


「私たちは今から3つの班に分かれて作業するわ。治療班、探索班、退治班にね」


私がそう言うと、それぞれ自分がどこに割り当てられるのか言われる前に察した。


「まずは治療班。ここには、オリバー、アイリーン、公子様、ルュールュエの4人でやってもらうわ」


ノエル以外はここに当てられると思っていたので、驚くこともなく「わかりました」と素直に返事をする。


ただノエルは「俺もか?」と首を傾げる。


てっきり、退治班に割り当てられると思っていたので、なぜ自分が治療班なのかと疑問に思う。


「はい。俺もです」


私はニッコリと笑いかける。


「……わかりました」


ノエルは有無を言わさない笑みを向けられ、逆らってはいけないと本能で察した。


「じゃあ、次に探索班。ここは、私とルネよ」


「おう」


未だにショックから立ち直れていないルネは地面に倒れ込んだまま返事をする。


ルネは長年、閻魔に呪いをかけられていたので、呪い関連には敏感だ。


二度と呪われないようスカーレット領に住み始めてから、毎日呪いについて研究している。


本を読み漁ったり、植物や動物たちに聞いて情報収集をしているため、この中では最も詳しい。


そのことを知っている私はルネならすぐに何の呪いかを突き止めると思い探索班にした。


(※ルネは私に本を読んでいるところや、植物や動物に話しかけられているところを見られていることを知らない)


「最後に退治班。ここはアスターとシオン。2人に任せるわ。遠慮なく倒して。あ、でも、跡形もなく消しちゃダメよ。金になるところはちゃんと確保してね」


魔物の鱗や爪、牙は種類によっては武器になるため、そこだけは確保してもらわないと困る。


'恩を売るだけじゃなく、金も手に入る。最高ね'


私は顔がにやけそうになるのを必死に耐えながら「それじゃあ、各自役目を果たして」と行動を開始するよう命じる。


ノエル以外の全員が「はい」と返事をし、ルネ以外移動し始める。


ノエルは慌てて「え、あ、おう」と返事をしてからオリバーたちの後についていく。


'……大丈夫だよな'


ノエルの後ろ姿は頼りなく心配になる。


頼りになる3人がいるし、何とかなるだろうと思うも、どうしても不安が拭えないが、自分には他にやることがあるため、仕方ないと言い聞かせながら、未だに地面に倒れているルネを鷲掴みにして、一番怪しい森へと入っていく。


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