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昼食


「わかりました。そういうことでしたら、喜んで引き受けます」


ルュールュエは話を聞き終わると自分の意思でノエルと契約したいと思った。


理由は色々あるが、一番の理由は自分が契約すればアイラのような犠牲者や悲しむ女性たちをこれ以上出さなくて済むと思ったからだ。


自分が徹底的にノエルを監視し、次期侯爵として教育し、真面目で誠実な男にしようと決める。


「ありがとう。頼むわ。フリージア侯爵家とはできれば長く付き合いたいからね」


'私の夢の生活のためにもね'


私はルュールュエに笑いかける。


「お任せください。必ず、完璧に躾けてみせます」


「お願いね」


「はい」


話がまとまりシオンにノエルを起こすよう頼むんだそのとき、アスターとルネが帰ってきた。


ちゃんと行きと同様、少し離れた場所に戻ってきたが、今現在ノエルは眠っているので正体がバレることはなかった。


「お疲れ様。2人共。それで、お父様はなんて?」


私は帰ってきたアスターにすぐ結果を尋ねる。


「わかった、と。全てお嬢様の要望通りにするそうです」


「さすが、お父様」


聞かなくても答えはわかっていたが、アスターの口から男爵の言葉を聞きホッとする。


「それじゃあ、二人も帰ってきたし食事にしよう。ルュールュエ、契約は食事の後でしましょう。あ、そうだ。アスター。頼んでた服は持ってきた?」


フリージアの領地に行くのにノエルを全裸で行かせるわけにも行かないので、男爵に報告しに戻るアスターに持ってくるよう頼んでいた。


「はい。こちらです」


アスターはルネから服を受け取り渡す。


「公子様。服です。着てください……シオン。本当に魔法解いたのか?」


砂に顔を埋めたまま起き上がらないノエルを見て、まだ魔法が解けてないのではと思う。


「ちゃんと解いたぞ」


シオンは言われた通り睡眠魔法を解いたのに、疑われ心外だという顔をしながら近づく。


「……本当に起きないな」


微動だにしないノエルを見て、シオンは本当に魔法を解いたかわからなくなり困惑する。


「だから言ったじゃん」


「……」


「……」


暫く二人の間に長い沈黙があったが、耐えきれなくなったシオンが先に口を開きこう言った。


「起きる気配全然ないな」


「本当ね……仕方ない。足持って」


起きないのが悪い、と心の中で言い訳をしながら、私は服を砂の上に置いてからノエルの脇の下に手を入れ持ち上げる。


シオンは私の行動を見て何をするのかすぐにわかり言われた通り足を持つ。


「私の'せーの'の合図で放るんだぞ」


「わかった」


「行くぞ。せーの」


私は最後まで言うとノエルを海の方へとぶん投げる。


シオンも同じように「せーの」がいい終わった瞬間、投げる。


ノエルの体はかなり遠く海の方へと飛んでいき、緩やかに落下しながら、大きな音を立て海の中へと入った。


ドボーンッ!


ノエルが海の中に入った瞬間、大きな水しぶきが飛んだ。


「え!?なに!?なに!?何が起きたんだ!?」


体に衝撃がきたと思った次の瞬間、いきなり息ができなくなり慌てて立ち上がる。


顔についた髪や水をはらいながら一体何があったんだと確認する。


すると、すぐにこっちを見ている女性と子供が目に入り、自分に何が起きたのか瞬時に理解した。


一言文句を言ってやろうと海から出ようと陸に向かうが、二人は何か話しながら離れていく。




「あ、起きた」


海から出てきたノエルを見て私は呟く。


「死んでなかったみたいだな」


魔法を解いたのに目を覚まさないノエルに、もしかしてら死んでいるのではと思っていた。


「よし。問題なし、と。昼ご飯にしよう」


大きな声で自分に起きたことを把握しようとしているノエルを見て、大丈夫だと思い、背を向け、料理が置いてあるテーブルへと向かう。


「よっしゃ。ようやく食べれる」


シオンはようやく食べられることに喜び、子供のようにはしゃぐ。


花が飛んでいるのかと思うくらい、嬉しそうにスキップしながら、料理の元へと向かうシオンは本当に子供のようだった。


「おい!こら!ちょい待て!」


ノエルは海の中を走りながら叫ぶ。


「……」


私はノエルの怒りの叫び声が聞こえ、後ろを振り返ると、全裸で海の中を走る姿になんとも言えない気持ちになり、無視しすることにした。


「おい!聞こえてるだろ!無視するな!」


ようやく海から出られたノエルは砂の上を軽やかに走り、二人の前に回って通れないよう手を広げる。


「あそこ丸見えよ。隠さなくていいの?」


私は親切心から教える。


それを聞いたノエルはカッと顔を赤く染め、慌てて大事な場所を隠す。


「あそこに服があるわ」


私は服がある場所を指差す。


「アイリーン。悪いんだけど、公子様を乾かしてあげてくれる?」


タオルを使うよりアイリーンに頼んだ方が早く済むのでお願いする。


「はい。お任せください」


そう言ってアイリーンは魔法を使うが、私が乾かしてもらった魔法とは違い、少し雑だったが完璧に水は飛んでいたので問題はない。


「ありがとう。アイリーン」


私はアイリーンの頭を優しく撫でる。


アイリーンは嬉しそうな顔で喜び、もっと撫でてくれと言わんばかりに私の手に頭を擦り付ける。


「服着たら昼食にしましょう」


「……はい」


ノエルは呆気にとられすぎて、怒りも魔法で飛ばされた水のように吹っ飛んだ。


言われた通り服を着て椅子に座る。


一人、知らない男が増えているが、そのことを聞く気力もなく黙って料理を見つめた。


どれも初めて見るものばかりで美味しいのかと不安になるが、とてもいい匂いがするので食欲がそそられお腹が鳴ってしまう。


お腹が鳴り恥ずかしくなり俯き、チラッとみんなの反応を確認するが、小さい鳥と子供、水の塊がうるさいので誰も反応せず聞こえてなかったのだとわかりホッとする。


「さてと、全員揃ったし食べようか」


私がそう言うとルネとシオンは待ってましたと言わんばかりに料理を食べ始める。


それを合図に他の者たちも料理に手を伸ばし始める。


私の料理を初めて食べるノエルとルュールュエは恐る恐ると言ったふうに口に運んだが、食べた瞬間、あまりの美味しさに感激してしまう。


食事をするのは生きるため、腹を満たすだけの行為だと思っていたルュールュエにとって、目の前の料理はその考えを変えるくらい美味しかった。


ノエルは最近、家で出るパンや食事が前より美味しくなったが、今食べている料理の方が何百倍も美味しく、ずっと食べていたくなる。


二人も負けず劣らず物凄いスピードで料理を食べていく。


結構な量を作ったが、料理はあっという間に平らげられてしまい、食事はすぐ終わった。

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