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水の妖精 2


「アイリーン様を助けていただいたことを水の妖精たちを代表して、お礼申し上げます。そのご恩を返す意味でも、我々、水の妖精はローズ様の命に従うことを誓わせていただきます」


私はルュールュエにいきなり騎士の誓いのような言葉を言われ驚くも、すぐにそれは喜びに変わった。


'これはとんだ誤算ね。まさか、水の妖精全員を味方にできるとは'


私は嬉しさのあまり顔がにやけてしまう。


アイリーンと契約した以上、水の妖精は私に攻撃も逆らうこともできない立場ではあったが、だからといって彼女のように忠誠を誓うわけではない。


正直に言えば、妖精王と人間が契約するなどよく思われないため、嫌われていると思っていた。


そのため、水の妖精たちからの申し出は本当に予想しなかった。


「あなた達の想いは受け取ったわ。これからよろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


ルュールュエは深く頭を下げる。


その礼はまるで、アイリーンにするような敬意を示すようなものだった。


「それで私を呼び出した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


ルュールュエは頭を上げるとそう尋ねた。


そう尋ねた理由は、主人の命の恩人である人間に、はやく恩返したかったからだ。


「あなたに頼みたいことがあるの」


「なんでもおっしゃってください」


「彼と契約して欲しいの」


そう言って私はノエルを指差す。


ルュールュエは「彼」と聞いて、どっちの男だと思い、私の指の先に視線を向ける。


そこにいたのは全裸の男でもう1人の男の方が良かったと思ってしまった。


だが、これで主人を助けてもらった恩が返せるのならとルュールュエは喜んで承諾をする。


「わかりました。私の命をかけて彼をお守りすると約束します」


ルュールュエは全裸の男がローズの大切な人なのだろうと思い、そう言ったが「え?なんで?命をかける必要はないわよ。自分の命を優先して」と言われ呆気に取られてしまう。


'守って欲しいから契約させたいのではないのか?'


ルュールュエはローズの意図がわからず困惑する。


近くで聞いていたアイリーン、オリバー、シオンも同じように意図がわからず困惑する。


そんな4人を嘲笑うかのように私はこう言った。


「私は彼を守って欲しいからあなたに契約させたいわけではないの。彼を躾けて欲しいから契約させたいの」


'……ん?今、躾って言ったか?'


全員が聞き間違いかと自分の耳を疑ってしまうくらい、いい笑顔をしながら言われ言葉を失う。


「お嬢様。なぜノエル様の躾が必要なのでしょうか?」


最初に我に返ったオリバーが慌てて尋ねる。


「理由は2つあるわ。1つはクソだからよ。噂でフリージア侯爵のご子息は物凄い女好きという話は何度か聞いたことがあるけど、会ったら予想を遥かに上回るくらいヤバくて、このまま放っておいたら、彼が侯爵になった時が心配でね」


'まぁ、確かにそれは心配ですね'


それを聞いたオリバーは納得してしまう。


ノエルと対面してから、まだ半日も経っていなが、話し方や口調、所作からどことなくチャラ男の雰囲気を感じとっていたため一切疑わず、その理由を信じた。


言っているのがローズというのも関係しているが。


「もう1つはこれ以上犠牲者を出さないためよ」


「犠牲者ですか?」


オリバーはノエルは女好きで色んな女性と遊んでいても泣かすような男ではないと、知り合って短いがそう思っていた。


実際、ノエルは色んな女性と遊んでいるが泣かせるような真似はしたことない。


「信じられない?」


「はい」


オリバーは真っ直ぐ私の目を見て言う。


私はそんなオリバーがおかしくて、フッと鼻で笑ってからこう言った。


「でも、実際に犠牲者はいるわ」


はっきりと断言する私にオリバーは「お嬢様は一体何を知っているのだ?」と思う。


「ねぇ、ルュールュエ」


「はい」


ルュールュエはいきなり名を呼ばれて驚くが、顔や声に出さず返事をする。


「あなたがアイリーンの呼びかけにすぐに応じなかったのは……」


いきなり話が変わり、それも王の呼びかけに応じなかった話をされ、ルュールュエは心臓を鷲掴みにされたような苦しみや緊迫感に落とされ、全身の穴という穴から嫌な汗が吹き出してきた。


一体何を言われるのだとローズの言葉を聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちの間に挟まれ、この場から逃げ出したくなる。


「ある呪われた水の妖精の呪いが解けたからじゃない?」


その言葉を聞いて、ルュールュエは最初に安堵のため息を吐いてから、なぜ知っているのだと、これでもかというくらい目を見開き驚きを隠せなかった。


「どうして呪われた水の妖精のことを知っているのですか?」


ルュールュエは震えた声で尋ねる。


嫌な考えが頭をよぎり必死に消し去る。


アイリーンの命の恩人の方がそんなことをするはずはない、と。


「簡単な推理よ」


「推理ですか?」


ルュールュエは反応からして呪いを掛けた人物ではないと判断してホッとするも、言っている意味が理解できず首を傾げる。


「そうよ」


「……」


「……」


「……」


ルュールュエは何を言えばいいかわからなかった。


話の流れ的にその推理を話してくれるのかと思ったが、話す気配はなくモヤモヤばかりが募っていく。


どうにかして話してもらおうと口を開いたそのとき「あ!なるほど。そういうことか」といきなり大きな声が聞こえてきて、そちらに目を向ける。


「いきなり大きな声を出してどうした?」


シオンは驚いたからか、いつもより目を少しだけ大きくしながら尋ねる。


「わかったんです。お嬢様の言う犠牲者は水の妖精。その水の妖精はノエル様を救おうとした妖精。そうではありませんか。お嬢様」


オリバーの言葉を聞いた、アイリーンとシオンはハッとする。


水の妖精がノエルを助けようとして代わりに呪いを引き受けていてもおかしくはない。


水の妖精の呪いが解けたのはセイレーンを倒したからと考えれば、辻褄が全て合う。


アイリーンがルュールュエに通信したのはセイレーンを討伐した後。


その後、呪いが急に解けたため何があったのか確認しなければいけないため来るのが遅くなった。


「ええ。その通りよ」


私は正解だと伝える。


「あの、ローズ様。私にもわかるように説明してくださいませんでしょうか」


一体何を言っているのかさっぱりわからないルュールュエは、話しについていけず困惑する。


「わかった」


急に呪いが解けて、理由もわからなければ不安だろうと思い、私はここで何があったのか説明する。


全てを聞き終わったルュールュエは「……そういうことでしたか」と眉を八の字にしてなんとも言えないような顔をした。

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