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不憫の王様 2


「お嬢様。放っておいていいのですか?悪魔の王様は」


アスターはルネの奇怪な行動を見ながら言う。


「いいんじゃない。あれで、怒りがおさまるなら」


私は逆さまで宙を飛んだり、砂の中を泳いだり、キーッと叫んだりと、誰が見ても頭がおかしいと思う行動をするルネを可哀想な悪魔だなという目で見る。


「……」


「……」


アスターは何か言いたそうな目で見てくる。


最初は無視していたが、ずっと見てくるので「言いたいことがあるならはっきり言って」と言うように指示する。


「では、そうさせてもらいます」


許可を得たアスターはこれで罰を受ける心配はないと嬉々としてこう言った。


「今回はルネが不憫です」


「本当に不憫ね」


私はアスターの意見に同意する。


軽くいったからか「本当にそうおもってんのか?」とアスターに疑うような眼差しを向けられてしまうが、痛くも痒くもない。


これは契約なのだ。


だから、いくらルネが可哀想だとしても仕方ないことなのだ。


ルネは正体を隠す必要がある。


そのためには、例え人間に馬鹿にされたとしてもバレないように愚者を演じなければならない。


'恨むんなら、契約書をちゃんと確認しなかった自分を恨むのね'


私は未だに奇妙な行動しているルネを見てそう思う。


そんな私を見たアスターは「あ、これは駄目だ。絶対、自業自得だとしか思ってないな」と表情で何を考えているかわかるようになった。


「そんな目でみるな。今回は私の失言のせいってわかってるから反省してるわ。ちゃんとお詫びもするわよ」


ジーッと「それでいいのか」と訴えるような目をアスターに向けられ、居心地が悪くそう言った。


「お詫びですか?」


悪魔の王が許すようなお詫びなんてあるのかと考えるが、思いつかず何をするのか気になる。


「なに?疑ってるの?こんなにも優しく慈愛に溢れ、給料もほかのとこより高く、美味しいものを食べさせているのに……あんた、人をこき使って、やりたい放題やり、挙げ句の果てに全て押し付けるような性格の悪い主人だとでもおもってるわけ?」


私は下から覗き込むようにアスタの顔を見ながら言う。


'こわっ!'


あまりの怖さにアスターは途中から目を合わせないようにしたが、話は聞いていたので最後まで聞き終わると「おお、自覚あったんだ。よくわかってるじゃないか。性格の悪い主人だと思ってるよ」と声には絶対に出さずに心の中でそう答え、実際は「まさか、お嬢様のことは最高の主人だと思っています。お嬢様のような方に仕えることができて幸せだと思ってます」と全く心のこもってない口調で淡々と告げる。


「うん、あんたが私のことどう思っているかわかったわ」


'このヤロー。私のことそうな風に思ってたんだな'


アスターの口調から言っていることは全て嘘だと判断した。


私はアスターにニッコリと笑いかけ「覚えてろよ」と目で訴えた。


アスターはサッと視線を横にして見えていないので知りませんアピールをする。





※※※





「ほら、ルネ。これ全部あんたのよ」


「本当か!?」


ルネは目を輝かせ、目の前の料理を見る。


目は光で反射して宝石のように美しい輝いているが、小さい鳥の姿なので誰にもそのことに気づかれなかった。


ヨダレを垂らしながらどの料理から食べるかルネは悩んでいた。


「ええ。もちろん」


「……でも、どうして俺にこんなにくれるんだ?」


主人の意図が読めず、また何かやらせるための賄賂かと思い、料理にてをつけられない。


怯えたように一歩下がるルネを見て、私はフッと笑ってしまう。


「さっきのお詫びよ。悪かったわ。許してくれとは言わないけど、許してくれるなら私の料理食べていいわよ」


それを聞いたルネは自分の聞き間違いかと鳥の手で自身の頭を叩いた。


'え?普通、お詫びならタダでくれるのでは?'


ルネは悪魔なのにこの瞬間だけは人間のような思考回路になった。


「もし許さなかったら?」


答えはわかりきっているのに、なぜか尋ねてしまう。


「それは仕方ないよ。私が悪いことしたから許されなくてもね……まぁ、許してくれないなら、料理は食べらせないけどね」


ハハッと笑う主人を見てルネは「この悪魔め」と無意識にそう心の中で呟いていた。




なぜルネが主人に脅されているかというと時は少し遡る。


 


グゥー。


「あ、鳴った。まじ限界だわ。さっさと作ろう」


私はお腹を撫でながらさっさと料理を作ろうと決める


その前に軽く手を叩き「じゃあ、各自指示通りにお願いね」と言ってから、アスターに男爵に報告して欲しい内容を伝えてから、今度こそ昼ご飯作りに取り掛かる。


ルネは恨めしそうな目をしてずっと私を睨んでいたが、アスターが片手で掴み無理矢理連れて行った。


ノエルがいるため、正体がバレないよう見えないところで魔法を使うためだ。


2人が消えたことで、他の者たちも動き始めた。


シオンとオリバーは鱗を使った薬品を作る作業に取り掛かる。


オリバーが鱗をなるべく小さく砕いていき、シオンは他の材料を取りに行くため、ノエルに気づかれないよう魔法を使って移動した。


アイリーンはぶつふつと目を瞑って何か言い出す。


きっと、私が頼んだ水の妖精と会話をしているのだろう、と思ったが誰にするか悩んでいただけで、まだ通信魔法を発動していなかった。


でも、アイリーンだから大丈夫かと信じ、視線を横にずらすと、体を小さくして座っているノエルが目に入った。


素っ裸なため恥ずかしくて立つことができない。


アスターに頼んで屋敷から服を取ってくるように言ったため、服の心配は大丈夫だが、それまでノエルは立たないだろうなと感情のない目で私は見た。


まぁ、服を着ていたら着ていたでうるさそうなので、今の方が楽でいいかと思う。


'一応、ノエルの方が爵位は上だから本来なら、こんな扱いはしてはいけないが、納得していそうだしいっか'


全く納得してないし、寧ろこんな扱いをされて怒っているが、それを言ったところで聞き入れてもらえないし、今より酷い状況になるのは目に見えているので、黙っているだけ。


領地に戻ったら、父親に言ってどうにかしてもらおうと考えていた。


助けてもらったことには感謝しているが、それはそれ、これはこれ、と。

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