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「本当か!?」


砂に顔を埋めていたノエルはオリバーの言葉を聞いて、自分の目で確認したくて勢いよく立ち上がる。


「あ……!」


私以外の全員がノエルが立ち上がった瞬間、同じタイミングで声が出た。


「え……?」


あ、とノエルは自分を見ながら言われ「どうしたんだ?」と首を傾げる。


ノエルが私を見る。


私は数回瞬きしてから視線を下に下げ、ある場所までいくとノエルの方を見て少し目を広げて訴える。


ーー下を見ろ、と。


ノエルは私のそんな行動を不審に思いながらも、視線を下に下げるが下げた瞬間、何故みんなが自分を哀れむような可哀想な目で見たのか理解した。


「……!」


ノエルは声にならない叫び声をあげる。


'な、な、なんで!俺、素っ裸なんだ!?'


慌てて大事なところを隠すが遅い。


ノエルが気づく前に全員見た。


ノエルは恥ずかしくて全身が真っ赤に染まる。


どうしたらいいかわからず、何も言えず、その場から動けないで俯いていると、こう言われた。


「大丈夫、大丈夫。あんたの裸見たって誰も何とも思わないからさ。気にしないから、堂々としてなよ」


私は励まそうと笑顔で言うが、それを聞いたアスターとオリバーは「お嬢様が何とも思わなくても、相手が恥ずかしいんですよ」と心の中でノエルに同情する。


そして同時に「普通、このくらいの年齢の女性なら、いきなり男の裸を見たら悲鳴を上げるものでは?それか、顔を真っ赤にして恥じらうのでは?」と。


だが、実際のローズの反応はノエルの大事な部分を見ても動じることもなく、笑顔で慰めにならない慰めをした。


二人は相変わらず何を考えているのかわからない人だと思いながら、成り行きを見守る。


「つまり……俺に裸でいろと?」


ノエルは顔を引き攣りながら、冗談だよなと思いながら尋ねる。


どうか嘘だと言ってくれ、と祈りながら。


だが、現実は残酷だ。


笑顔で「うん。そうだよ」と言われてしまう。


それを聞いたノエルが信じられず、ワナワナと震えて何も言えずにいると、追い討ちをかけるようにこう言われた。


「まさかとは思うけど、服着てないのはあんたのせいなのに服をよこせって言うわけないよね?あの、フリージア侯爵のご子息様がそんな野蛮なこと言わないわよね。命の恩人である私たちから服を剥ぎ取ろうなんて、そんな恩知らずなこと言うわけないわよね?」


私は首を傾げ、下からノエルを覗き込みながら言う。


笑顔なのに脅すような言葉にノエルは顔を引き攣らせる。


「ハハッ、勿論だとも。そんな恩知らずなこと言うわけないだろう」


「ハハッ、だよね。よかった。もし、言われたら、自分でも何したかわからなかったよ」


ノエルは笑顔で爆弾発言を言われ、心臓が破裂するのではと思えるほど速く動いた。


'言わなくてよかった。言ってたら確実に死んでた。これは絶対バレたらいけないやつだ'


この日の出来事はノエルにとって絶対に忘れられない一日となった。





「それで、これからどうするおつもりですか?」


アスターはフリージア侯爵の領地の荒れぐらいを見た以上、放っておくことなどできず、もちろん助ける計画があるのだろうと思い、そう尋ねた。


「とりあえず、昼ごはんにしようか。お腹空いて死にそうだし」


さっきからお腹が減ってイライラがおさえられない。


あまりに空腹が続くとお腹が痛くもなる。


早く何か食べたくて仕方なかった。


「……?」


アスターは何を言っているのだと何度も瞬きをする。


流れ的にフリージア領地を助けにいく流れだったのでは?と。


'だが、お嬢様がそういうなら仕方ない。自分は護衛騎士だしな'と自分に言い聞かせ椅子に座り、ご飯を食べてから行くことにした。


「ちょっと、あんたたち何座ってんの?」


私が昼ごはんにすると言った瞬間、椅子に座った4人に呆れてしまう。


「そうです。ご主人様が働くのに、何故あなた達が座るのですか!?」


アイリーンが4人に向かって怒鳴る。


「だって、俺、海の食材を使った料理知らねーもん」


ルネが机をドンドンと叩きながら、これは仕方ないことなのだと訴える。


それに、アスター、オリバー、シオンは激しく頷き自分たちは戦力になれないと示す。


それを聞いた私はニコッと笑いかけてから、ルネの頭をガシッと掴む。


「問題ないわ。言われた通りに動けばいいんだから。子供でもできることよ」


そこまで言ってから私は「黙ってやれ」と真顔で言う。


「……はい」


ルネは気持ち悪い食材を触らないといけないのかと考えるだけで憂鬱になるが、もし逆らったらその後の仕返しが怖いので素直に返事するしか選択肢はない。


そんなルネの姿を見た3人は何も言わず席から立ち、何をすればいいのでしょうか、という態度でついさっきまで座っていたのが嘘のような態度で主人からの指示を待つ。


「……」


3人の態度の変わりように私は眉を顰めるが、お腹が空きすぎて相手にするのも面倒くさく、一旦放置する。


人がいようと関係なく、スカーレット家のいつもと変わらない普段の様子を見たノエルは開いた口が塞がらなかった。


変な関係だなと思いながら今は体をできるだけ小さくして大事なところを隠し続けることを優先した。




「アイリーン」


私はアスター達に何をさせるか頭の中で整理しながら、先にアイリーンに指示を出すことにした。


「はい。何でしょう。ご主人様」


アイリーンは目を輝かせながら、指示を待つ。


「鱗を綺麗にしてくれる」


血の山となった鱗を指差しながら言う。


「お任せください」


アイリーンは水魔法を発動させる。


鱗が綺麗になるまでの間に4人に指示を出そうと後ろを振り返ると「終わりました。ご主人様」と言われ「嘘!?」と思いながら鱗を見ると、信じられないくらい光り輝いていた。


ベッタリと張り付いていた血が一瞬で落ち、太陽の光に反射して輝いているのを見たときは、流石に驚きを隠せなかった。


「……はやいね」


「あれくらいなら一瞬で綺麗にできますので」


アイリーンはえっへん、と満足げな顔をする。


'うん。そうだね。水の妖精王なら一瞬でできるよね……'


アイリーンが妖精王だということを忘れたことはないが、今の手のひらサイズの水の妖精姿で慣れているせいか、迫力が薄いせいか、つい驚いてしまった。


「さすが、アイリーン。頼りになるわ」


すぐに落ち着きを取り戻し、私は続けてこう言った。


「それで、そんなアイリーンにもう一つ重要な任務を任せたいんだけど引き受けてくれる?」


絶対断らないとわかりつつ、困った顔でアイリーンに助けを求める。


「もちろんです!この私にお任せください!」


主人に頼られたことと重要な任務を任されたことが嬉しくて、つい興奮して声が大きくなる。


そんなアイリーンを見ていた、同じ立場の他の4人は「今度は一体何をさせられるんだ?」と同情した。


「ありがとう。それじゃあ、お願いするわ」


私はアイリーンの返事を聞いて、頭の中で「ウェーイ」と叫び回りながら、笑顔を向け周囲に聞こえないよう近づき耳元でこう言った。


「ノエルを護った妖精とは別の妖精を連れてきて欲しいの」


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